第130話ギャルゲの主人公と乙女ゲーのヒロインは、幼馴染で恋人なので、ずっと一緒に居たいのです。その2

 次の日になり、郁人と別れてゆるふわ宏美と一緒に登校して、いつも通り、浩二が校門で美月を待っていて、挨拶をしてくるが、美月は無視するのである。そして、ゆるふわ宏美が1組教室に歩いて行く背中が見えなくなるまで、ジッと名残惜しそうに見て、美月は教室に入り、自分の席に座ると、窓の外を眺めるのである。


(……あ…もう郁人に会いたくなってきた)


 美月は、郁人と別れて20分も経ってないくらいなのに、もうすでに郁人に会いたいモードの美月は、郁人の考えた完璧な作戦をすぐに実行に移すことを決めるのであった。


 美月が作戦実行のために、立ち上がって、教室から出て行こうとすると、近くに居た浩二が美月に声をかけてくるのである。


「……美月ちゃん…どこか行く気ならついてくぜ」

「……」


 毎回、美月が移動しようとするたびに、ついてくる浩二に嫌気がする美月は、無言で睨んで無視するのである。そして、美月は教室を出ようとすると、登校してきた政宗と教室の扉の前でばったり会ってしまうのである。


「美月、おはよう…どこに行くんだい?」

「……おはよう…ちょっとね」


 政宗には、適当にそう言って、美月は1組教室に向かおうとすると、政宗もそのままついてくるのである。そして、イケメン二人は美月が1組教室に向かっていることにすぐに気がついて、止めてくるのである。


「美月……こっちは、1組の教室がある方じゃないか…あそこには近づかない方が良い…戻ろう」

「そうだぜ……美月ちゃん…戻った方が良いぜ」

「……こっちに用事があるの…嫌なら二人で戻れば」


 勝手についてくる政宗と浩二にそう冷たく言い放つ美月は、1組教室の元に向かうのである。もちろん、止めたい政宗と浩二は、美月の前に立ちはだかり、止めに入るのである。


「美月、これ以上は進ませない…良いから戻ろう」

「そうだぜ…美月ちゃん……美月ちゃんのために、ここは行かせねーぜ」

「……私、言ったよね? 用事があるって……ついてくるなら、黙ってついてきて、ついてくる気がないなら、黙って帰ってよね」


 美月の圧に、たじろぐイケメン二人なのである。美月達のやり取りは物凄く目立っており、廊下に男子生徒達が様子を見に出てくるのである。


「美月ちゃんだ…どうかしたんだろうか?」

「最近、あの三人仲が悪いって噂だからな…喧嘩なんじゃないか?」

「確かに最近、美月ちゃん食堂に食べに来ないし」


 美月と政宗と浩二に関しての話が、男子生徒達から聞こえてくるのだが、美月は完全に無視して、1組教室に向かうのである。政宗と浩二だけが、居心地が悪そうな表情で、仕方なく美月について行くのである。


「郁人様が居る神聖な1組教室に何かご用でしょうか?」

「尊い郁人様のクラスである1組教室に、用事でもあるのかしら?」

「郁人様一生推します!!」


 すぐに、美月が1組教室に向かっているという情報が、郁人様ファンクラブメンバーから、発信され、廊下で美月を待ち伏せしていた郁人様親衛隊の三人組と、郁人様ファンクラブメンバー達なのである。


「……郁人に用事があるから、呼んでもらっていいかな?」

「み、美月!?」

「み、美月ちゃん!?」


 そう言い放つ美月に驚きの声をあげる政宗と浩二なのである。もちろん、郁人様親衛隊の三人娘がそれを許すわけがないのである。


「……郁人様を呼び出すなんて、ダメに決まってます!!」

「尊い郁人様を呼ぶ出すことは私達には不可能ですわ!!」

「一生郁人様推しの私は、遠目から郁人様を眺めるだけで満足です!!」


 そもそも、この三人娘に、郁人に普段話しかける勇気はないのである。基本的に遠目から眺めているだけで、お話も朝とお昼だけの数回と決めているのである。


「……じゃあ、誰でもいいから、郁人呼んでくれないかな?」

「……無理です!」

「無理」

「無理だよね」

「それは無理かな」


 美月が、そう女子生徒達に言うが、返答は無理しか返ってこないのである。基本的に眺めているだけの郁人様ファンクラブメンバーが郁人様を呼び出すなどと不可能なのである。みんな恥ずかしがり屋さんなのであった。


「そ、そうんなんだね……じゃ、じゃあ、とりあえず、そこ通してくれない? 私が直接呼ぶから」

「郁人様を呼び出すなんて、ダメに決まっています!!」

「尊い郁人様を呼ぼうなどと許される行為ではありませんわ!!」

「一生郁人様を推しの私も、その行為は許せません、許しません!!」


 美月がそう言うと、怒り出す三人娘を睨む美月なのである。そして、美月の背後にはぞろぞろ、美月ファンクラブメンバーの男子生徒が集結し、一年の廊下は再びカオスになるのである。


「な、何が起こってるんですか~!? って、美月さんじゃないですか~!? ど、どうして、1組に~……な、何か用事でもあるんですか~!?」


 郁人とくだらない話をしていたゆるふわ宏美は、廊下が騒がしいことに気がつき、確認のために廊下に出てくるとカオスな状況に驚き、郁人様ファンクラブ会長なのに、ファンクラブメンバーから、美月襲来を知らされてないゆるふわ宏美が、小さい身体を生かして、女子生徒達の間をすり抜けて、前まで出てきてそう言うのである。


「ひろみん!! 郁人に用事があるから、呼んできてよ!!」

「……え!? そ、それは無理ですよ~!! って、美月さん…郁人様に用事なんですか~!?」


 ゆるふわ宏美は、美月にそう言われて、驚きの表情を浮かべて、美月に近づき、小声で話しかけるのである。


「み、美月さん…学校では郁人様には近づかない方が良いって言ったじゃないですか~? ど、どうしたんですか~? 用事なら放課後で良いじゃないですか~」

「ひろみん…ひろみん、これは作戦だよ…郁人呼んできてよ」

「な、なんの作戦ですか~」

「郁人の完璧な作戦だよ…郁人を信じて呼んできてよ」

「いえ~、それは絶対信じられないですね~」


 小声でそう会話をする美月とゆるふわ宏美を、政宗と浩二が物凄く睨んでくるのである。ゆるふわ宏美は、そんなイケメン二人に、正直、美月をどうして止めなかったのかと不満に思うが、ゆるふわ笑みで、優しく鬼の形相のイケメン二人を見て、美月から離れるのである。


「み、美月さん…はっきり言いますね~……郁人様には会わせられません~」

「……仕方ないね……じゃあ、最終手段だよ……朝宮郁人!! 出てこい!! 朝宮郁人!!」

「みみみみ、美月さん!! 何言ってるんですか~…静かにしてくださいよ~!!」


 美月が大声でそう言うので、焦るゆるふわ宏美なのである。美月が呼べば、絶対郁人が出てくるとわかっているゆるふわ宏美は、必死に叫ぶ美月を止めに入るのである。もちろん、イケメン二人は驚き、立ち尽くすだけで役にはたたないのであった。


「……全く……悪いが通してくれないか?」


 郁人が1組教室から出てきて、そう女子生徒達に言うと、女子生徒達は、郁人様のいう事なら仕方ないと、素早く道をつくり、郁人様親衛隊もすぐに、廊下の端に寄るのである。


「みんな、ありがとう」

「そ、そんな、郁人様」

「郁人様、ありがたい言葉!!」


 そう素直に通してくれる女子生徒達に真のイケメン笑顔でそう言う郁人に、女子生徒達は何人か立ち眩みで倒れそうになるのであった。


「来たね……朝宮郁人!!」

「俺に何か用事か……夜桜美月」


 そう言って対峙する学園のアイドル同士を、緊張の眼差しで見つめる生徒達なのである。そして、美月は、ニヤニヤしそうな表情を必死に抑えてこう言うのである。


「朝宮郁人……この前は負けたけど、次の勝負は負けないよ!! 次は体育祭だよ…体育祭で勝負だよ!!」


 そう勝負宣言をする美月に、呆気にとられる生徒達なのであった。もちろん、ゆるふわ宏美は、どういうことなのと本気で混乱するのであった。

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