第138話ギャルゲの主人公と乙女ゲーのヒロインは、幼馴染で恋人なので、ずっと一緒に居たいのです。その10

 その頃、美月もまた、生徒会室で生徒会長と向き合っているのである。もちろん、浩二も美月についてきているのであった。


「夜桜美月さん…忙しい中、よく来てくれましたね。歓迎しますよ」


 生徒会長は、椅子から立ち上がり、歓迎のポーズと両手を広げて、美月にそう言うのである。


「あ…えっと…わ、私は何で生徒会室に呼び出されたんですか?」


 嬉しそうな生徒会長とは対照的に、美月は不安そうな表情なのである。浩二は、そんな美月を見て、生徒会長を睨んで威嚇するのである。


「あ…ああ、そうですね……本日、来てもらったのは、これを見てもらおうと思ってですね」


 生徒会長は、警戒する美月にそう言うと、長髪イケメンに何かを指示し、長髪イケメンは、机の上に写真を数枚バラまくのである。


「これは……い、郁人の写真!?」

「そうです……これは、我々が何とか入手した朝宮郁人と細田宏美の悪事の証拠なのですよ」

「え!? 郁人とひろみんの悪事!?」

「ああ…なるほどだぜ……それが、例の裏で女子生徒達の間で取引されてるっていう朝宮の写真か」


 そう言われて、美月は郁人の写真を見ると、どれも、カメラに気がついてない様子で、どう考えても盗撮写真なのである。


「でも、これ……郁人カメラに気がついてない気がするんだけど……」


 そもそも、郁人は写真を撮られるのがあまり好きではない事を美月は知っているのである。美月でも、必死にお願いしてやっと、郁人の写真を撮ることができるので、郁人が他人に写真を撮らせるとは思えないのである。


「それはですね……彼等の巧妙な策なのですよ…あからさまに盗撮された写真をバラまくことで、容疑者から逃れられるという姑息な作戦なのですよ」

「……朝宮のヤツがやりそうなことだぜ」

「……」


 美月は、また、郁人の事をよくも知りもしないのに、悪口を言う浩二を睨みつけるのである。


「……それは考えすぎじゃないですか?」

「そうですね……お優しい、美月さんならそう思うかもしれませんが……しかし、我々は決定的な証拠を入手することに成功したのですよ……副会長例のモノを……」


 そう生徒会長は、ご自慢の眼鏡を、クイっとして、長髪イケメンにそう言って指示すると、この人、副会長だったのかと驚きの表情を浮かべ、見つめてくる美月と浩二に疑問顔を浮かべながら、長髪イケメンは一枚の写真を机の上に置くのである。


「こ、これは…な、なんですか!?」

「流石の美月さんでも、驚きますか? これこそ、朝宮郁人が女子生徒をたぶらかしている証拠写真です」


 驚きの表情を浮かべて、ジッと写真を見つめる美月に、ドヤ顔で、眼鏡をクイっとしてそう言い放つ生徒会長なのであるが、そんなことを美月は聞いているのではなかった。


「ああ…これは、あれだぜ……細田が朝宮のファンクラブ入会特典で配ってる写真だろ…噂では聞いた事があるが…これが、その写真なのかよ」

「……ふぁ、ファンクラブの特典なの!?」

「え!? あ…ああ…そうだぜ……美月ちゃん……しかし、朝宮の野郎偉そうな態度だぜ」


 美月にそう言われて、驚きの表情を浮かべながら、返事を返す浩二なのである。今まで無視していたことなど忘れて、美月は、浩二に目を見開いてそう聞いて、ジッと写真を凝視するのである。


「こ……これ…ひ、ひろみん……どうやって撮ったのかな?」

「い、いや……そこまでは、僕にもわからないぜ」

「生徒会長はわかりますか?」

「い、いえ……わかりませんね…ふ、普通に撮影したんのではないですかね?」

「それは絶対にないよ!! こ、こんな写真……」

「み…美月ちゃん…朝宮の野郎……美月ちゃんにこんな悲しい想いをさせて…許せねーぜ!!」


 驚きながらそう言う美月に、同情して、怒りを示す浩二なのだが、美月は全く別の事を考えているのである。ジッと写真を見つめる美月に、生徒会長はこう言うのである。


「この写真はあからさまに、カメラ目線で映り、ポーズすら取っていますよ……つまり、これ以外の写真も朝宮郁人君と、細田宏美さんが配っているという事なのですよ」

「……そうなんですね」

「ええ…そして、この写真には実は風紀委員も関わっているという噂があるのですよ」

「ま、マジかよ!? それが本当なら大変なことだぜ…風紀を守る風紀委員が、自ら風紀を乱してるってことになるじゃねーか!?」


 真剣な表情で、とんでもないことを言い放つ生徒会長に驚きの声をあげる浩二なのでる。そんな中、美月だけが、ジッと郁人の写真を見つめているのである。


「で……生徒会長…僕達を呼んだ理由はなんだ? はっきり、言ってくれねーか?」

「今、美月さんのファンクラブは風紀委員に目をつけられていると聞きました……我々は、美月さんの素晴らしい活躍を応援し、支援するべくお呼びしたのです」

「そう言う事かよ……で、具体的に生徒会は何をしてくれるんだ?」

「まず、夜桜美月さんと永田浩二君……君たちを生徒会に迎い入れたいと思っているのですよ」


 ジッと写真を見つめ続ける美月を置いてきぼりに、生徒会長と浩二で話が進み、生徒会長が笑顔で美月と浩二にそう言い放つのである。


「……いや…意味わかんねーぜ……なんで僕達が生徒会に入らないといけねーんだよ」

「きちんと理由がありますが、まず、夜桜美月さんは元から、生徒会に勧誘するつもりでした。なぜなら、彼女は品行方正で、成績優秀なので、ぜひ、生徒会にとは思っていました」


 まだ、写真を凝視し続ける美月を見つめながらそう言う生徒会長を、浩二は睨むのである。


「そして、生徒会に入ることにより、夜桜さんの安全も確保できますよ…朝宮君から、夜桜さんを守ることも可能です…そして、彼らの悪事を調べ、白日の下にさらすことも可能です」

「……でも、生徒会が美月ちゃんに危害を加えないとはいえねーだろ?」

「それは、永田君や覇道君も同じことなのではないですかね? それに、我々は、生徒達や教師たちからの信頼の元、生徒会を運営しているという実績があります…どうですかね?」

「……なるほど…確かに…悪くねー話だぜ」


 美月が、郁人の写真をジッと見ている間にどんどん会話は進んでいくのである。そんな中、ついに、美月が動くのである。


「……ん? 夜桜さん……その写真は、重要な証拠写真なのですが…」

「はい!! なので、私が管理して保管しておきます!! 任せてください!!」

「い、いえ…そう言う事ではなくてですね……いちよ、生徒会室から持ち出し禁止なのですよ」

「……大丈夫です!! 私に任せてください!!」

「美月ちゃん…とりあえず、写真は机の上に置こうぜ」

「……」


 美月は大切そうに両手で写真を抱えて、絶対に渡さないという姿勢を見せるのである。


「よ、夜桜さん……その、す、すみませんが…その写真は置いてもらってもいいですかね? 本当に貴重なものなので…その、あなたが、その写真を使って真実を突き止めたいのはわかりますが、それは、あまりにも危険です…私達、みんなで協力して、調査していきましょう」


 全く的外れの事を、ドヤ顔で言いながら、美月を説得する生徒会長なのだが、美月は、単純に、豪華な椅子に座り、ドヤ顔でカメラ目線で、王のポーズで映る郁人の写真が欲しいだけなのである。


「……うう~…わかりました」


 美月は、周りから説得されて、悲しみの表情を浮かべて、写真を机の上に戻すのである。そして、仕方ないと、他の写真を手にする美月に、またもや、生徒会長と浩二が突っ込むのである。


「夜桜さん……そのですね…他の写真も持ち出し禁止なのです…す、すみませんが…」

「美月ちゃん…写真は机の上に置いとこうぜ」

「……わ、わかりました」


 ならばと、他の写真を持って帰ろうとする美月は、二人にそう言われて、悲しみの表情を浮かべながら諦めるのである。ジッと、名残惜しそうに郁人の写真を眺める美月なのである。


「コホン……では、お二人は、今日から生徒会に入っていただきたいのですが? よろしいですかね?」

「え? わ、私が生徒会にですか!?」


 全く話を聞いてなかった美月は、生徒会長にそう言われて、驚きの声をあげるのである。そんな、美月に、笑顔で両手を広げて歓迎のポーズをする生徒会長なのであった。

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