第11話
パチパチとまばらな拍手が教室を包む。
「じゃあ、体育祭の種目決めはこれで決定って事で」
夏休みまで一か月!
テストも終わり、夏休みまでのイベントは体育祭だけ。一年生の時は右も左も分からず、三年生は受験勉強。一番楽しめるはずの体育祭なんだけど・・・
烏谷と競技がだだ被りじゃない!
ドッチボールからリレー、地味に綱引きまで全部。気まずいったらありゃしない。男女混合はリレーだけで揺士は出ない。運動部でもない揺士にそこを期待するのは間違い、こっちだってはなから期待していない。
やる気のある男子や各競技のリーダー枠の人たちが率先して休み時間の練習に誘っていく。
「三鷹は他に何に出るの?」
「う~んと、あとは綱引きだけ」
ドッチボールの練習とは?皆がそこに行き着き、ボールでキャッチボールをするだけ。もう三鷹とする雑談枠になってる気がする。昼休みと変わらないかも?
「ドッチボールは楽しみなんだ」
意思表示の余りない三鷹が一番に手を上がていた記憶がある。どうせ三鷹は何でもできるだろうから、余りをやるかと思っていたのに。
「キャキャー言ってる女子に当てるのはストレス発散になる」
「えぇ、こわぁぁいぃ。あてないでぇ」
三鷹は大きく足を踏み出し本気で投げてくる。バァンと体育館の壁が悲鳴をあげるて、私に元にボールは帰ってきた。
「見ててイライラするんのも理由の一つ」
「闇の三鷹は出てきてるよっ。はは、ちょっとマネしただけなのに。ははっ、脊髄で殺しに来たじゃん。恨みでもあんの?」
もう野球選手みたいな投げ方。容赦を感じなかった。
「ん~、本能かもしんない」
無表情でそれ言わないで。冗談かも分かんない。
「ほら、美結だっているでしょ。思いっきりぶつけたりとかしたい人」
「否定はできないわね!」
思いっきり振りかぶって三鷹に投げ返す。私の憎しみと悔しさとストレスの塊は三鷹に取られてしまった。
「せいぜい運動できる事を祈ってるわ!」
体育祭の練習は決まっており、勝手に体育館や校庭を使うことは許されていない。
逆に言えば必ず集合しなければいけない予定となる。
クラスで八人、校庭に集合した。いつもなら練習の無駄にせず熱心に練習するのだろうけど、憂鬱を目の前にしてやる気は起こってこなかった。
「美結ちゃんって足も速いんだね。頭もいいらしいしすごいね!」
烏谷はいい子だ。ほぼほぼ人の彼氏を略奪したということに目を瞑ればきっといい子だ。
純粋で人を褒めることに一切の躊躇もない優しい子だ。ただ一点、その一点に目を瞑れば。
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