言霊

@D335

第1話


大切にしていた俳優が自分のもとから去ることになった。馬事雑言を吐き、言いたいことだけをいい、

こちらの感情をなに一つ理解しないまま消えていった。

裏切られた気分になった。

一から育てた気になっていたのは自分だけだったのかもしれない。でも、人は人を傷つける。

いとも簡単に、無かったことにする。

そして自分は一人で成し遂げたと思っている。

振り返れば私は

「してあげている、頑張っている。」を彼に強要しすぎたのかもしれない。


彼に初めて会った時、この笑顔の男の子は俳優になるべきだと思った。そう感じたからこそ、彼の不遇の状況を打破すべく、自分のプロダクションに入れた。


そう、私はマネージャー業をしている。

マネージャーというものは自分の人生を犠牲にしてタレントのために生きる職業だと思う。

それをタレントがどうとるかは知らないが、

本人たちが思っている以上にマネージャーは時間や体力を犠牲にして働いてる。

愛情を自分よりも注ぎ、そして病む。


「わたしは大丈夫、わたしは大丈夫」

何度も言葉に出して自分に言い聞かせる。


「言霊」を信じて。


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