第38話 招かれざる来訪者2

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 『夏』『海』『ライトノベル』、この三つが揃ったとき、導き出される答えは一つしかない。――そう、水着回だ!


「やれやれ、ようやくラノベ主人公らしい展開になってきたもんだ」


「はははは、匠さんってば面白いんですから」


「鳴……目が笑ってないぞ?」


 僕と橘は地元にある海水浴場に来ていた。ちょうど夏真っ盛りの海水浴場は今が書き入れ時と言わんばかりに人でごった返していた。


 浜辺には出店が所狭しと並んでいて、僕の嫌いなパリピたちが我が物顔で謳歌していたけれど、そんなものは全く気にならない。なぜなら、


「ね、ねぇ匠さん? それはそうとして、その……似合ってますか?」


 少し恥ずかしそうに鳴は僕に水着の感想を尋ねてくる。


 今日の鳴は紫を基調とした少し大人っぽさの垣間見える水着を着用しており、それが鳴のスタイルの良さをより引き立てていて、その魅力に僕は少しばかり目のやり場に困っていた。


「うん、すごく綺麗だよ」


「ふふ、ありがとうございます。匠さんもよく似合ってますよ」


 そう言って笑う鳴は先ほどとは打って変わってとても嬉しそうな表情をしていた。


「ほら匠さん、せっかく海に来たんですから目一杯遊びましょうよ」


 言うが早いか鳴は僕の手を引いて海に向かって走り出した。


「お、おい鳴、そんなに慌てなくても大丈夫だよ」


 そんな鳴に手を引かれて僕も海へと突入した。


『バシャーン!』と小さな波音を立てながら僕たちは浜辺でじゃれ合う。


「えい、えい!」


「お、やったな鳴!」


 そうやって夢中でじゃれ合う僕たちはまるで普通の恋人同士みたいで、なんだかとても心が温かくなった。夏日がギラギラと降り注ぐとても熱いさなかではあったけれど、なぜだかその温かさはとても心地よかった。


 それからもしばらくの間、僕たちには分不相応なくらい甘い時間が流れていった。とても幸せな時間だった。

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