第6話


 また朝が訪れた。

今日も作業をきちんとこなさなくては。


 私はバケツを持って職場へ駆けていく。どうやらスコップとツルハシの

共同作業のようだ。普段より作業場がとても近い。

 今日の土は湿っていたのか、とても重く感じた。それなのに今日は一段と土の量が多い。掘る側からすれば、水分を含んだ土の方が掘り進めやすいのだろうか。


 とにかく、このままでは土の捨てる量より出てくる土の量が上回ってしまう。

残業をしたくても、作業終了のブザーが鳴ってしまうと、たちどころに睡魔に

襲われてしまうためできない。


 しかもスコップ男のみならずツルハシ男も一緒である。これでは単純に廃棄する

土の量が倍になるではないか。これではいけない、せめてもうひとりいれば、この

状況を打破しきれるのに。

 

 そんなことを考えているうちにも、どんどんと土は溜まっていく。余計なことを

考えていては間に合わない、とにかく少しでも移動スピードを上げなくては。


 スコップ男もツルハシ男も、こちらを気にすることなく黙々と掘り進めていった。今日は余計なことを考えている余裕は無いと悟り、土をバケツに少しでも多く盛り、廃棄場までの行き来の徒歩を少しだけ早めた。


 そしてそのうちに、作業終了のブザーが鳴った。

 

 無我夢中でやればあっという間だったなと自らを労い、バケツをブラブラと

振りながら焚き火の元へと向かう。

 そういえば、スコップ男とツルハシ男の様子を伺おうとしていた事を思い出した。

仕事中の彼らはお互いに気にする事なく淡々と掘削作業を行なっていたが、仕事が

終わった今ならどうだろう。男は二人を探す。



 見当たらなかった。作業員も、掘削道具もトロッコもレールも立ち入り禁止の鎖も手に持っていたバケツも全てなくなっていた。あるのは自分の身体と、どこまでも

深い炭鉱の暗い穴のみであった。


 ブザーはまだ鳴り響いている。



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