11
2月某日。
夕方5時過ぎ。
部活も入ってない俺は、最近は図書館から借りてきた写真集を部屋で眺めるのを楽しみにしてた。
今日も新しく入ってた地中海の海底遺跡の写真集を借りてきて。部屋のベッドで寝っころがりながら青い風景に浮かぶ石像を見ながらいろんな事想像してたら。
部屋の外でばたばたと階段上がってくる竹丘さんの足音がして。隣の部屋に入らずに、俺の部屋のドアがノックされて「入っていいか」って尋ねられた。
「どうぞ」
ってそのまま答えたら、ドアが開いて首だけ入ってきた竹丘さんは。
「おー。成瀬、電話しても出ねぇからさ」
そのまま俺は寝っころがって、続きのページをめくりながら。
「ゴメン…充電してたから気が付かなかった。もう終わってるかな」
「んー?」
部屋に入ってきた竹丘さんが机の上の充電器から俺の携帯取り上げて。
あ!なんて声が上がるから、勝手に携帯を弄ってるのが解った。
「御前何でサイレントモードにしてるんだよ。電源入っててもこれじゃ応答できなくて当然だろ」
「だってかかってくる事殆ど無いし」
なんて、言い訳は何時もしてるから。
「御前が架ける事の方がもっと無いだろ――何だ…折角ケータイ持っても全然友達増えてねーじゃねぇか。友達100人目指せって言ったろ?」
なんて勝手な事ばっかり言うから。
「そんなコトしらな…あ!勝手に見るなよ!!」
見たら勝手に竹丘さんが携帯弄ってたから、慌ててベッドから起き上がって取り返そうとするのに。俺より身長が20センチも高い竹丘さんが腕を上げたら、俺がジャンプしたくらいじゃ全然届かないって事が解った。
「返せよ!!」
「オマエも中二男子なら見られて困る連絡先のひとつくらいつくれよ…ガッカリさせんな」
「何だよそれ意味解んねぇよ!」
両手を上げて必死に竹丘さんの手を引っ掻いてたら。仰々しく溜息ついてあーあー。なんて言った竹丘さんは。
「折角俺が、『本命合格したぞ』って、親父殿や母ちゃん差し置いて御前に真っ先に現場から連絡入れたってのに。携帯持ってる癖に無視されたら、俺だって拗ねるぞ」
って明かされて。
「あ…ホントに?」
「まぁこの俺が不合格な訳ないんだからほぼ出来レースみたいなもんだけどな」
腕に取りついたまま見上げてたら、顔が凄く近かった事に気づいて。急に恥ずかしくなって慌てて。
「おめでとう…ございます」
手を放して。改めて見上げながらお祝いを言ったら。ドヤ顔が返ってきた。
「ああ。有難う」
いよいよ、あと2か月か…って少しさみしくなってきたら。
俺の変化に気づいた竹丘さんが。
「どうした」
って聞いてくれるから。
「だって。大学行っちゃったら。もう竹丘さんに迎えに来て貰えないんだよね…」
あれから時々、放課後竹丘さんは気が向くと自転車に乗って学校の前に居てくれて。駅前の喫茶店に連れてってくれるようになったのに。
「御前…何の為に携帯があるんだよ」
呆れたように、掴んでた俺の携帯をほら、と返してくれた。
「?」
どうしてそんな事言うのか解らなくて首をかしげて見上げたら。
頭に手が乗っかってきて。優しく撫でてくれる。
「携帯がすげー便利だけど最悪なトコロは、何時でも何処でも連絡着くようになったってコトだろ?俺も講義とデート以外の時間は大体出てやるから、何時でも架けて来い」
「解った」
多分俺はうれしくてニコニコしながら頷いてたけど。
「――あれ?」
少し不安な事も聞こえた気がした。
「竹丘さんて彼女居るの?」
デートってそういうことだよね?って思って尋ねたら。
「――言っとくけど俺はモテるぞ」
ふふん、ってドヤ顔が返ってくる。
「背が高いしカッコイイし頭がいいから?」
「御前良く解ってるじゃねえか」
「前竹丘さんが自分で言ってたから。でも俺もそれはホントだと思うよ」
さみしいけど。俺が知らない竹丘さんも多分沢山居るんだよね。と自分に言い聞かせるしかない。
「まぁただ…モテるけど彼女は居ねぇから。心配しないで連絡しろ」
「うん、それもそうだと思ったよ?」
良かった。って安心してまた頷いたら。俺の頭に乗ってた手が今度は乱暴に俺の頭を掴んでぐりぐりと揺らされた。
「俺は彼女居ねえんじゃ無くて、モテすぎてひとりに選べねえだけだッ!!」
「解りましたごめんなさい!」
必死に許しを求めたらようやく手が離れていった。
「まぁ…――4月からは、今度は御前が受験生だろ」
とりあえず。当面の目標だけは俺も出来ていた。
「うん。竹丘さんの言うとおり…。高校には行こうかなって思うよ。ただ、将来何したいかはまだ解らないけど」
て答えたら。竹丘さんはよしよし、なんて言いながら腕組んでる。
「じゃあ俺が受験勉強見てやるから、希望してるトコに行けるように頑張れ」
「ええ!?…イイよそれは…」
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