23
一人ずつだと俺に速攻でやられるっていうのが漸く解ったのか、今度は3人がかりでとびかかってくるみたいだ。
「ようやく効率が上がる…」
正面から来た奴の突きのラッシュがうっとうしかったから、拳を左手で払って。
体勢崩れて前のめりになってがら空きのコメカミめがけて右足の上段回し蹴りを喰らわせて、脳を揺らされた奴はその場に崩れるように一発ダウン。
「さんにん」
三人目を蹴り上げた勢いのまま右足を素早く地面に戻して、右斜め前の奴にすぐさま左足の親指に力入れて三日月蹴りを繰り出すと。
狙ってた腹の柔らかいところにピンポイントで命中した。
カエルみたいな鳴き声上げて相手は倒れて腹を抱えてゴロゴロ転がり始める。
「よにん」
背後で仕掛けてくる気配も解ってたから、振り返りざま下突きを左肘でガードして、そのまま相手の呼吸に合わせて左の拳で鳩尾にカウンターで下突きをお見舞いしたら、息を強制的に止められて口をパクパクさせながら悶絶して倒れる。
「ごにん」
ひとりずつじゃダメ。3人がかりでもダメと理解して次に彼奴らが考えた手は。
「アイツを連れてこい!」
誰かが声を挙げて。俺を取り囲んでた奴らのうち一瞬視線を逸らした何人かが、そっちに向かって走りだした。
その方向に竹兄が居るのに気付いた俺は、
「――っ!!」
囲みをすり抜けて、駆け出した4人を追いかける。
最初に追いついた2人のシャツの後ろ襟を両手で掴み締めて、右左と膝裏を蹴りつけて膝がガクッと折れたところを引きずり倒す。
「ろく…なな…」
どうにか走って追いついた3人目は、背中の真ん中に思いっきり諸手突きを喰らわせたから、バランス崩してそのままもんどりうってグラウンドに転がった。
「はちにん…」
竹兄のところまであと10メートル切った所ギリギリで追いついた4人目は。
全速力のまま飛びかかって一気に距離を詰めて放った飛び足刀横蹴りが、相手の首筋にクリーンヒットして決まった。
グラウンドに土埃を立てて、竹兄の数メートル先まで転がってから止まる。
「――…はぁ…――きゅうにん…」
走らされたから流石に少し息が切れるけど。あと7人だ。
流石に腹が立って、こっちに止まってたバイクとスクーターもついでに蹴倒して踏みつけてやった。
「成瀬てめぇ…いい加減にしろよ」
「――…」
いい加減にするのはどっちだよ、とツッコミを入れる気も起きない。
息が整う頃、残りの7人が俺を囲んできた。じわじわと近づいてくるけど。誰が仕掛けるか伺ってる。
――ふと、後ろの奴の気配が揺らいだ気がしたから、振り返ると同時に。
「ぉおおぉッ!!」
気合の掛け声諸共、ぶん、って音させて体の左すれすれに通り過ぎた後。
――ガツっ、とグラウンドを叩いてぶつかった音で、俺の事襲ったのは金属製のパイプだって解った。
「危ねぇなぁ…」
手がしびれたのか腰をかがめたまま固まってる目の前の脇腹に、足の裏当てて思い切り横蹴りに蹴り飛ばしたら、またグラウンドの土埃を立てて転がって行った。
「あと…6人」
つぶやいたら、
「ふざけるな!!」「一気にかかれ!」
前後左右いろんなところから手や足が伸びてきた。
一番早かった右の奴の顎めがけて横蹴上げ。そのまま後ろの奴の伸びてきた右腕掴んで背負い投げて、そいつ諸共前のひとりを吹っ飛ばしたら、最後の左は鍵突きを思い切り脇腹に叩きこんでダメージを食らわせてから膝に蹴りを入れて倒して簡単に立てないようにした。
「あと…ふたり」
逃げないで最後まで残った所はエライんじゃないかと思いながら。前後から同時に来た奴を、旋回式のバックハンドブローとローリングソバットで仕留めた。
「――…」
グラウンドを見渡して。全員倒れてるかゴロゴロのた打ち回ってたりして。立ってる奴が居なくなったのを確認した。
「ゼロ…」
――っていうか…竹兄何処だ!?
慌てて制服じゃない奴探して首を巡らせたら。
横向きでうずくまるようにしてこっち見てる竹兄が視界に入った途端。
一気に涙でかすんで見えなくなった。
「たけにー!!!!」
とにかく早く助けないと、って駆け出したのに。
「!?――うわァ!!」
足元見えなくて、グラウンドに転がってた奴の脇腹蹴飛ばすみたいに躓いて。
手を出す間もなくそのまま顔と腹をグラウンドに叩きつけて転んじゃった。
――痛い。
「――…ううっ…」
けどきっと、竹兄の方がずっと痛い思いしてるんだよ。
手でごしごし顔をこすって、竹兄のところに今度はつまづかないようにゆっくり近づいてったら。
「あっはははは!ははは…」
竹兄は急にグラウンドにゴロゴロ転がって仰向けになってから、大声で笑い始めた。
「もー御前」
笑いながら呼びかけてくる。
「完勝の癖に泣いてんじゃないよ!!…って言うか…痛ってぇ…!!」
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