第186話 聖騎士の誓い

 魔人リィアンの襲撃から一夜明け、戦いに参加した聖騎士達はロームルス城の会議室に集まっていた。

 円卓を囲む聖騎士は五人、ガーランド、パルチヴァール、トーレス、そしてスカーレットとカイウスである。魔物との戦いで負ったケガは、治癒魔法により治療されているようだ。


「建物の被害は甚大、だが幸いにも犠牲者は出なかった」


 被害状況を告げているのはゼノン王である。聖騎士達へと向ける視線は、刃のように鋭く冷たい。


「問題はお前達の戦い方だ、敵前にもかかわらず仲間内でいざこざを起こしたそうだな。一体どういう了見か説明してみろ」


 ゼノン王の迫力は歴戦の聖騎士ですら身を縮めるほどである。そんな中ガーランドだけは怯むことなく立ちあがり、ゼノン王へと深く頭を下げる。


「責任は全て俺にあります、如何ような処分でもお受けいたします」


「「ガーランド様!?」」


 ガーランドの唐突な発言に、パルチヴァールとトーレスは大慌てである。


「ガーランド様一人で処分を受けるなどありえません!」


「……ならば俺達も処分を受ける!」


「パルチヴァール、トーレス、お前達の気持ちはありがたい。しかし責任を取るべきは俺だ、全ては俺の失態なのだ」


「「ガーランド様……」」


「くだらぬ自尊心で行動し、お前達まで危険な目にあわせた。すまなかったな……」


 重苦しい沈黙の中、唐突に扉が開かれる。


「待たせたな、腕の治療に手間取った!」


 現れたのはエリザベスだ。重苦しい空気を吹き飛ばすように、治療したばかりの右腕をブンブンと振り回している。


「治癒魔法とは凄いものだな、折れた腕も一晩で元通りだ……ん? ずいぶんと静かだな?」


「エリザベス様にも悪いことをした、どうか謝罪させてほしい」


「どうしたガーランド? 私に頭を下げるなんてらしくないぞ?」


「本当にすまなかった、全ての責任は俺が取る」


「もしやガーランドは熱でもあるのか? 昨日の戦いで頭でも打ったか?」


 事情を飲み込めていないエリザベスに、スカーレットはそっと耳打ちをする。


「先日の戦いで聖騎士同士いざこざを起こした件、ゼノン陛下はとてもお怒りなのです。それでガーランドは責任を取ると言っているのです」


「そういうことか、だったら責任を取るべきは私じゃないか」


「「はっ!?」」


 エリザベスの思わぬ発言に、スカーレットとカイウスは大慌てである。


「私は聖騎士筆頭だ、責任を取るべきは筆頭である私に決まっている」


「待ってくださいよエリザベス様──」


「すまなかったなガーランド、サンダーバードを抑えてくれてありがとう。パルチヴァールとトーレスも大事なくてよかった、これからもロムルス王国を守ってくれよ!」


 スカーレットの制止も聞かず、エリザベスは順々に頭を下げていく。


「ということで父上、全ては私の責任だ! 他の誰にも責任は負わせないでくれ!」


「ほう……」


 エリザベスの毅然とした態度を見て、ゼノン王はどこか満足気だ。


「誰かに責任を負わせようとは思っておらん、お前達には引き続きロムルス王国を守ってもらう。しかし一つだけ誓ってもらうぞ!」


 そう言うとゼノン王は立ちあがり、六人の聖騎士へと視線を送る。


「二度と下らんいざこざなど起こすな! 聖騎士の誇りにかけ、団結しロムルス王国を守り抜くと誓え!」


 ゼノン王の檄を受け、六人の聖騎士は姿勢を正し敬礼する。


「「「「「はっ!」」」」」


 こうして聖騎士達は誓いを胸に、より強く結束を固めるのであった。

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