第234話 運動会、開幕!

 突き抜けるような青い空、ポンポンと小気味よく咲く花火、いよいよ今日は運動会当日だ。

 ロームルス学園の校庭は、観覧に訪れた生徒の家族や関係者で大賑わい。そんな中とある一角から、メラメラと火柱が立ち上っていた。


「あの表彰台を見ろ! あれこそ栄光の頂だ!」


 火柱の原因はエリザベスの放つ熱気だった。なぜかガチガチに鎧を着込んで、臨戦態勢を整えている。


「ついに運動会本番です、一位の表彰台は私のものです!」


「何を言うナターシャ嬢、一位の表彰台に立つのは自分だ!」


 エリザベスに負けず劣らず、ナターシャとシャルルもメラメラと熱気を放っている。あまりの凄まじい熱気に、近寄り難さを感じるほどだ。


「運動会なのじゃー! 妾達で表彰台を独占なのじゃー!」


「目指せ表彰台独占! 運動会の主役はリィ達なんだから!」


 ウルリカ様とリィアンは、二人揃って無邪気に大はしゃぎ。リィアンの目指すべきはヨグソードの奪取であろうに、すっかり本来の目的を忘れている。


「お姉様の気迫、まるで出陣の直前ですわね」


「本当に皆様お元気です、お元気すぎます」


「あの無尽蔵な体力はどこからくるんだよ……」


「……」


 一方オリヴィア、シャルロット、ベッポの三人は、連日の特訓で疲れ切っている模様。ヘンリーにいたっては、真っ白に燃え尽きピクリとも動かない。


「ところでシャルロット様、ご家族様は観覧にこられないのですか?」


「今回はお父様、執務を捌ききれなかったそうですの。今ごろは家族も手伝って、執務を片づけているはずですわ」


「それでヴィクトリア様やアルフレッド様、クリスティーナ様の姿も見かけないのですね」


 どうやらゼノン王は懲りずに執務を溜め込んでいたらしい。一体どれだけ大量の執務を溜め込んでいたのやら、まったく困った国王様である。


「本当に困ったお父様ですわ……あら、生徒会長ですの」


「揃っているな下級クラス、今日は決戦だ!」


「むむっ、フランツなのじゃ」


「ハインリヒだ! いつになったら覚えられるんだよ!」


 相変わらず名前を間違われるハインリヒ。それにしても酷い間違われ方だ、まったく原型を留めていない。


「決戦前の挨拶にきたのだが、その前に彼女は誰だ?」


「友達のリィアンですわ、運動会に参加しますのよ」


「勝手に部外者の参加を決めて……まあいい、飛び入り参加は自由だ。リィアンとやらもまとめて、完膚なきまでに叩き潰してやろう!」


 ハインリヒの気迫は下級クラスに勝るとも劣らない。熱気は最高潮といったところで、ノイマン学長とラヴレス副学長が姿を現す。


「ほっほっほっ、大いに盛り上がっておりますな」


「今年の運動会も、熱い戦いを見られそうですね」


「非常に楽しみですな、それでは開幕といきますかな!」


 ノイマン学長の宣言で、ついに運動会は幕を開ける。果たして一位の表彰台に立つのは誰なのか、そしてリィアンの運命や如何に──。

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