孤読、孤毒

 才能はあると信じている。

 事実、俺が読んで面白い。素晴らしい物を観て、聴いて、嗅いで、味わって、触って感じてきた俺の感性が面白いと判断するのだから、間違いなく面白いのだ。


 だが他人は違う。

 俺とは違う感性を持つ人間は、俺が感じる素晴らしさに価値を見出さない。俺が持たない、俺が無価値と思う物を珠玉とし、退屈な作品を面白いという。


 それを間違っていると、つい考えてしまう。


 傲りはある。俯瞰も当然、ある。

 俺は俺以外を見下し、俺が素晴らしいと思えない物を否定してしまう。だからこそ、俺は他人に読んでもらえる作品を書けない。


 だが、面白いんだ。俺の作品は、面白いんだ。きっと、きっと、面白いに違いないんだ。


 一文字が一文となり、やがて一節。一章と繋がり、一つの作品となる。読むのは一人。俺だけだ。俺だけが、俺の作品を読んでいる。

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