第166話乙女ゲーのヒロインは、ギャルゲの主人公に勝ちたいのです。その11

 ゆるふわ宏美のお陰で、何とか政宗とは険悪な関係にはならずに済んだものの、未だに何一つ問題は解決されておらず、放課後、上機嫌な政宗に連れられ、不機嫌に生徒会室に向かう美月を見て、浩二は、あるところに向かう決意をするのである。


(い、いや……さすがに、異様なオーラを感じるぜ!!)


 そう、浩二は、放課後すぐに、郁人様ファンクラブの部室の前に来て、現在、扉の前で異様なオーラを感じ取り、中々、ノックすることができない浩二なのである。


「すみませんが、どいていただけませんかね?」

「オワッ!! す、すまねーぜ」

「……あら、この人……どこかで見た気がしますわね」

「そう? 私知らな~い」


 郁人様ファンクラブ部室の前に突っ立ていると、美少女三人組にそう言われる浩二は、滅茶苦茶焦りだすのである。


(あ、朝宮の親衛隊じゃねーか……ヤベー奴らに会っちまったぜ)


 疑問顔を浮かべている郁人様親衛隊三人娘に、冷や汗ダラダラな浩二なのである。


「私も見たことある気がする……どこでだっけ……」

「……ああああ!! 思い出しましたわ!! コイツ!! あの夜桜美月のファンクラブの会長ですわ!!」

「あ……そっかぁ……じゃあ、敵だね」


 そう言われて、焦りだす浩二は、完全に郁人様親衛隊の三人娘に睨まれて、包囲されるのである。


「ま、待ってくれ……て、敵じゃねーぜ!! よ、用事があってきたんだぜ……そ、その、細田に用事があってよ」

「……会長に?」

「夜桜美月のファンクラブの会長が、神聖で尊い郁人様ファンクラブの会長になんの用事ですの?」

「騙されてはダメだよ!! 一生郁人様推しの邪魔する気だよ!! とりあえず、やっちゃおうよ!!」


 浩二は、一人超好戦的な子に恐怖するのである。完全に蛇に睨まれたカエル状態の浩二は、郁人様親衛隊の噂話を思い出すのである。


(こ、こいつら、マジでヤベー噂しか聞かねーから……マジで、ヤベーぜ…朝宮の悪口言ってる奴らを、粛清してるとか、朝宮のヤツの良さを、永遠と話し続けて、洗脳して、女子生徒を無理やり、ファンクラブに勧誘するとか、マジでヤベー噂しか聞かねーぜ)


 郁人様親衛隊の三人娘に睨まれる(一人は人が殺せる視線で)浩二は、何とか、生きてここから、逃げ出すことを考え始めるのである。


「思い出したけど……この人、郁人様の悪口言ってた気がする…いや、言ってました!! 言ってましたよ!!」

「尊い郁人様の悪口を……そう言えば、言ってましたわね……許せませんわ」

「郁人様一生推しの私に、郁人様の悪口を言える勇気……フフフ、そんなに、三途の川が渡りたいのなら、渡らせてあげる……フフフフ、大丈夫、料金は片道命一つで大丈夫だから、帰りも命があれば、帰ってこれるよ」


 郁人様親衛隊三人娘の瞳からハイライトが消えるのである。しかも、一人物凄い物騒なことを言っている子がいて、心の中で、命は一つしかねーぜ!! とツッコミながら、恐怖で後ずさりする浩二だが、背中には、郁人様ファンクラブ部室の扉なのである。もはや、絶体絶命の浩二なのである。


「部室の前で何やってるんですか~……わぁ!! な、なんですか~!? な、永田さんじゃないですか~? どうしたんですか~?」


 ゆるふわ宏美は、部室の前が騒がしいので、扉を開けて外を確認しようと扉を開いたことで、背中から、転んで部室に突入してくる浩二に、ビックリするゆるふあ宏美なのである。


「い、いって~……ほ、細田……でも、助かったぜ……いや、助かってねー!! 助けてくれ、細田!!」

「な、何事ですか~、って言うか、どういう状況ですか~!?」


 尻もちをついて、痛がりながら、ゆるふわ宏美を見て、一安心する浩二だったが、部室の扉を締められて、ハイライトオフの瞳で郁人様親衛隊の三人娘に睨まれていることに気がついて、ゆるふわ宏美に駆け寄り助けを求める浩二なのである。


 さすがのゆるふわ宏美も、驚きの表情で、何が起こっているのか、わからずに混乱するのであった。


「そ、そうですか~……小鳥遊さん、ここはわたしぃに任せてもらってもいいですか~」


 ゆるふわ宏美は、郁人様親衛隊から事情を聴いて、呆れながらも、そう言うのである。


「会長がそう言うなら、会長にお任せしますね」

「仕方ありませんわね……尊い郁人様のファンクラブの会長にお任せしますわ」

「一生郁人様の推しの私としては、自らの手で罪を悔い改めさせたいけど、仕方ないから……会長、きちんと処理しておいてください」


 なぜか、床に正座させられている浩二は、郁人様親衛隊の三人娘の一人の発言が物騒すぎるだろっと心の中でツッコムのである。


「では~、わたしぃは永田さんに話を聞きますので~、少し席を外してもらってもいいですか~?」


 ゆるふわ宏美が、郁人様親衛隊の三人娘にそうお願いすると、は~いと素直に部室から出てくことに、驚く浩二なのである。


「ほ、細田……お前、よくあんな物騒な奴ら従えてられるな……すげーぜ」

「はぁ~? 物騒ですか~? 普通にいい子達ですよ~」


 満面なゆるふわ笑みでそう言い放つ、ゆるふわ宏美を見て、浩二はこう思うのである。


「いや、細田……それは絶対にねーぜ……ていうか、あの三人物騒な噂しか聞かねーぞ」

「……永田さん、噂は所詮、噂ですよ~……決して事実ではないんですよ~」

「そ、それはそうかもだけどよ……あの、おかっぱの子なんか……あれ、絶対に何人かやってるだろ……目つきがカタギの奴の目じゃねーぜ」

「そうですか~……わたしぃはよくわかりませんが~……そんな事より、なんの用事できたんですか~?」


 三人娘(特におかっぱ)に恐怖する浩二に、呆れるゆるふわ宏美は、浩二になぜここに来たのかを尋ねるのである。


「あ……そうだったぜ……昼休みは、ありがとな……マジで助かったぜ」

「いえいえ~、わざわざ、お礼を言いに来たんですか~?」

「いや……実はお願いがあってよ……美月ちゃんの事で、頼みがある……細田が言った通り、今の状況は僕もまずいと思った……だから、美月ちゃんとの関係を改善するためにも、まずは、細田が言った通り、美月ちゃんに謝りてーんだけど……どうしても、二人きりになる機会がなくて……頼む、力を貸してくれねーか?」


 浩二は、そう言って、ゆるふわ宏美に土下座するのである。さすがの、ゆるふわ宏美も、突然土下座されて、呆気にとられ、困惑するのである。


「ちょ、やめてくださいよ~!! 頭をあげてください~……話はわかりましたけど~、それは、ちょっと~……美月さんの永田さん嫌いは正直、物凄いですよ~……わたしぃがどれだけ、クラスでの愚痴を美月さんから聞いてると思いますか~? それは、もう毎日ですよ~…そんな、永田さんに表立って協力すると~、わたしぃも美月さんに嫌われかねないですし~、後……郁人様にバレた時が怖いですよ~」


 土下座したままの浩二にそう言うゆるふわ宏美は、郁人のアイアンクローを思い出して、恐怖で小さな身体が震えるのである。


「そ、そこを何とか、お願いできねーか!! 頼む、この通りだぜ!!」

「そ、そうは言ってもですね~……そうですね~……では~、わたしぃに一つ考えがありますけど~……いいですか~、絶対にわたしぃが、永田さんに協力してるって~、バレないでくださいよ~!! み、美月さんの口から、郁人様の耳に入ったら~……わ、わたしぃ死んじゃいますからね~!!」

「あ……朝宮のヤツ……そんなに恐ろしい奴なのかよ……やっぱり、ヤベー奴じゃねーか」


 あのゆるふわ宏美が、ここまで恐怖するなんて、やっぱり、朝宮郁人はやばい奴だと認識する浩二なのであった。

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