25
オオゴトになるのを嫌がって、救急搬送されたあいつらと違って、竹兄は近所の外科で受診したけど。
頭から足の先まで全身の打撲と、肋骨の数本にヒビが入ってるって診断だった。
特に肋骨のことは先生から、
「左胸の肋骨は折れて心臓に刺さったら即死するほど危険なんだよ?」
この程度で済んで本当に良かったねぇ、なんてしみじみ言われた竹兄は、
「マジですか(o ロ o )!!いやぁ、日頃の行いがイイからですかねぇ?」
なんて笑いながら受け応えてるけど。
聞いてた俺の方が血の気失せてゾッとした。
『竹兄をこんなキズ物(←)にして…(n>д<)ηアイツ等もっと痛めつけてやるんだったo( >_< )o』
隣でずっと不機嫌な顔してたら。竹兄はちらっと俺のこと見てから、
「で、センセイ。このコルセットどれくらいで外せますか」
「そうだねぇ。入院はしなくていいけど家で2週間は安静にして、骨が完全に癒合するのは2ヶ月くらいかな」
「折角夏休みなのに…」
「滅多にない、思い出に残る夏休みになりそうだね」
「ホントですよ」
最悪だ、って呟いてる竹兄見て。
俺のせいだって解ってるからすごく凹んだ。
『え?もしもし?』
ケータイの向こうで明らかに不審そうに応答されたから。
「建くん。サトリだよ?」
って名乗ったら、
『ああ、サトリ君かぁ!!』
電話くれるの初めてだよね!?びっくりしちゃった!と云われて、確かに道場に遊びにいく時もいつも連絡なんかしないからなぁ、って我ながら苦笑いするしかない。
「今大丈夫?」
夜9時過ぎだから俺は自分の部屋から電話してたけど。
『いいよ?――あ、そうだサトリくん。ここ轟君居るけどいい?』
社家兄弟で一緒に居るみたいだ。
「そうだね、轟君も一緒に聞いてもらった方がいいかも知れない」
じゃあ、って電話の向こうで言った建君のあとで。
『今晩は…で良いのかな?小野君』
建君より少しだけ低い声が聞こえてきた。
「こんばんは。すみません急に加わってもらっちゃって…」
『いいよ、滅多に連絡してこない君が連絡寄越したってことはよっぽどの事だろ?』
『そっか!『便りのないのがいい便り』って言うんだから今回は『バッドニュース』って事なの!?』
社家兄弟の方はスピーカーフォンにしたみたいだから、俺もスピーカーのマークの付いたボタンを押して、ぽい、とベッドの上に置いてから隣に寝転がった。
「そっか…。こういうのも悪い便り…っていうのかな」
二人に知らせてないって竹兄が言ってたから。数日経った日の夜、知らないままって言うのもどうなんだろうって思った俺から連絡して。
廃校した某小学校のグラウンドで起きたあの話を出来るだけ大げさにならないようにかいつまんで話した。
『竹兄肋骨骨折って、大丈夫なの!?』
スピーカーから流れた声がやけに大きく聞こえて、建君は正直だからどんな顔してるのか想像できて面白い。
「うん…。肋骨ってコルセット嵌める以外できることなくて、じっとしてるしかないから、先生が自宅療養でいいって言ってくれたんだ」
『竹丘先輩の怪我の事は解ったけど、小野君は?』
君の方こそ大丈夫だったのか?と、轟君が心配してくれたけど。流石のんびりしてる建君と違って、鋭いところを衝かれたと少し身構えながら、
「ありがとう轟君。俺は何ともないよ?」
『轟君知らなかった?あの場には無傷の『ラストマン・スタンディング』が居たんだよ?――え、待って。もしかして、それ…サトリ君だったの?!』
ホントは竹兄の怪我の事報せるくらいで、俺の事にはできるだけ触れないようにしたかったから。早く話を畳まなきゃって焦ってるのを見られなくて助かった。
「うん…まぁ…。たまたま、運が良かっただけだよ」
適当に言葉を濁して躱してから、
「遅い時間長々とごめんね?」
『あ、良いよ全然。報せてくれてありがとう、サトリ君』
『小野君、竹丘先輩に「お大事に」って伝えておいて』
『そうそう、竹兄も負けてケガするって解ってたら人にケンカ売っちゃダメだよね?』
『何言ってるんだ建。勝てる喧嘩なら猶更自分から売ったら駄目だろ』
兄弟漫才の掛け合いのようにスピーカーから建君と轟君の声が次々と聞こえてから。
『じゃあねサトリ君、また遠慮しないでケータイ掛けてきてよ!』
「有難う、建君。轟君も…」
生まれて初めて自分から掛けた電話は20分くらいで終わった。
期末テストも終わって。来週半ばにはもう夏休みが始まる。
給食もなくて昼過ぎには放課後で、俺は部活動も入ってないから、とにかく早く家に帰れるのがうれしかった。
夏休みが待ち遠しくて、家に早く帰りたいなんて思うのも小学校から9年目にして初めてだ。
家に帰ったらここ数日は、自分の部屋に鞄置くより先に、とにかく竹兄の居場所を探してるのを知ってたお父さんに。
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