20
「そう、なんか…この辺がもやもやする…って思って」
これまで何回転校しても、さよならを言って別れたり、どうしてるかなあ、なんて思い出すような友達なんかできたことなかったし。って言う俺に。
「俺って別れた友達だったの?」
何だぁ…、サトリ君には俺って過去の人だったのかぁ。なんて建君が苦笑いするから。
「違うって!!だから…そんな風に思える友達ができたのが、初めてだったから。――ごめんね。会いに来る理由がなくて」
「理由が無くても会いに来られるのが『友達』なんだよ?サトリ君。思い出してくれてありがとう。って言うか俺も竹兄みたいに時々中学校の前で放課後張ってればいいのか」
「やめてよ建君恥ずかしい」
「何で竹兄は良くて俺はダメなの?―っていうか、そうだ。竹兄は元気にしてる?」
「うん。大学忙しそうなのに。進路の事色々アドバイスしてくれたりするよ」
「サトリ君はいいなぁ。竹兄がちゃんと相談に乗ってくれるんだもん」
なんて羨ましがられた俺は。
「うん」
嬉しくて思わず大きく頷いたけど。建君は、
「ねーサトリ君。フツー其処は。『そんな事無いよ?』って言うもんだよ?」
「あ…ごめん、建君」
「――おい建!!いい加減戻って稽古手伝え…って。あ。悪い。成瀬君が来てたのか。久しぶり。元気そうだね」
本堂の床板を大きく踏み鳴らして現れたのは、相変わらず年より大人びて落ち着いて見える高校2年生の轟君で。
「ご無沙汰してます」
俺は別に気にしないで挨拶を返したのに。隣の建君の方が過剰に反応した。
「轟君!今はもう『成瀬領』君じゃなくて、『小野サトリ』君だよ?」
指摘された轟君は珍しく『しまった』という表情を見せてから。
何時もニコニコしてる建君とは正反対の真面目な顔で。
「…そうだ。小野君だった…。気を付けるよ」
「気にしないでください轟君。僕も時々『あれ?どの名前今使うんだっけ』って慣れてない時がありますから」
「でもサトリ君。もうこれから先は。ずっと名前は変えないんでしょ?」
「うん。――もう、変えないよ?」
「そろそろ行くぞ建。――小野君。久しぶりに稽古見て行くだろ?」
「はい」
見上げて答えると。隣で立ち上がった建君が。
「ねーサトリ君。そろそろ見てるだけじゃなくて、ウチに入門しようよ…」
「いいよ俺は」
普通じゃないって何となく自分のこと解ってる俺は。いつも通り建君の誘いを断った。
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