28

俺があんまり大したこと無いみたいに言ったのが良くなかったのかな…って少し反省してたら。竹兄が二人を手で制した。


「ま…座れよ。わざわざ来て貰って悪かったな…」


って労われた社家兄弟は戸惑ったまま顔を見合わせてからまたソファに腰かけた。


「珍しくサトリ君から俺に連絡くれたんだよ?ねー!」


って、建君がにこにこしながら言うの見て、


「なんだ、そうなのか?」


って竹兄が意外そうに言うから、俺は頷きながら。


「初めて携帯掛けた」


建君は早くも緊張から解放されたのかソファーの背もたれにだらーっと凭れ掛かりながら、


「もうさぁ…。出入りなら俺にも声かけてくれたら良かったんだよ~。ひとりで高校生30人潰すとかサトリ君凄いよねぇ」


「待て待て…、30人て何だ?」


竹兄が建君に向かって手のひら見せてストップ掛けながら尋ねたら、建君は両腕で思いっきり伸び上って大きく万歳までしてる。


「だって俺の高校でも、『ムサコーの奴等が30人くらいが病院送り』って噂が流れてるよ?まさか其れにたけにーとサトリ君が関わってると思わないじゃん!」


何時の間にそんな凄い話になってたんだろう、って俺も首を傾げてたら。竹兄が訂正を入れた。


「おいシャケ…その噂、文字通り話半分に聴いておけ?正確には16人だぞ?」


「え!?そうなの?サトリ君!」


建君に振られた俺はうんうん、と頷きながら。


「――そう。16人」


人数半減しちゃったからか、がっかりした声で、


「なぁんだー」


伸び上ってた両腕下して、だらーってソファの上で脱力してる建君に。


「建。16人だって相当じゃねーか。――俺だって、凶器持ってる奴等16人に囲まれたらかなりビビるぞ?」


今まで殆ど黙って聞いてた轟君がようやく参戦してきたけど。やっぱり稽古着の腕を組んで難しそうな顔してる。


「でもさあ轟君。ホントに強いなら凶器なんか必要ないと俺は思うよ?弱いから棒やナイフに頼るんでしょ?」


「――…」


建君の言うことは頷けるのか、轟君がまただんまりになって雲行きが怪しくなってきたところを、


「シャケは時々、本質を衝く事を言うよなぁ」


竹兄が感心しながらソファに座り直そうとしたけど『いててて』って今度は身を捩じらせて体の痛みに顔を顰めてる。


「それにしたって竹兄弱すぎだよ。痣だらけじゃん」


「もうさぁ。ダルメシアン柄かってくらい、体中色んな所に痣が出来てるぞ」


ほら、と竹兄が首を振って両頬や顎を見せたり、両袖捲って腕まで見せて、いろんな所に出来た痣を見せたら、わぁ!!って声あげた建君が立ち上がって、


「本当だ!!青とか紫とか黄色とか…スゲェ色々あるね!俺も轟くんに稽古でコテンパンにやられた後出来るし、痛いよねぇ!!」


って、竹兄に向かって手を伸ばして右腕の痣をつつき始めたら、慌てて竹兄はソファの上で建君の手から逃れながら。


「やめろよ社家!!」


建君が面白がっていろんなところをつつきまわすから。


「コイツ止めろよシャケ兄!」


とうとう竹兄は轟君に泣きを入れたけど、


「竹丘先輩こそ、その呼び方止めてくださいよ」


って轟君は腕組んで座ったまま全然動かない上にまだ建君が止めないから、いよいよ俺が留めるしかないかって立ち上がろうとしたら。


「はいはい、皆さん」


そのひと声で、一瞬全員の動きが止まって。部屋に入ってきたお父さんに視線が集まった。


「社家君から戴いたお見舞いを切りましたから席に着いて下さい」


切り分けたスイカの乗った大きな皿に今度は全員で釘付けになって、全員おとなしく席に座る。


『此処の宮司様は言霊を使って人を操れるよ』なんて建君が変な事を言ってたのを一瞬思い出した。


「お~!気が利くなシャケ兄弟。ありがとな!」


お見舞いの品があるって解った竹兄がさっきより二人の事歓待してるのがありありと解るけど、解りやすく現金な竹兄に苦笑いした轟君の隣で建君が。


「――俺達から、って言うより。父さんが『持って行け』って」


「そうでしたか…どうか御師僧様に宜しくお伝えください」


建君たちのお父さんの六勝寺の住職と、竹丘のお父さんはお寺と神社で信じてる神様は違うけど古い知り合いだって竹兄が言ってたのも思い出した。


「ごゆっくり」って言い置いてお父さんが出て行くと。何故か体からふっと力が抜けた気がして。

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