第11話 最終試験

「受験生は集合!」


 剣術実技の試験が終わり、受験生達に集合がかかる。

 校庭の端っこ、森へと繋がる入り口の前で、列を作る受験生達。

 ウルリカ様とオリヴィアは列の最後尾に並ぶ。


「これより最後の試験、実地試験を行う!」


 集められた受験生達は、みな緊張した様子だ。


「試験の内容は魔物討伐だ! 指定された地域で魔物を討伐し、討伐証明を持ち帰ること!」


 説明にあわせて、受験生達に紙が配られていく。


「試験場所は“パラテノ森林”、すぐ後ろに見える森だ。討伐対象の魔物は配布した紙に記載してある」


「ふむふむ、魔物を相手にした試験ということじゃな。実践的でよいのう」


「パラテノ森林に生息する魔物は、いずれも討伐難易度EかFだ。だからといって気を抜くなよ、常に万が一に備えて試験に臨むように!」


「む? 討伐難易度とはなんのことじゃ?」


「魔物ごとに振り分けられた討伐の難しさです、危険の度合いと考えてもよいです。上は難易度Aから下は難易度Fまであります」


 ウルリカ様とオリヴィアは、そろって紙をのぞき込む。

 紙には様々な魔物の絵が描かれている。オリヴィアがその一つを指差す。


「ほら、ここに書いてある記号が討伐難易度ですよ。この魔物は討伐難易度Fということになりますね」


「なかなか面白いのじゃ! 難易度Aの魔物はよほど強いのだろうな」


「もちろんですよ! 難易度Aを討伐するためには、軍隊並みの戦力が必要と言われていますから」


 討伐難易度について興味津々のウルリカ様。

 その間も試験官から、試験内容の説明が続けられる。


「なお試験はチームで行う! 今から十五分以内に各々チームを組むこと、チームを組めなかった者は個人参加とする!」


「ほう? 試験なのにチームを組むのか、なぜじゃろうな?」


「他者との連携、協調性、組織作りなども評価基準だそうなので」


「つまり友達作りじゃな! 楽しそうじゃな!!」


「いえ……そんなに軽いものでは……」


「よぉし、妾もチームを作るかの!」


 ウルリカ様は早速近くの受験生に話しかける。


「そこのお主!」


「ちょっと、近づかないでよ!」


 フイッと離れていってしまう受験生の少女。


「うむ? そうか……ではそこのお主、妾とチームを組もうではないか!」


「やめてくれよ、シャルロット姫様に嫌われるだろ」


 そっけなく去っていく受験生の少年。


「むぅ……みんな妾から離れていってしまうのじゃ……なぜなのじゃ……?」


「きっとシャルロット王女の仕業です、ウルリカ様とはチームを組まないように命令しているのです」


「なぜそんなことをするのじゃ……妾の邪魔をしても、シャルロットにはなんの得にもならぬだろうに……」


「ウルリカ様が王女を怒らせたからですよぉ……」


 一人ポツンと取り残されてしまうウルリカ様。

 そこへシャルロット王女がやってくる。


「あら? 田舎者の魔王様は一人ぼっちかしら?」


「おお、シャルロット! お主は沢山の友達がおるのう」


「ええ、あなたと違ってね」


 シャルロット王女の後ろには、多くの受験生がついてきている。

 最後尾には、ウルリカ様と剣術試験を戦ったナターシャの姿もある。


「シャルロットのチームは全部で十人か、ナターシャも一緒なのじゃな!」


「あら? ナターシャを知っているのね。この子は荷物持ちでチームに入れてあるのよ」


「荷物持ち? それはもったいないのう……」


 ウルリカ様の一言に、シャルロット王女はピクリと反応する。


「もったいない? どういう意味かしら?」


「この中でシャルロットよりも実力が上なのはナターシャだけじゃろ? なのに荷物持ちとは、もったいないのじゃ」


「は? ワタクシより実力が上?」


 ギロリとナターシャを睨むシャルロット王女。


「ひぃっ、私なんてシャルロット姫様の足元にも及びませんっ」


「そうですよ、ナターシャはいつも間抜けなんですから」


「シャルロット姫様よりナターシャの実力が上なんて、あり得ない話です」


「そうよね、田舎者の言うことなんて聞くだけムダだったわよね、行くわよみんな!」


 その場を去っていくシャルロット王女と取り巻きの子女達。

 ナターシャだけがペコリとお辞儀をして、いそいそとシャルロット王女を追いかけていく。


「なんとも歪んだチームじゃのう……心配じゃ……」


「あの……ナターシャ様の実力がシャルロット様より上というのは本当なのですか?」


「間違いないのじゃ、ナターシャの実力は──」


 その時、試験官から号令がかかる。


「チーム作りはそこまで! 出発の準備に取りかかれ!!」


「なんと! 話しておったら時間がなくなってしまったのじゃ! 妾はまだ一人なのじゃ……」


 ションボリと下を向くウルリカ様を見て、オリヴィアは心配そうな表情だ。


「まあよいかの、一人でもなんの問題もないしの!」


「そ、そうですか……」


 パッと気持ちを切り替えてしまうウルリカ様。

 切り替えの早さに、オリヴィアはビックリしてしまう。


「では最後の試験じゃ、頑張るのじゃ!!」


 こうして、ウルリカ様の最終試験がはじまるのだった。

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