30
え~!?なんて不満そうな声を挙げた建君が。
「折角久々に亮く…じゃなくてサトリ君に会ったから俺まだ居たいよ!」
って立ち上がるのを拒否したから。
「勝手にしろ、―ーじゃあ先輩。お大事に」
そのまま出て行こうとする轟君に、せっかく来てくれたんだから、って立ち上がって俺が追いかけようとしたら。
「待て。俺が見送るから。御前はシャケの相手してろ」
竹兄が大義そうに立ち上がって俺の事留めた。
「――解った」
竹兄もきっと言い過ぎたって思ってるに違いないから。見送りは任せることにして俺はソファに座り直した。
竹兄と轟君の気配が無くなると。
建君が俺の顔指した人差し指の先をくるくる回しながら。
「サトリ君嬉しそうだね…」
夏休みの間ずっと竹兄に構ってもらえるもんね。イイなぁ(ノ∀`)σなんて言い始めたから。
「えっ(o ロ o )」
「竹兄は『愛情押し売ってやる』なんて言ってたけど。どうせサトリ君は押し売られるどころか喜んで全部買うんでしょ」
俺が喜んでるの出てるとしか思えなくて慌てて両手で顔を隠す。
「建くん。(*ノノ)俺そんなに分かりやすい?」
「わかるわかる(*´艸`*)」
「竹兄にバレてるかなぁ」
「バレてるバレてる(ノ∀`)σ」
「建くんどうしよう!!実は俺夏休みが待ち遠しいなんて初めてでどうしたらいいか解んないんだ( ノД`)」
「えぇ!?サトリ君夏休みキライだったの?」
「今までは…「あ、ゴメンサトリ君(n>д<)η!!!イヤなこと思い出させたよね?」建くん、俺まだ何も言ってないよ?」
俺が竹丘家に来るまでのこと、建くんには話してあったから、多分気を遣ってくれたんだろう。
「それにしても某都立かぁ…あの学校偏差値73でしょ?――凄いなあ、サトリ君。もともと成績良いのは知ってたけど…今回の期末何位だったの?」
一中は中間テストや期末テストで学年の成績20位以内だと渡り廊下の掲示板に名前が貼りだされて晒されるような学校だったから。去年の2学期3学期の俺の成績は建君も知ってたけど、竹兄に絶対に言わないでくれって頼んでた。
「――総合で…8位だった」
隠しても無駄だと解ってるからあっさり白状したけれど。
「わー凄いね!サトリ君とうとう一桁台行ったんだ!!」
「そう言えば…一中で某都立受ける奴って数年に1回、居るかいないかだし、その中でも受かる奴が殆ど居ないって聞いた事があるんだけど…ホントなのかな」
「あれ?――知らないのサトリ君。一中から某都立受けて受かったのって、この10年の間で竹兄だけなんだよ?」
あの人はねぇ。一中の伝説の人だから。
建君も轟君もそれを知ってるから、俺の口から『某都立受験する』なんて聞いて驚いたんだって解った。
「ええ!?――聞いてないよ…。竹兄『教えるのが上手い俺が教えるんだから絶対大丈夫』って言ってたのに」
「あはは!竹兄らしい。でも、サトリ君塾に行ってなくて学校の授業だけでその成績なんだから。優秀な家庭教師が付いたらもっと上位に行けるはずっていうのは竹兄の言う通りだと思うよ?じゃあ、本当にこの夏休み、サトリ君も頑張らないとだね!」
「そっか…」
途端に『竹兄と一緒に居られる楽しい夏休み』から『竹兄が教えるからには成績をジャンプアップさせないと竹兄が俺にがっかりして残念な夏休み』に変わって不安になる。
「何か怖い…。夏休み来てほしくない…」
って途端に凹み始めた俺に。
「ええ!?さっきまであんなに嬉しそうだったのに…ごめん!俺が余計な事言っちゃった?」
緊張して集中できない→勉強したことが身につかない→成績上がらない→竹兄に嫌われる。っていう経過をたどるのが目に見えてるから思わず。
「建君…。夏休み此処に来て一緒に勉強しよう?」
「えっ!?あんなに竹兄やる気満々なのに、俺が居たら邪魔じゃない?」
「だって竹兄と二人だけじゃ絶対に緊張して頭に入らない…」
「ええ!?――うぅん…」
って、何時もあまり困った顔見せない建君が唸ってるところに。
「何だシャケ。変な顔して唸って。スイカがつがつ食いすぎて腹が痛くなったのか?」
なんてからかいながら、轟君を見送ってきた竹兄が居間に戻ってきて俺の隣に「いてて…」って言いながら腰かけたところに。
「ねー竹兄。俺も夏休み毎日、此処に来てもいい?」
建君が唸ってたところから吹っ切れたみたいに笑いながら竹兄に聞いてくれた。
竹兄は急に建君の表情が変わったから「なんだなんだ!?」ってびっくりした顔した後真面目な顔で。
「小野は受験生だって言っただろ?そんな毎日オマエと遊んでる暇なんかないの。土日なら息抜きで呼んでやるから」
って、ぶらぶらと手を振ってダメダメ、って諦めさせようとしたけど、
「遊ぶだけじゃないよ?俺も竹兄に勉強教わりたい。夏休みの宿題此処でやる」
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