第二章

第二章

ラターさんは、落ち込んでいた。

どうも、この店をやっていく自信がなくなってしまったというかなんというか、そんな風なこと、誰かの言葉を借りて言えば、ぼんやりと不安になってしまう気がする。

妻のハナは今日も病院に行くと言って聞かなかった。何時頃から、ハナがおかしくなり始めたのか、そんな事も覚えていられないほど、ハナは、変わってしまっていた。始まりは、何だっただろうか、何だか疲れてしまったといい始めたことだ。それから先はあっという間だったっけ。すきだった猫の世話もしなくなり、食事の支度もしなくなり、仕舞にはお風呂にも入る気がしないと言い出す始末。朝も、パジャマのままで、化粧もしなければ、着替えもしない。そんな状態で、一日中寝ているようになってしまった。口を開けば、もうつらい、の連発。それ以外言葉はないのか!と、ラターさんは声を荒げてやりたくなってしまうほどであった。勿論、実際にそういうことをしてしまった事だってあった。先日、買っている猫を殴り殺そうとしたために、ラターさんは、彼女を初めて、精神科という所へ連れて行った。診断名は、うつ病という事だった。

これで投薬治療が開始されたけれど、其れも効くか効かないか何て、半信半疑と言ってよかった。鬱の薬というモノは、熱を下げるのとおなじような効果を、示してくれるわけでも無いのだった。楽になったかと聞いたけれど、一向に変わらないというだけなのだ。相変わらず猫に餌はやらないし、

食事の支度もしないし、化粧もしないし、着替えもしない。ラターさんは、一応、薬は飲ませておいた方がいいと医者に言われていたので、病院には通わせていたが、本当に病院に行って変わるもんだろうか、と、疑いを持ってしまうほど、ハナは変わらなかった。

そういう訳で、今現在、お店はラターさんが一人でやっている。お客さんからは、近頃万事屋さんの奥さんを見かけませんね、と聞かれる事も多いが、それに対し彼は、一寸体調を崩していて、とだけ、答えるようにしている。さすがに、うつ病になってしまった、なんてことは、言えない。環境を変えれば、奥さんはよくなるよ、とアドバイスしてくれる人も中にはいたが、この店をやっていかなきゃならないので、店をたたんでどこかに行く、という訳にもいかない。もうにっちもさっちも行かないという言葉が、まさしくぴったりの状況だった。

幸い、家にお金を入れない奥さんは嫌だねと批判する人はいなかった。そこだけは、不幸中の幸いであった。そういうところはやっぱりヨーロッパである。基本的に他人に危害を加えるようなことをしなければ、相手の人たちも矢鱈と批判をするようなことはしないのだ。

できれば、妻のために、どこかののんびりした田舎へ引っ越して、なんてことも考えていたが、今のままでは、動くなんてこともできやしない。自分が奥さんに対して変わるのみだよ、なんてアドバイスしてくれる人もいたけれど、変わるという事も、なかなかできなかった。変われる人というのは、生活に余裕があるとか、そういう風に何か、自由が得られている人でないと、できやしないのだから。

そういう訳で、ラターさんは今日も落ち込んだままだった。お客さんの中には、小さな子供さんもいて、彼の事を、万事屋の怖いおじさんとか、いつも怒っている万事屋のおじさんなどと言って、怖がる人も多かった。


今日もラターさんが、店を開けて、さて、今日も一日、頑張ろうかと考えながら、商品である果物や、野菜類などを整理していると、そとから変な言葉が聞こえてきた。声を聞けば、モームさんのところのトラーちゃんだとわかるのだが、その言語はどこかおかしなような気がする。それに、もう一人一緒にやってきた人物も、なんだか聞きなれない言語でしゃべっているなというような気がした。

「えーと、ここヨ。看板を訳すと、ラター食品店とでもいうのかしら。野菜とか、果物とか、もちろん、粉だってたくさん売ってるわ。」

「そうか、つまり、そういう店の事を、日本語では八百屋というんだ。食料とか、果物を売っている店の事をな。」

「やおや?へえ、日本語って面白いわねえ。そんな言葉、こっちでは何もないわよ。」

ちなみに、日本では食品と言うと、大きなショッピングモールとか、スーパーマーケットなどで買うことが多いのだが、ヨーロッパでは、ショッピングモールよりも、こういう小さな店で買う人がまだ多いのである。

「ボンジュール。」

トラーは、にこやかに笑って、ラターさんの店に入った。それと同時に、車いすに乗った、一人の男性も店に入ってきた。どうもこの男性、日本特有の服である、着物というモノを身に着けているので、間違いなく日本人だという事は分かるのだが、一寸、他の人とは、雰囲気が違うような気がする。

「えーと、そば粉はあるかな?」

と、その男性がいった。トラーが、急いで彼の言葉を通訳したので、ラターさんにも通じた。

「そば粉ですか。うちで扱っているそば粉はこれですが?」

ラターさんは、そういう意味の事を言って、レジの近くにあった、「SOBA」と書いてあるビニール袋を指さした。

「ウーンちょっと少ないな、せめて、二貫はほしい。」

と、その人物はそういことを言う。二貫とは何だと、ラターさんが聞くと、トラーが、

「二貫というのは、日本の重さの単位で、一貫は、4キロの事だそうです。」

と通訳した。ちなみに、ラターさんが販売しているそば粉は、一袋、250グラムである。四キロと言うと、16袋は必要になる。

「ここにあるの全部合わせても、8キロ何て用意できませんよ。」

ラターさんはそういう意味の言葉を言ったが、その人は、にこやかに笑ったまま、

「じゃあ、あるだけ全部くれ。なくなったらまた買いに来るから。」

と言った。トラーの通訳を聞いて、それを理解したラターさんは、しぶしぶ、そば粉をあるだけ全部、売り台から取り出して、紙袋に入れ始める。

「ありがとうございます。親切に売ってくれて、助かった。」

と、彼は、またにこにこしていった。そういう表情をしているから、敵ではないという事は分かるのだが、なんで、こんなにそば粉を大量に買っていくのだろう?トラーが、その人に変わって、計算した料金を、しっかり支払った。

ラターさんが紙袋を彼にわたすと、

「ありがとうございます。これで、蕎麦が作れるよ。釣りはいらないよ。じゃあ、また買いに来るから、次は、二貫以上用意しておいてくれよ。」

と、彼はいった。

「ちょっと待って。」

ラターさんは、そういって、今頭に沸いた疑問を言葉に出して言ってみる。トラーが、

「ねえ杉ちゃん、八百屋のおじさんが、なんでこんなにそば粉を買っていくのか、教えてくれって、そう聞いているわ。ケーキを作るにしても、こんな大量に作るって、おかしいからって。」

と通訳した。杉ちゃんと言われた彼は、そう言われると、

「ああ、僕と一緒に来た、水穂さんって言う人に、そばを作って食べさせるのさ。正確に言うと、蕎麦切りという、日本独自の料理なんだよ。こっちのもんで言えば、そば粉で作った、パスタみたいなものでしょうかな。」

と、答えた。トラーの通訳を聞いて、ラターさんは、

「へえ、どうやって、そば粉でパスタが作れるんだ?」

と、いう意味の事を聞いてみると、

「ああ、すり鉢に入れたそば粉に水を入れて、すりこ木で練って生地を作って、うまく固まったら、テーブルの上に広げて、包丁で細かく切って、後は、なべでゆでて食べるんだ。」

と、彼は答えた。

「日本では、そば粉は、そういう風にパスタのようにして食べるんだ。昔は、鰹節でだしをとったつゆにつけて食べるのが多かったが、今は、カレースープに付けたり、いろんな食べ方をする。」

トラーの通訳を聞いて、ラターさんは、余計におかしいなと思った。そば粉をパスタにする?どういう事だろうか?よくわからない。そば粉なんて、ここでは、ケーキやパンの材料にするだけなのに?

「そのパスタのようなものが、日本人の主食なの?こっちの食べものは食べられないのか。」

ラターさんがそういう意味の事を聞くと、トラーの通訳を聞いた杉ちゃんは、

「おう、仕方ないじゃないか。水穂さんは、何も食べられないんだから。こっちじゃ、そばしか食べられるもんがないからよ。だから作ってやろうとしてやっているんじゃないか。」

と言った。トラーが、補足するように、水穂さんと言うのは、この人の親友のような人で、今、重い病気の療養のために、日本からこちらにやってきている。この杉ちゃんが、彼の世話をしているのだ、と、ラターさんに説明して、ラターさんは少し理解できた。

「しかしね、その何とかというモノを作るだけではなく、ほかにも食べ物は一杯あるだろ?」

ラターさんはそんな意味の言葉を言う。確かに、食べ物は、どこの国にも一杯ある。よほどの最貧国でない限り、食べ物は、いろんなところに売っているはずである。

「だ、だからねエ、水穂さんには、ここの地域で流行っている、食べものは一切口にはいらないのでねエ。栄養とるんだったら、そばしかないんだよう。」

と、杉ちゃんがいった。トラーが急いで通訳するが、彼女も、これを聞かれては困るという表情をしている。

「あと、口にはいるとしたらさあ、野菜ばっかりだよう。肉魚一切抜き。コメはなかなか手に入らないんだし、小麦でできた、パンやパスタも食べられないし、、、。」

杉ちゃんは頭をかじりながら、そういうことを言った。

「おかしな人ですなあ。それじゃあ、何を食べているんでしょうかなあ。」

ラターさんはそういう意味の言葉を言って、腕組をして考え込む。

「だから、ご飯とかパンの代わりにくっているものは、そばなんだ!」

と、杉ちゃんは言った。トラーが、通訳するが、ラターさんは、ますます訳が分からないな、という顔をした。

「ちょっと、ランディ!」

妻のハナが、店の中に入ってきた。トラーが思わず、あら、おばさんどうしたの!と言ってしまうほど、ハナは頬もこけて痩せていた。それに、一般の人なら、こんな真昼間にどうしてパジャマ姿でいるのか、思わず首をかしげてしまいそうだ。

「どうしたの。この二人。」

ハナは、そんな意味の事を、ラターさんに聞いた。ラターさんが、ずいぶん変な客で、そば粉を、八キロもほしいというので、おかしいなと思ったんだ、と説明すると、ハナは二人を、ぼんやりとした顔で見つめた。

「ああ、だからですね。僕の親友の水穂さんという人は、ここでは何も食べるもんがなくてねエ。それでは可哀そうだから、こっちでそばという、そば粉で作ったパスタみたいなもんを、作ってやろうと思って。まあきっと、そばを主食にする習慣は、こっちではないと思うけどさあ。日本ではよくある事で、僕らはよく食べているんだよう。確かに、食べ物はどこにでもあるが、水穂さんは重い病気で、食べられるもんがない、、、。」

トラーの通訳を介して、杉ちゃんは一生懸命そう言った。ラターさんの顔は相変わらず変だなこの人、という感じだったが、ハナの顔は、だんだん優しくなっていった。そして、ハナは、その頬のこけた顔で、にこやかに微笑んで何か言った。

「おい、おばさんはなんて言っているんだ?」

杉ちゃんが聞くとトラーは、

「ええ、可哀そうな人だから、そのようにしてあげましょう、と言っているわ。」

と、通訳した。

「そうですか。おばさん、有難うございます。そば粉が手に入ったら、うまいそばがたくさん作れます。ここじゃあ、かっぱ巻きは作れないし、食べられるもんがそばしかない水穂さんは、きっと喜ぶとお思います。」

それを聞くと杉ちゃんは、日本人らしく丁寧に頭を下げてそういうことを言った。

「日本では、こういう時はお辞儀をするんだ。だから、僕も、こういう風にお辞儀をした。」

杉ちゃんが、そういうと、ハナはにこやかに笑った。言葉の意味は通じたのかどうかは不明だが、彼女はそうした。そして、また何か言った。

「杉ちゃん、ぜひ、可哀そうな子に食べさせてやってねと。」

トラーが通訳すると、杉ちゃんも、

「おう、わかったぜ!」

とにこやかに笑った。ハナがこんなにいい顔をしているところなんて、何年ぶりに見たのだろうか、と、ラターさんは驚いていた。まず初めに、他人に対してこんな態度をとったのを見たこと自体が、

もう二度とみられない光景だと思った。

ハナは、杉ちゃんにそっと右手を差し出した。杉ちゃんも、そっとその手を握り返した。

「ほんなら、軽く自己紹介でもしておこうかな。僕の名前は、影山杉三です。綽名を杉ちゃんといいます。いつでもどこでも誰とでも、杉ちゃん、杉ちゃんと呼ばれているから、そう言ってください。」

トラーの通訳を通して、それは、ハナにも伝わったようだ。彼女はにこやかに笑って、自分の事をハナ・ラターと名乗った。

「よろしくお願いします。」

「すぎちゃん、、、。」

ハナは、こういう時どう返していいのかわからなかったようだが、

「ああ、こういうときは、よろしくお願いします、で、大丈夫だ。」

と、杉ちゃんが言ったので、ハナはとぎれとぎれに、

「よろしく、、お、ね、がいします。」

と言った。ラターさんは、ハナが久しぶりに明るい顔をしているのに驚いているし、トラーは、杉ちゃんが、すぐにこういう風に仲良くなってしまうことに驚いている。

杉ちゃんは、釣りはいらないよと言ったが、ハナはしっかりとお釣りを渡し、領収書迄書いてくれた。そしてまた、杉ちゃんに何か言う。

「ああ、こういっているわ。もし、そば粉が足りなくなったら、家へ来て。仕入れて待っているわって。」

トラーがそう通訳すると、杉ちゃんは、にこやかに笑って、貰った紙袋を大事そうに抱えて、

「おう、ありがとうな!」

とにこやかに言った。改めてトラーが通訳して、二人は、方向転換し、店の外へ出て行った。ハナは、それを、二人の背中が見えなくなるまで見つめていた。


「杉ちゃんってすごいわねえ。」

と、トラーが、道路を歩きながら、そういうことを言った。

「そうやって、すぐに初対面の人と、お友達になっちゃうんだから。何か特別なテクニックでもあるの?」

「そんなもんないよ。僕のやっていることは、みんなバカのひとつ覚えだから。テクニックなんて何もないよ。それより、早く帰ってそばを作ってやらなきゃ。たくさん作って貯蔵しておかないとさ、水穂さんの飯がなくなっちまうぞ。」

杉三は、そういってカラカラと笑った。

「しかし、そばを作れるようにしておいてくれてよかったよ。すり鉢というモノはこっちでは売ってないからって、似たような形の鍋を用意してくれたり、すりこ木も、菜箸も用意してくれて。まあ、さすがにそば包丁はなかったけどさあ。」

確かに、杉三たちがモーム家を訪れたとき、すりこ木や、菜箸などの物は、すでに用意されていたのである。

「そう、すりこ木も菜箸も、チボーが作ったのよ。」

と、トラーは言った。

「えっ、せんぽ君が?」

「そうヨ。薪ストーブの薪がまだ残っていたので、それを使ってすりこ木や菜箸を作ったのよ。」

杉三が驚いてそういうと、トラーはにこやかに答えた。

「そうなんだね。せんぽ君は、手先が器用な男なんだな。」

「そうなのよ、あたし、学生のころから彼を知っているけど、昔っからそうだったのよね。音楽も好きだったけど、図画や工作も得意だったの。だって、何時だったか忘れてしまったけど、夏休みの自由研究で、鹿威しを作って提出したのよ。」

トラーは、学生時代の思い出を語った。

「鹿威し、ああ、僧都の事ね。あんなのが、西洋人には、うけるもんかなあ。単に、庭に入ってくる鹿やイノシシを、追い出すための道具だったのに?」

杉ちゃんがそう言うと、

「あたしもね、そう思ったんだけど、チボーにしてみたら、時間がゆっくり流れているみたいで、好きなんですって。ちょっと変わったところがあるっていうか、変なところに、目をつけるのよね。」

トラーは、そう話を続けた。きっとせんぽ君今頃くしゃみをしているぞ、と、杉三は、カラカラと笑った。

「音楽するときも、そうだったのよね。チボーったら、あんまりにも個性的な演奏をするものだから、コンクールに出て、赤っ恥をかいたことは何回もあったのよ。そうならないようにって、会場にはかあならずあたしを連れて行って、、、。」

トラーは、にこやかに話を続けているが、急に杉ちゃんに、腕を引っ張られて、話をやめた。

「どうしたの?杉ちゃん。」

「おい、あれ見てみろよ。せんぽ君じゃないか?」

杉ちゃんが、顎で示した方向見ると、確かにチボーがいて、自分の方へ走ってくるような気がする。

「どうしたんだろ?せんぽ君には水穂さんを診ていてやってくれとお願いしたはずなのに?」

杉ちゃんがそう言うと、チボーは、二人の方へ急いで走ってきた。その後ろについて走ってきたのは、警察官の制服を着た警官だった。警官は誰かを背負っている。

「どうしたのせんぽ君。うちで待っててくれって言ったのに、待てなかったかい?」

と、杉三が聞くと、

「いや、違うんだ。水穂さんが、ちょっと喉が渇いたといったので、一人にしておくわけにも行かないから、僕と二人で自動販売機迄行ったんだけど、販売機の前で急に咳き込んで倒れちゃって。それをたまたま駐在さんのポッターさんが見つけてくれたわけで、、、。」

と、チボーは説明した。確かに制服の警官に背負われているのは、水穂さんだった。

「とにかく、家に帰って、水穂さんを寝かせよう。」

と、杉三達は、急いでモーム家に戻り、警官のポッターさんにも来てもらって、水穂さんを客用寝室にねかせた。とりあえず、薬を飲ませて、落ち着いてもらい、暫く寝かせてあげようという事にした。警官のポッターさんには、状況を説明して、理解してもらった。ポッターさんは、心配そうな様子だった。

数時間後、マークさんも仕事から帰ってきた。チボーも、そろそろ暗くなってきたので、帰る時間になったのであるが、どうしても帰る気にならないでいた。杉三が、せんぽ君の分も、と、夕飯を分けてくれたのが、ありがたいことではあった。

杉ちゃんたちが、夕食を食べていると、また客用寝室から、咳き込む声が聞こえてきた。マークさんも含めて全員、食べるのをやめて、急いで客用寝室に行ってみる。水穂さんは、横になっていたが、激しく咳き込んでいて、着物の襟は、血液で汚れていた。急いでトラーが、水穂さん、これ飲んで、と頓服の薬を飲ませるが、咳き込んでいて飲めない。

「僕、ベーカー先生を呼んでくる!」

チボーは、そういうことを言った。マークさんもそのほうがよさそうだ、と、彼に賛同した。チボーは、鉄砲玉のように、モーム家の玄関を飛び出した。

数分後、チボーがベーカー先生と一緒に戻ってきた。ベーカー先生は、水穂さんがまだ咳き込んでいるのを見て、すぐに何か決断したらしく、強い口調で何か言った。

「なんだ今の!」

と、杉ちゃんが言うと、

「病院へ連れていきますって。」

と、マークさんが、通訳する。

「何!」

と、杉ちゃんは驚くが、ベーカー先生はそれを無視して、すぐにスマートフォンをとり、病院へ電話を始めてしまった。

「病院ってどこの!」

杉ちゃんはまだ聞くが、間もなくモーム家の前に救急車が到着する。ベーカー先生は、すぐに水穂さんを持ち上げて、客用寝室を出て行ってしまった。他の人たちが、何か言おうとしている間に、

水穂さんは、担架に乗せられて、救急車のなかに入って、ベーカー先生と一緒に行ってしまった。





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