第11話 メデューサの恋2

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 開口一番、このような場面から始まってしまい、誠に申し訳ない限りなのだけれど、どうやら、石にされてしまったようである。


『石にされてしまった』というか、おそらく一般的に想像されるような体が石になった状態――ようするに石像にされてしまったようだ。


 本来、こんな状態でも命があって、こうやってどうでもいいことをあれこれ考えていられる状態が果たして普通なのか、それとも僕が吸血鬼であることの恩恵なのかは定かではないけれど、もし仮に前者であるならば、なるほどこれからは石像や銅像の前を通るときには注意しなければいけない。


 誰もいないからと油断して独り言をつぶやいたり、あるいは流行りの曲を熱唱しているところを石像さんたちに見られでもしたら恥ずかしくてそれこそ人様に顔見せできない。

なるほど、これからは気を付けなければいけないな。


「いやいや吸血鬼さん、呑気に自分の世界に浸っている場合じゃないでしょ」


 ふと動かない首で声のする方へ眼だけ向けると、橘が呆れたような顔でため息を吐いていた。


 ……反論したいのはやまやまなのだけれど、リアクションをとるどころかもうすでに声を出すことすらできない。


「それで? あなたはどうする気なんですか?」


 橘が向かいに立っている相手を睨みつける。が、その視線は相手の足元に向けられており、なんだか威厳に欠ける。


 橘が睨んだ先には一人の女性が立っていた。しかし、その女性は見るからに普通の人間ではなく、体からは禍々しいほどの強いオーラが溢れ出ていて、何より特徴的なのが、彼女の髪の一本一本が蛇のそれであることだ。


 ――彼女はいわゆるメデューサと言われる存在だった。


 メデューサは禍々しいほどのオーラを放ちながら、僕たちの方へ近寄り、そして――


「すいません! 本当にすいません!」


 と、ひたすら謝罪の言葉を口にしながら頭を下げていた。


「…………」


 ……何だか腰が低い。そして、ぶっちゃけ思っていたのとなんか違う。


「すいませんでした! すいませんでした!」


 その後もメデューサは僕たちに対して頭を下げ続け、そんな低姿勢なメデューサを前に僕たちが放心状態から立ち直ったのはしばらく経った後だった。

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