第48話 招かれざる来訪者12
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「鳴、終わったよ」
僕は振り返って鳴の方へゆっくりと歩み寄る。
「匠さん、その……ありがとうございます」
鳴はどこか弱々しく僕にそんな言葉をかける。
「なに、大したことじゃないさ。それより、早く帰ろうよ」
僕が鳴に向かって手を差し出す。
「匠さん、本当に……いいんですか?」
鳴は遠慮がちに問いかける。
「鳴、僕たちは残念ながらきっと幸せにはなれない」
「……ええ、覚悟してます」
「でもさ、僕は不幸でもいいんだ。幸せになんて、ならなくてもいいんだ」
「――?」
「僕は、不幸でもいい。それでも、僕は君と――鳴と一緒にいたい」
「匠さん」
僕は驚いた様子の鳴の前に膝をつく。
「橘鳴さん、僕はひょっとしたら、いやおそらく結構な高確率で不幸になるしかないのだけれど、それでも――僕と一緒にいてくれますか?」
そう言って僕は鳴に向かって手を差し出す。
「橘鳴さん、僕と一緒に不幸になってください」
そう言って一世一代の告白をした僕に対して、
「喜んで!」
と、鳴は即答して、僕の手を優しくとる。
「ありがとう、鳴」
僕は消えゆく景色の中、最愛の人に感謝の言葉を送った。
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