第137話ギャルゲの主人公と乙女ゲーのヒロインは、幼馴染で恋人なので、ずっと一緒に居たいのです。その9
そして、昼休みになり、郁人は嫌がるゆるふわ宏美を無理やり引きずって、風紀委員会室に向かうのである。
「り、梨緒さん~!! た、助けてくださいよ~!!」
「宏美ちゃん……頑張ってお勤め果たしてきてねぇ…私達は屋上で待っているからねぇ」
「じゃあ、すまないが行ってくるな」
「うん、郁人君、また後でぇ」
そう、ゆるふわ宏美は梨緒に助けを求めたのだが、清楚笑みを浮かべて、控えめに片手を振って、郁人とゆるふわ宏美を送り出す梨緒なのであった。今度は、ゆるふわ宏美は、郁人様ファンクラブ幹部メンバーを涙目で見ながら、助けを求めるが、サッと視線を逸らされるのであった。
「いやです~!! ふ、風紀委員何て、わたしぃ達の天敵じゃないですか~!? 行きたくないですよ~!!」
「諦めろ、ゆるふわ……呼び出されたなら、行くしかないだろ」
引きずられるゆるふわ宏美は、必死の抵抗を試みるが、郁人は、そんな、ゆるふわ宏美を小脇に抱えて、連行するのである。
「い、郁人様!! わたしぃの扱い雑ですよ~!! もっと、わたしぃを大切に扱ってくださいよ~!! わたしぃはモノじゃないんですから~!!」
「うるさい…面倒だから、もう、このまま連れてくからな」
両手と両端をバタバタしながら、なおも抵抗を続けるゆるふわ宏美を、完全に無視して、そのまま、小脇に抱えて連行するのである。その姿は、物凄く目立っているのであった。
「ほら、風紀委員長が待ってるから、早く風紀委員会室に行かないとだろ……暴れるな」
「いやです~!! 誰か助けてくださいよ~!!」
しかし、ゆるふわ宏美の助けを求める声に答える正義のヒーローはいないのである。みんな、郁人とゆるふわ宏美から視線を逸らして、出来る限り関わらないようにしているのであった。
「い、郁人様に抱えられて、うらやま……いや!! な、何をしているのだ!? 朝宮に細田!?」
風紀委員長は、郁人が風紀委員会室の扉を開いて入室した姿を見て、動揺しながら、そう言うのである。
「あ……すみません…ゆるふわの抵抗があったので、無理やり連れてきました」
「……郁人様…絶対に許しませんからね~、絶対に許しませんからね~、絶対に復讐してあげますからね~」
小脇に抱えていたゆるふわ宏美を、解放し頭を掻きながら、風紀委員長にそう言う郁人を、ジト目で恨めしく睨みながら、恨み辛みをボソボソ嘆くゆるふわ宏美なのである。
「そ、そうか……いや、急に呼び出してすまない……いきなりで悪いんだが、これを見てくれないか」
「あ…はい」
唐突にそう言われて、戸惑う郁人と、居心地が悪そうに、ゆるふわ笑みを浮かべている宏美に、風紀委員長は、風紀委員の女子生徒に、何か指示すると、目の前のテーブルに複数枚の写真を並べて見せてくるのである。
「えっと……これは?」
「今、風紀委員で問題になっている写真だ」
よく見ると、どれも美月が写った写真であり、構図から、あからさまに盗撮された写真なのである。
「美月さんの写真ですか~? 確かに、男子生徒達の間で売買されてるらしいですね~」
郁人は険しい表情を浮かべながら写真を見ていると、ゆるふわ宏美はそう言うのである。そして、また数枚の写真が机の上に置かれ、今度は、ゆるふわ宏美や梨緒の写真なのである。
「こ、これは~!? な、なんですか~!?」
先ほどまでは、余裕のゆるふわ笑みを浮かべていたゆるふわ宏美は、あからさまに動揺して、自分の写真を手に取るのである。
「これも、男子生徒達から押収したモノだ」
風紀委員長が呆れながらそう言うと、わなわなと震えるゆるふわ宏美なのである。郁人は横から、チラリとゆるふわ宏美が手に持っている写真を覗き込むと、涙目のゆるふわ宏美が映っているのである。
ちなみに、梨緒の写真は、あからさまにカメラ目線で清楚笑みを浮かべており、すべての写真がカメラ目線なのであった。
「誰ですか~!? こんな写真を撮ったのは~!! 盗撮は犯罪ですよ~!! 許しませんからね~!!」
怒りの声をあげるゆるふわ宏美を、郁人はジト目でジッと見つめるのである。そんな、郁人に気がつき、疑問顔のゆるふわ宏美なのである。
「なんですか~? 郁人様…その目は~?」
「いや…盗撮は犯罪だよな?」
「そうですよ~!! 許せませんよ~!!」
「そうか……ゆるふわ……そう言えば、前に俺の写真を持っていたよな?」
「……………な、なんのことですかね~?」
ゆるふわ宏美は、冷や汗ダラダラで郁人から視線を逸らすのである。そんな、ゆるふわ宏美をジッと見つめる郁人なのである。
「ゆるふわ……盗撮は犯罪だよな?」
「……と、時と場合によるかもしれませんね~」
「……ゆるふわ」
「ひぃ~!! わ、わたしぃは悪くないんです~!! そもそも、あれは、わたしぃじゃなくてですね~……あ!! い、今のは聞かなかったことにしてください~!!」
「ゆ、る、ふ、わ」
「いやです~!! やめてください~!! 頭が割れますよ~!! 許してください~、いくとさまぁ~!!」
郁人は、冷や汗ダラダラのゆるふわ宏美にアイアンクローをかますと、涙目で痛がりながら、必死に許しを乞うゆるふわ宏美なのであった。
「たく……ゆるふわ……お前という奴は……」
「ううう~、酷いですよ~……頭がジンジンしますよ~……女の子にすることじゃないですよ~」
「お前が悪いんだろ? たく、後で詳しく聞かせてもらうからな」
「ひぃ~!! それだけは許してください~!!」
ゆるふわ宏美を解放して、呆れる郁人に、ドン引きしている風紀委員長と風紀委員の女子生徒達なのである。
「……い、郁人様……そ、その…あ…いや…朝宮…すまないが話を進めてもいいだろうか?」
「そ、そうですね…風紀委員長!!」
あからさまに何故か動揺している風紀委員長と風紀委員会の女子生徒達は、新しい写真を1枚取り出し、机の上に置くのである。その写真は、美月が映っているのだが、制服姿で、なぜか猫耳をつけた美月が、にゃんにゃんポーズでカメラ目線で映っている写真なのである。
「こ…これは!?」
その写真を凝視する郁人は、声を震わせながら風紀委員長に訊ねるのである。
「これは、夜桜美月のファンクラブ入会特典のブロマイドらしい…どうにかして、入手した貴重な証拠写真だ」
恥ずかしさと、不機嫌さで顔を赤らめて、にゃんにゃんポーズをしている美月の写真をジッと見つめる郁人なのである。
「あ~、これが噂の美月さんが、無理やり撮影させられた写真なんですね~、美月さんに聞いた事がありますよ~」
「……ゆるふわ……詳しく」
「え!? み、美月さんに聞いてないんですか~?」
「……いいから、詳しく」
「……えっと~、確かですけど~、入学してすぐの頃に、何かをお願いした代わりに~、写真を撮られたとかって~言ってましたかね~」
「……なるほど」
郁人はジッと、写真を見ながら、さすがは学園のアイドル…可愛すぎると、美月に対して感心するのである。
「この写真から、盗撮写真も実は、夜桜美月によるアイドル活動の一環ではないかと言う噂なのだ」
「あ…確かにその噂は聞いた事ありますね~」
郁人は、ジッと写真を見ながら、風紀委員長とゆるふわ宏美の話を聞き流すのである。
「なるほど……わかりました…この件は、俺が責任をもって、調査します」
そう言って、郁人は美月の写真を懐に仕舞いながら、ドヤ顔で風紀委員長にそう言うのだが、風紀委員長があからさまに動揺しながら、郁人に突っ込むのである。
「い、郁人様…あ…コホン……朝宮…その写真は貴重な証拠写真なんだが……」
「ええ…わかってます…なので、俺が、きちんと管理して、調査します…風紀委員長はそのために俺を呼んだのでしょう?」
「あ…いや…そのだな……確かに、その件は調査しないといけないが……朝宮を呼んだ理由は他にあってだな……と、とりあえず、その写真は返してくれ」
「……」
困っている風紀委員長を見て、渋々、にゃんにゃん美月の写真を机に名残惜しそうに置く郁人を、ジト目で見つめるゆるふわ宏美なのである。
「……コホン、この写真なんだがな……実は、生徒会も関与しているという噂が出ているんだ」
「え!? そ、それは本当ですか~!?」
「ああ、この件を伝えたくて、細田にも来てもらったんだ」
「なるほどですね~」
仕切り直して、風紀委員長は衝撃的なことを口にして、ゆるふわ宏美は、真剣な表情で考え込む中、郁人は、にゃんにゃん美月の写真をもう一度ポケットに仕舞うのである。
「……郁人様……風紀委員会の方たちにバレる前に~、それは、戻してくださいね~」
ゆるふわ宏美に窃盗の瞬間を目撃されて、仕方なく再度、机に写真を戻す郁人は、悔しさで顔を歪ますのである。
「そ、そんなにその写真が欲しいんですか~……では、郁人様…先ほどの件を不問にしていただく代わりに、わたしぃが何とか手に入れてあげますよ~? それで、どうですか~?」
「よし、先ほどの件は忘れた…ゆるふわ…頼んだぞ」
どしても、この写真が欲しい郁人は、そうゆるふわ宏美の提案を秒で受け入れるのであった。
「……つまり、二人には風紀委員会に入って欲しいのだ」
「え!?」
「は、はい~!?」
ドヤ顔でそう言う風紀委員長に、くだらないやり取りで、全く話を聞いていなかった郁人とゆるふわ宏美は、驚きの声をあげるのであった。
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