第10話
けっこうな勇気振り絞ったんだけど、もはや無視!(もう幼馴染として触れ合いすぎてこれぐらいなんと思わん)
あんまりじゃん!こんなことなら幼馴染として生まれなかった方がよかったのでは?保育所とか小学校で出会ったほうが絶対によかった。
近くにいすぎるのは良くない!油断しちゃうし、ドキドキよりも安心感が勝るって何!?私はお母さんでもなっちゃったの?・・・もうやだ。何普通に水族館満喫してんのよ!ぶん殴るよ?
揺士の手首をへし折るのを我慢しているとまた新しいエリアに来た。
「クラゲの癒し、だって」
広い廊下の両面に水槽がずっと並んでいるように見える。水槽は揃いに揃って円柱型になっている。
作られた水流に乗ってずっと漂っているクラゲたち。フワフワしてるだけで、いつも見るギュンギュンと泳ごうとする意識の欠片も感じない。
これは確かに癒される。変な力みがなくなって自然に揺士の手首を繋げた。クラゲを眺めて微笑んでいる揺士の横顔を純粋に見れた気がする。
「ここのソファで休憩しよ!歩くの疲れた」
「貧弱だな~。もっと外出たら?」
小バカにする態度を取ってはいるが、私に手を添えながら座らせてくれる。揺士は隣に勢い良く座ると、後ろに倒れそうになって慌ててる。
「帰宅部でほとんど外に出ないやつが言うな」
「誰かさんに毎週、外に連れてかれるんですけど」
「けど!楽しいでしょ?私に一緒に出掛けるの。エスコートだって教えこんであげたし」
ああ~、と言いながら手を挙げて降参の表示。声に出さないことがせめてもの抵抗らしい。
「申し訳ありませんね、お嬢さま。では、私の雑学で楽しんでもらいましょうか?」
「そうね、そうしましょうか。下僕」
「わたくし、執事、了解しました。ではあちらのクラゲを見てもらえるでしょうか。クラゲの頭にある、四つの袋が分かるでしょうか。実は胃袋なんですよ」
へ~ただの模様かと思ってた。クラゲに脳はないって聞いてたし。
「なので、魚とか食べるとグロイですね」
「なんてこと想像させるのよ」
骨とかそれこそ死んだ魚の目がホントに見れるってことね。のほほんとして殺るときはやるのね。
「時々、胃袋が五つのあるクラゲなどもいますので探してみてはどうでしょ?四つ葉のクローバーならぬ、五つの胃袋クラゲなんて」
「語呂が悪すぎるでしょ」
「これが限界なんだよ」
「まぁ確かに。で、いるの?」
「たぶん、いない。見たかんじいなかったし。ドンマイっ」
「えぇ~、見たかった」
「スマホならいくらでも?」
「生に決まってるでしょ」
「ですよね~」
「そろそろ、次に行こ」
「あんただけ気持ちよくなって。私にはモヤモヤしかないんだけど」
「まぁまぁ、次やつ見たらスッキリするから」
揺士は私の手を掴んで引っ張っていく。冷房の効いた室内でほのかに温かくて柔らかい感触に連れられて。
「おお~、でっか~」
水族館の定番、イワシの大群。台風のように形作り水槽の中心に居座る姿はとても壮大。驚嘆、感動、雄大と様々な感情を巻き起こす。
その中でも一段と大きかった。一番最初のも大きかったが一段、二段と大きさが違う。
周りにはサメやエイなどイワシと個々の大きさじゃ何十倍もある魚が旋回してた。
「リニューアルしたらしいよ」
前来た時はこんなんじゃなかった。
今日はこの手とこれを見れただけで十分だった。またソファに座って揺士の雑学を聞いて、イワシの渦を眺めていた。もちろん、手を繋いだまま
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