第三章

第三章

翌日。

モーム家では、トラーはもちろんの事、マークさんでさえも少し落ち込んでいた。昨日、水穂さんが、あんなような形で病院に行ってしまうとは、みんな思いもしなかったからだ。ベーカー先生も、あんな風に、水穂さんを連れて行ってしまうのは、一寸、強引過ぎるというか、水穂さんはそれくらい悪かったのだろうか、という事も、大きなショックであったのである。

「さあ、みんなご飯だよ。冷めちゃうから、急いで食べよ。」

杉ちゃんが、蕎麦掻を入れた皿を、テーブルの上におきながらそんな事を言った。マークさんは、そうだねえ、と言いながら、大きなため息をついて、椅子に座った。トラーも、がっくりとした表情のまま、マークさんの隣の席に座る。

「みんな落ち込むなよ。食べないと、力でないぞ。水穂さんみたいな病人だけじゃない。元気な奴も、バカな奴も、ご飯を食べなきゃ、みんな力が出ない。」

「そうだねえ。」

マークさんは、フォークで蕎麦掻を一つとった。

「其れにしても、なんで、日本では、蕎麦掻というモノを毎日のように食べてたの、杉ちゃん。」

「へへん。なんだかさあ、どっかの地方都市が、閉鎖されるってんで、外出禁止令が出る前に、米を大量に買い占めようっていう馬鹿な奴らがでちまってな。コメが、どこにも売ってなくてさ。だから、こういうときに、蕎麦掻という非常食がある分けよ。」

杉ちゃんは、そういって、蕎麦掻をバクっと食べた。

「へえ、それほど、流行っているのかあ。少なくとも、それなら、水穂さんをこっちへ連れてきた、僕の判断は間違っていなかったらしいな。それだけでもよかったと思う様にしておこう。」

マークさんも、蕎麦掻を口にした。その間にも、トラーは、何も食べようとせず、しくしく泣いている。

「おい、トラちゃん、お前さんも食べろや。でないと力も出ないぞ。」

杉ちゃんはそういうが、トラーは、だって、、、と涙をこぼして、

「だって、一杯食べてほしくて買ってきたのに。それが全部無駄になってしまったのよ。それに、水穂、そんなに悪かったなんて、あたし、ちっとも知らなかったわ。もっと早くこっちに来てもらう様にすれば、こうはならなかったかも知れないのに、、、。」

と、すすり泣くのである。

「だからあ、気にしないでいいの。そんな泣いたってむっだだよ。それよりも、水穂さんを何とかしたいだったら、なんとかするにはどうするかを考えればいいじゃないかよ。」

杉ちゃんがそういうと、

「だって、もうあたしたちには何とかできないところまで、水穂、行ってしまったじゃないのよ!」

と、トラーは、テーブルをバアンとたたいた。

「まあまあ、テーブルまで壊さないでくれ。お前もさあ、そんなに泣いても、エネルギーの無駄遣いなのに、早く気が付けよな。」

と、マークさんが、そうトラーを窘めると、居間のテーブルの上においてあった、マークさんのスマートフォンが鳴った。ちょっとごめんと言って、マークさんは、急いでスマートフォンをとった。

「ほらあ、泣いちゃだめだ。そば粉なんて、こうして蕎麦掻にしちまってもよし、そば切りにしてしまってもよし、蕎麦ケーキや、そば粉パンとか、色々使い道はあるだろう。だから、絶対無駄にはならないよ。食べ物というのは、無駄にしてはいけないのさ。其れはお前さんも知っているじゃないか。」

と、杉ちゃんが、そう泣いているトラーを慰めて、やっとトラーが、蕎麦掻を口にしてくれたちょうどその時、マークさんがもどってきた。

「お帰り。誰から電話?」

と、杉ちゃんが聞くと、

「ああ、ベーカー先生からだよ。結論から言うと、水穂さんは、昨日一晩中咳き込み続けていたそうだけど、止血剤が効いて、やっと眠ってくれたらしい。」

と、マークさんは答えた。

「じゃ、じゃあ、水穂は大丈夫なのね!」

トラーが、マークさんに詰め寄った。

「まあ、とりあえずそういう事だ。」

と、マークさんが言うとトラーは、よかった、よかったと、十字を切って、御祈りを始めてしまう始末だった。

「で、其れで何だけど、杉ちゃん、今日、時間があるときで良いそうだから、病院に来てほしいって。なんでも、水穂さんの事について、主治医のガブリエル先生から、聞きたいことがあるんだって。僕が、通訳するから、大丈夫。朝ご飯食べたら病院に行こう。」

「通訳、わたしではだめ?」

トラーはそういうことを言うが、お前は、落ち着いてないじゃないかと、マークさんは、お兄さんらしく言った。不服そうな顔をしているトラーに、お前はチボー君の家に行けとマークさんは指示を出した。

「それにしても、ガブリエル何て、変な名前の主治医が、水穂さんについたな。」

杉ちゃんはそういって、蕎麦掻をバクバク噛んだ。

三人が朝ご飯を食べ終えると、マークさんは、すぐにタクシー会社に電話した。タクシーは、直ぐに来てくれた。のけ者にされて悲しそうな顔をしているトラーに、お前のことも水穂さんに伝えておくから、と、マークさんは、しっかりと言って、杉ちゃんと一緒に、タクシーに乗って家を出て行った。


マークさんが、病院の名前を言うと、明るく陽気な運転手は、ああ、あそこですか、あそこはいつも弱いものの味方と言われている病院ですねえ、ロマ族だって入院したことがあると、聞いたことがありますよ、なんていう世間話をしていた。そういう弱者にもちゃんと対応した病院があるんだねエ、そんなもの、日本はどこにもないよ、と、杉ちゃんは、感心してため息をついていた。

タクシーは、病院の正面玄関前についた。これが病院か、まるでホテルだなあと、杉ちゃんがおどろくほど、きれいな病院だった。病院の前庭には、岩で作った池に、鹿威しが設置されていて、何だか日本庭園を再現したようであった。二人は、病院の自動ドアをくぐって、病院の中に入ったが、段差らしきものも何もないし、車いすの人が、平気な顔をして花をもって見舞いにやってきているのが、日本とはぜんぜん違う所だった。患者さんも、点滴をぶら下げて、病院のロビーで家族と自由におしゃべりをしているし、中には一緒にバックギャモンをしたりしている患者もいる。お医者さんとしゃべっている患者や、看護師さんや掃除のおばさんとしゃべっている患者もいて、日本の病院に在りそうな、殺風景なところはどこにもなかった。

マークさんが、受付に、磯野水穂さんはどこにいるのかと聞くと、少し待ってください、と、いわれて、二人はロビーでまたされた。退屈しないように、ロビーには、雑誌や書籍が大量に置かれていたが、文字の本ばかりではなく、写真集や、画集なども置いてあったので、杉三もそれを眺めて退屈せずに過ごすことができた。

数分後、受付が、昨日水穂さんをここへ連れてきたベーカー先生と、もう一人の白衣を来た男性を連れてやってきた。マークさんの通訳をとおして、磯野水穂さんの担当医になった、ガブリエル・ロジェ先生だとわかった。

「はあ、そうですか。面白いコンビだあなあ。ベーカー先生がふさふさなら、この先生は、三角顔で禿げ頭か。」

思わず、杉ちゃんが笑ってしまうほど、ガブリエル先生は、ガブリエルという名前が似合わない顔をしていた。確かに、頭がとがっているように見えるし、スキンヘッドで、歳は、帝大さんより少し若いくらいだ。黒縁の眼鏡をかけているが、それがなかったら、どこかのお笑い芸人にでもなりそうなくらい面白い顔をしていたのだった。マークさんの説明によると、ガブリエル・ロジェ先生は、この病院で一番年上の先生だという。臨床経験も豊富だから、大丈夫だとマークさんは言ったが、杉三は、変な顔で頼りなさそうだと言って、カラカラと笑った。

ベーカー先生が、こちらへ来てくれと言って、二人を病院のロビーから少し離れた、会議室と描かれている部屋に通した。

「で、水穂さんの容体はどうだ?」

と、杉ちゃんが聞くと、ガブリエル先生が答える。マークさんが、

「ええ、今日の明け方まで咳が続いていましたが、投与した止血剤がうまく効いたようでとりあえず眠っています。ですが、危険な状態なのは、変わりありませんので、状態が落ち着くまで暫くこちらで。」

と通訳した。

「はあ、そうなのね。で、とりあえず、意識はあるのか?」

杉ちゃんがまた聞くと、ガブリエル先生は、尋ねるのはこっちですよ、とフランス語で言った。マークさんが通訳すると、

「尋ねるってなんだ?」

と、杉ちゃんは、そう聞いた。ガブリエル先生は、真剣な顔をしてこんな内容を杉ちゃんに尋ねる。マークさんの通訳を介して、内容はこのようなものであった。

「実はですね、彼の吐瀉物を調べてみましたが、結核菌は全く検出されていません。それに、今、日本で大流行している発疹熱の病原体も検出されませんでした。しかしですね、血液検査をしてみましたが、自己抗体と言われるものが大量に見つかりましてね。彼は、肺結核ではなく、重度の自己免疫性疾患という事になります。其れも、早く手を打たなければ、どうにもならなかったほど重症です。ここまでひどい例を見たのは、戦時中でなければありませんでしたよ。日本では、ここまで重篤になるほど、放置しておくものなのでしょうか?少なくとも、日本の医療は、そうなるほど、遅れていることはないと思いますが?」

「うーん、、、。そうだねえ、まあ確かに、日本は、中国じゃあるまいし、医療が遅れていることはないと思うよ。だけどねエ、水穂さんには、どうしても、乗り越えられない問題がありまして、、、。」

杉ちゃんは、頭をかじりながら、そういうことを言った。マークさんが通訳すると、ベーカー先生も、ガブリエル先生も、変な顔をして、顔を見合わせる。

「ちょっと待ってくださいよ。どうしても乗り越えられない問題って、何ですか。日本は、そんなに、遅れている国家ではないはずなんですがね?」

マークさんの通訳を介して、ガブリエル先生がそういうことを言った。

「だからあ、難しいなあ。日本の身分制度をどうやって説明したらわかってもらえるだろかな。」

杉ちゃんは、頭をひねった。マークさんが通訳すると、

「わかってもらえるかなんて、考えていないで、口に出して言ってみてください。そのほうが、早いでしょう。」

と、ベーカー先生がそういう事を言った。マークさんの通訳で、それを聞いた杉ちゃんは、

「ああ、わかった、じゃあ言う!あのねえ、日本には、江戸時代、死んだ牛とか馬の革を剥いで、その革で鞄とか帽子なんかを作る人々がおりまして、その人たちは、同和地区とか呼ばれている、立ち入り禁止の区域に住まわされ、在りとあらゆるところで差別を受けていた。穢多とか、えったぼしとかそう呼ばれてね。其れで水穂さんは、そういう同和地区に住んでいたので、長らく貧しくて医療も受けられなかったので、重症化するまで、放置するしかなかったという訳だよ。」

と、説明した。マークさんが、それを通訳すると、ベーカー先生も、ガブリエル先生は、また顔を見合わせた。

「つまり、こちらで言う所の、ワルシャワゲットーと同じようなものが、日本にあったということでしょうか?ワルシャワゲットーにはユダヤ人が住んでいたが、それと、おなじように、えたとかえったぼしという民族が、同和地区と呼ばれるところに住んでいたと?」

と、マークさんの通訳を介して、ベーカー先生が言った。

「ちょっと待って、日本は、確かに朝鮮民族や中国人なども在住しているとは聞いているけれども、そういう異民族が住んでいたとは聞いたことはない。異民族と言えば、アイヌ族が日本の北のほうに住んでいると聞いたが、彼の住んでいるところは、そこではないという事は、地図で調べてある。」

ガブリエル先生が、そういうことを言った。マークさんの通訳を聞いて、杉ちゃんは、

「まあそうなんだけどねえ、日本は、確かに大和民族の単一民族国家と言われれてますよ。その中でも、そういう身分制度みたいなことがあってねえ、大和民族であっても、その中で差別しあう事はあったんだよ。」

と言った。マークさんの通訳を聞いて、ベーカー先生が、

「しかし、それではなんで、ワルシャワゲットーのようなものを作って、閉じ込めておかなければならなかったんでしょうね。他に、同一民族で、そういう風に、差別された例として、何があるでしょうか?」

と、ガブリエル先生に言った。

「ウーン、確かに革をどうのこうのというのを押し付けられたものとしては、インドの不可触民の例もあるが、それはアーリア人でなかったから、という理由が付いている。ほかに、ミャンマーのカレン族も似たようなものだったが、こちらも、奇妙奇天烈な生活習慣を抑圧させるという目的があった。同一民族で、互いに差別しあったという例は、聞いたことがない、、、。」

ガブリエル先生は、年寄りらしく、そういう事を言った。マークさんが、それを通訳して杉ちゃんに伝えると、

「へえ、禿げ頭の先生は、そういう事も詳しいんですか。」

と、杉ちゃんが思わずそういう事を言った。マークさんが通訳すると、

「いやあ、若いころ、発展途上国で働いていたことがありましたからな。」

と、ガブリエル先生は言った。

「そうなのね。まあ、日本は、長らく開国していなかったので、そういう歴史があるんだと思ってくれ。同和問題に関しては、そう思ってもらうしかないよ。それよりも、水穂さんは、日本ではその人種差別のせいで、ヨーロッパに来なきゃ、ちゃんと治療してもらえないんだから、こっちで治してやってほしい!水穂さんという人は、僕にとって、大事な友達だし、今逝かれちゃったら、僕たちは非常に困るんだ。だから、もうちょっとこっちにいさせてやってくれ!頼む!」

マークさんの通訳が終わってすぐに、杉三はそう懇願した。杉三が、頭を下げると同時に、マークさんは、通訳した。二人の医者たちは、杉三の真剣な顔を見て、何か感じ取ってくれたらしい。

「わかりました。いばらの道かも知れませんが、必ず治します。そう彼に伝えてください。」

という意味の事を、ガブリエル先生が言った。そして、友情のあかしとして、右手を杉ちゃんに差し出す。杉ちゃんもにこやかに笑って、ガブリエル先生の、しわだらけの右手を握り返した。

「もうすぐ、水穂さんの担当看護師も決めますから、その看護師とも、連携をとっていきますからね。」

実は、担当看護師を決める話し合いをする暇もなく、付き添っていなければならない状態だったという事を、ガブリエル先生は、あえて言わないで置いた。


メイは、落ち込んでいた。

今は、この病院で働くことができて、家族にも仕送りすることができて、幸せなのだと思いたくても、そうおもうことができない自分がいた。確かに自分は、奨学金をもらって、看護学校をださせてもらったし、看護師として働かせてもらったりもしているから、幸せだし、パリ市内で一人暮らしもさせてもらっているのだから、とりあえず、物理的には幸せという事になるのだろう。でも、どこか辛い。何処か、満たされないことが多い。どうしてそうなってしまったのか、理由はちゃんと知っている。私は、白人ではないからだ。

そう言えば昨日、メイは珍しく夜勤ではなかった。その日、帰ろうとしたところ、珍しい患者さんが運ばれてきた。一緒に連れてきたベーカー先生の話によると名前は磯野水穂さん。その名前から聞くと日本人だ。パリ市内に観光でもしに来て、具合が悪くなったのかなと考えたが、それも違うようだ。看護師なんだから、あまり患者さんの事にはかかわらない様にとほかの医者から言われていたけれど、どうしても、その患者さんのことが気になってしまった。その日は、とりあえず病院に残っても仕方ないので自宅へ帰ったが、よく朝、メイが病院の警備員さんに、昨日の患者はどうだったのかと聞いてみると、昨日一晩中、ベーカー先生とガブリエル先生は、彼の事をずっと観察するため、病院にずっといたという話が得られた。それからもメイは、その患者さんの事が気になって仕方なく、朝の患者さんの見回りは上の空だったような気がする。

他の看護師たちは、そんな患者がやって来たなんて気にも留めなかったが、メイは、気になってやってはいけないとは知っていたけど、こっそりベーカー先生や、ガブリエル先生が、話しているのを、会議室のドアに耳をつけて立ち聞きした。いくら、やってはいけないといわれても、気になった。患者さんのプライベートなことは聞いてはいけないといわれても、気になった。

会議室でだれが話しいているのかは分からないが、自分にはわからない言語で、誰かが何か言っているのが聞こえてくる。時折、フランス語も聞こえてくるので、通訳しながら、話を続けているのだろう。それを頼りに聞いてみると、どうやらあの綺麗な日本人の患者は、日本に居ながら、ワルシャワゲットーのような区域に閉じ込められ、差別的に扱われて生活してきたようだ、という事がわかった。それを聞いて、メイに大きな衝撃が走る。

「私と同じだ!」

思わず、口に出して言ってしまいたくなるほど、水穂さんという人がかわいそうになった。

そう言えば私もそうだった。何度やめてと言っても、お前は黒人だといわれれば、なにも返すすべもなかった。何か優秀な成績をとっても、黒人であるという事で帳消しになってしまうし、人助けをしても、それはすべて、白人に譲らなければならなかった。自分がしたことは、すべてなかったことになってしまう。その悔しさは何度味わっただろう。子供のころだけではなく、今でもそうである。何をしても、何をやっても、そういう事になってしまう。その悔しさや、悲しさは、いくら日記に書き散らしても、ものに当たり散らしても、解決することはなかった。

「そうか、あの人も、私と同じことされてたんだ。」

彼女は、ドアの向こうで語られている話を聞きながら、そういうこと呟いた。

同時に、彼の事を助けてやりたいという気持ちが、メイの心にわいてきた。メイは、涙を拭いて、ある決断をする。

メイは、何食わぬ顔をして、ナースステイションに戻った。そして、ガブリエル先生がもどってくるのをじっと待つ。その間に、自分が受けていた、ありとあらゆることを思い出していた。黒人であった、つまるところアフリカ出身だったから、看護学校でも、最初に赴任した病院でも、転職してやってきた、この病院でも、何処に居ても自分はバカにされて、笑われて、良いものはすべて持ってかれて、そんな事ばかりの人生だった。

「メイさん、何をしているの、こんなところで。」

不意にそういう意味の言葉が聞こえてきたので、メイは後ろを振り向く。振り向くと、ガブリエル先生が、立っていた。

「あの、あの可哀そうな日本人の担当看護師は、もう決定してしまったのでしょうか?」

また、白人の看護師がとってしまったのだろうなという気持ちもあったが、それでもメイは口に出して言ってみた。

「ああ、彼の担当はまだ決まっていません。これから、他の看護師たちに呼びかけて、誰か立候補してくれる人を探すつもりですが。」

意外な答えが返ってきた。という事は、まだ決まっていないのだ。これはもしかしたら、大チャンスなのではないか?もしかしたら、自分の望みが、かなうかも知れない!と、メイは、覚悟を決めて、こういってみる。

「あの、もし宜しければ、私が、彼の担当看護師に立候補してもよろしいでしょうか!彼、相当重度だと私、聞いてしまいました。其れなら、早く決定した方がいいんじゃありませんか!」

ガブリエル先生は、メイがどんな思いでそういうことを言ったのか、読み取ってくれたかどうか不詳だが、メイに、水穂さんの担当になってくれと言った。メイは、心の底から喜んだ。





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