第131話ギャルゲの主人公と乙女ゲーのヒロインは、幼馴染で恋人なので、ずっと一緒に居たいのです。その3

「わかった…その勝負受けて立つ」

「今度は絶対私が勝つんだからね」


 そう言いながら、美月は郁人をジーっと見ていると、口元が緩んでにやけそうになるのを必死に堪えるのである。


(郁人カッコいいよ)


 郁人の姿を見て、美月は心の中でデレデレなのであるが、にやけそうな表情を必死に隠して不機嫌そうに郁人を睨む美月なのである。


「美月……その対決と言うのは……どういう事なんだい?」

「……そのままの意味だよ……今度は体育祭で勝負するんだよ」


 政宗がそう聞くと、美月は適当に答えて、郁人をジッと見つめ続けるのである。学校でこうやって、郁人を見れる機会は少ないため、必死に郁人を見る美月なのである。


「まぁ、また俺が勝つがな……体育祭で勝負となると……そうだな……じゃあ、100m走での順位で勝負しようか……お互い100m走に立候補して、そこでの順位で勝負する…それでどうだ?」

「……わかったよ……それでいいよ」


 郁人はあらかじめ決めていた勝負の内容を美月に話すと、美月も始めから聞いていた為、首を縦に振って同意するのである。


「……で、では~…勝負の内容も決まりましたし~…解散しましょうか~」


 ゆるふわ宏美は、郁人と美月がそう勝負内容を決めると、郁人様ファンクラブメンバーの女子生徒達と、美月ファンクラブメンバーの男子生徒達が睨み合うのを見て、冷や汗ダラダラでそう提案するのである。


「……ひろみん…それは、まだできないよ」

「そうだな……それは無理だ」

「どうしてですか~!! また怒られますよ~!! ていうか、絶対怒られますって~!!」


 睨み合う郁人と美月は、ゆるふわ宏美の提案を却下するのである。それも、そのはず、そもそも、この体育祭で勝負など、本当は郁人と美月もどうでもよくて、学校で会うための口実でしかないのである。


(フフフフフ、郁人…完璧な作戦だよ…これなら、自然に郁人に会いに行っても問題ないよね)

(我ながら、完璧な作戦だ…これなら、今度から、何かあるごとに美月に勝負を吹っかけるふりをして、美月に会いに行っても問題ないよな)


 お互い勝利を確信して、笑みがこぼれそうになるが、必死に堪えて、睨み合いを続けるのである。お互い、ジッと見つめ合って、学校で会えることの喜びを感じるのであった。


「ちょっと……何でこんなに人だかりができているのかなぁ・・・とういか…そこ通してもらってもいいかなぁ?」


 そう男子生徒達に言う梨緒に、戸惑う男子生徒達なのである。さすがに、始めは、今は無理と抵抗する美月ファンクラブメンバーの男子生徒達だったが、梨緒の無言の清楚笑みを浮かべて放つ圧に耐え切れなくなり、梨緒を通してしまうのであった。


「……夜桜さん……こんなところで何しているのかなぁ?」

「別に……郁人に勝負を挑みに来ただけだよ」


 郁人と対峙する美月を見つけて、ハイライトオフのヤンデレモードで美月を睨みながらそう言う梨緒に、美月も不機嫌モードで返事を返すのである。


「勝負? 何の勝負なのかなぁ? 中間試験で郁人君に負けた夜桜美月さん」

「貴様…失礼だろが……その勝負も、どうせまぐれで勝っただけだろうに」

「……外野は黙っていてくれないかなぁ? それに、それは負け惜しみにしか聞こえないよねぇ」

「なんだと、貴様!!」


 美月に対して、嫌味を言う梨緒に怒りの声をあげる政宗だが、梨緒に簡単にあしらわれてしまい、怒りに震える政宗なのであった。


「郁人様……もう解散した方が良いですよ~!! 大変なことになってますって~」

「いや……まだいける…まだ大丈夫だ」


 郁人は、梨緒を不機嫌に睨む美月をジッと眺めながら、焦るゆるふわ宏美にそう言うのである。ちなみに今の郁人は、美月は可愛いと思いながら、美月を見る事に全神経を集中させているので、ゆるふわ宏美の話など聞いていないのであった。


「美月ちゃん……もう、教室に戻ろうぜ…言いたいことも行ったし…」

「……」


 怒る政宗と美月ファンクラブメンバーの男子生徒達に、焦る浩二は、美月にそう提案するが、完全に無視する美月は帰る気はないのである。こちらも、郁人の姿を見るだけで満足な美月は、梨緒から視線を逸らしてジッと郁人を見るのである。


 そんな美月を見て、梨緒に挑発されて怒れる政宗は、郁人を睨みつけるのである。


「そうか……ならば、俺と勝負だ!! 朝宮郁人!! 美月の仇は幼馴染の俺がとる!!」

「……は?」


 郁人は突然そう言う政宗に、何を言っているんだ? コイツと言う表情で睨みつけてくる政宗を見返すのである。


「貴様は100m走の順位で勝負と言っただろ…なら、この俺が貴様に勝てば、美月の勝利と言う訳だ……必ず美月に勝利を捧げて見せる」

「……そういうことか…いいだろう…その勝負受けてやる」


 政宗の提案を受ける郁人をジッと見つめる美月なのである。真剣な表情の郁人を見て、ニヤニヤしてしまう美月はハッとなり、不機嫌に口をへの字にするのである。


(郁人カッコいいよ…郁人、私応援するからね!! 頑張ってね)


 ドヤ顔で、美月に勝って見せると勝利宣言をする政宗を完全スルーして、郁人を見つめながらそんなことを考える美月なのである。


「なるほどねぇ…じゃあ、私は夜桜さんに勝てば郁人君が勝利ってことだねぇ…どうせ、覇道君じゃ、郁人君の相手にならないしねぇ」


 梨緒はそう言って、美月を睨むと、それに気がついた美月は、もちろん、負けるかと睨み返すのである。


「いいよ…三橋さんには負けるわけにはいかないからね」

「それはこっちの台詞だよぉ…夜桜さん」


 バチバチの美月と梨緒に、周りの生徒達は盛り上がるのである。廊下の騒ぎはどんどん大きくなっていくことに、焦るゆるふわ宏美と浩二なのである。


「郁人様が負けるわけありません!!」

「尊い郁人様の勝利は揺るぎませんわ…お可哀想に…」

「一生郁人様推しの私は郁人様の勝利を確信してます!!」

「今度は美月ちゃんが勝つに決まってるだろ!!」

「覇道勝てよ!!」

「朝宮のクソ野郎をぶっ飛ばせ!!」


 廊下で騒ぎ出す郁人様ファンクラブメンバーの女子生徒達と、美月ファンクラブ幹部メンバー達は睨み合い今すぐにでも戦争が起きそうな雰囲気なのである。郁人と美月も、政宗と梨緒と睨み合い険悪なムードなのである。


「一年・・・何を騒いでいるのですか?」


 そう眼鏡をクイっとしながら、1組教室側から現れた眼鏡イケメン生徒会長は女子生徒達にそう注意するのである。


「一年生達…この騒ぎは何事だ!?」


 そして、7組教室側から数人の女子生徒を連れたツリ目のポニーテール女子生徒は、怒りの声をあげて、男子生徒達を一喝するのである。


「……朝宮郁人…また君ですか?」

「夜桜美月……また貴様は問題を起こしたのか!?」


 そう郁人と美月に言い放つ眼鏡イケメン生徒会長と、ポニーテールの鬼の風紀委員長の登場で、さらにややこしい事態になり、頭を抱えるゆるふわ宏美と浩二なのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る