第15話「仮面と男の子②」※ひまり
始業式が終わって教室に戻って来た。
部活をやってないのは何となく知ってたけど、一応訊いてみた。
「
「やってないよ。昔はサッカーやってたんだけど……辞めちゃったんだよね」
あれ? いつやってたのかな? どうして辞めちゃったんだろう。
そういう理由ってあんまり訊かない方がいいのかな?
訊こうかどうか迷っていると横峯くんが私のことを訊いてきたから、とりあえずは保留にしておこうと思った。
「
「ううん、1年生の時は勉強について行けるか不安だったからやってなかったんだけど……問題なさそうだし学校にも慣れて来たし、新入生が加入するこの時期に一緒にやろっかなって思ってるんだよね」
「そうなんだ。どこに入るの?」
「料理研究部だよっ。お菓子とか作ってみたいんだよね〜」
甘い物が特に好きな私は、つい我を忘れて妄想する。
そんな姿を見られて横峯くんに失笑されてしまった。
ちょっと恥ずかしかった。
「ホントに甘い物好きなんだね」
「あっ、笑ったなぁ? 甘い物じゃなくても料理は全般好きだけどねっ」
「そっか。僕の友達にも料理研究部の人が居るから、この後紹介してあげようか?」
「え、ホントに? ありがとっ」
ずっと料理研究部に入りたいと思ってたけど、途中から入部するのはいろいろと不安だったから、横峯くんの友達を紹介してもらえるのは嬉しかった。
だけど料理研究部ってことは多分女の子だろうし、あの子のことだよね?
ちょっと気になって、
「あっ、でも料理研究部ってことは〜、もしかして彼女とか?」
「ちっ、違うよ。そんなんじゃないって」
そっか。
まだ付き合ってないんだ。
でもやっぱり気になってたりはするよね。
「その反応はちょっと怪しいね? ……でも良かった」
良かった? 自分で言ったけど何がだろう。自分で自分に疑問を抱いた。
横峯くんは違う意味で捉えたみたいだけど。
「全然大丈夫だよ。僕なんかにもホントに優しくしてくれるいい人だから、花菱さんともうまく付き合ってくれると思うし」
「む、その発言は頂けないよ。横峯くんっ」
「え?」
横峯くんの何気ない発言についムキになってしまった。
「
「そ……そうだよね。あ……ありがとう。あとごめん!」
「反省したならよろしいっ」
おかしくなって二人でクスクス笑い合った。
まだ少ししか話してないけど、何だか仲良くなれた気がする。
気付いたら私はこんなことを提案していた。
「ねぇ横峯くん、連絡先交換しない?」
「うん、いいよ」
男の子に初めて連絡先を聞いてしまった。
あんなに怖くて避けてきたのに、ちょっと自分の行動にビックリした。
やっぱりあの子みたいに仲良くなった男の子って、下の名前で呼んだりするのかな?
どう呼んだらいいんだろう。
「修司くん? 修ちゃん? 修くん? うん! 修くんが一番しっくり来るねっ」
二人で会話してる内容は聞いたことないけど、あの子は確か修ちゃんって呼んでたよね。
じゃあ私は修くんって呼ぼう。
「うん。それでいいよ花菱さん」
む、修くんは下の名前で呼んでくれないの?
「ひまりだよっ、ひ・ま・り」
「え……うん、ひまり……さん?」
「“さん”は要りませんっ」
「え……でも僕にだって“くん”付けてるし」
「修くんは語呂がいいからいいのっ」
「えぇ…」
もっと仲良くなるにはこの方がいいよね。
「分かったよ。ひまり」
「うん、よろしいっ」
うん、ばっちり。
男の子に下の名前で呼ばれることがないからちょっとむず
「それじゃ、料理研究部の友達紹介するから行こうか」
「うんっ、行こ行こ!」
そう言って横峯くんはあの子のところに向かって行ったと思ったら、私が思い描いていた人ではなかったことに困惑した。
「
どうして? 目の前に
やっぱりおかしいよ。
「神谷さん、僕の隣の席の花菱ひまりさん。料理研究部に入りたいんだって」
「花菱ひまりです。ひまりでいいよ。よろしくねっ」
神谷さんっていつも掛川さんと一緒にいる女の子だよね。
どうして修くんは神谷さんの方を紹介するのかな?
「神谷美里でーす。ひまりも私のことは美里でいいよー。よろしくー」
「うん、じゃあ美里ちゃんって呼ぶねっ。あと……掛川さんも料理研究部だよね?」
掛川さんはどうしてずっと顔を
修くんと顔を合わせたくないのかな?
「ひ……ひまり! とりあえずさっそく家庭科室に行こ!」
「うん! じゃあね修くん!」
「またね、ひまり」
何だか美里ちゃんが慌てた様子で、急かすように教室を後にする。
改めて掛川さんに自己紹介した。
「花菱ひまりです。掛川さんもひまりでいいよ。よろしくねっ」
「……うん。ひまりちゃんも遥でいいよ……」
やっぱりすごく元気がない様子だった。
修くんが関わってるのかな?
無粋だとは思ったけど、どうしても気になって訊いてしまった。
「遥ちゃんは、横峯くんと何かあったの?」
「っ!?」
体をビクッとさせて、ばつの悪い顔をした。
数秒妙な沈黙が流れると、居た
「ご、ごめんねーひまり! ちょっといま横峯くんのことNGワードなんだよねー! 事情は訊かないで……お願い!」
そう言って美里ちゃんは手を合わせてお願いをしてきた。
「うん! 分かったよ!」
やっぱり何かあったんだ。
でもこの話題には触れられたくないみたいだったから、これ以上は遥ちゃん達から事情を訊くのは止めようと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます