第125話ギャルゲの主人公と乙女ゲーのヒロインは、勉強が得意なのである。その25

 突然そう言われて、鳩が豆鉄砲を食ったような表情になる梨緒なのである。


「郁人君……ごめんねぇ…よ、よく聞こえなかったからぁ、もう一度言ってもらってもいいかなぁ?」

「今から7組に行くって言ったんだが…聞こえなかったのか?」


 梨緒はヤンデレ笑みを浮かべて、そう言う郁人を見るのである。もちろん、聞こえていた梨緒はわざと、何を言っているのかなぁという意味を込めて、もう一度聞いたのである。


「郁人君……それは許さないよぉ」

「い、郁人様……そうですよ~……それはやめましょうよ~」


 ハイライトオフの瞳で笑みを浮かべながらそういう梨緒と、周りの女子生徒と男子生徒が、郁人の発言にピリピリしているのを感じて、焦りのゆるふわ笑みを浮かべて郁人を止めるゆるふわ宏美なのである。


「いいから、一緒に行くぞ…ほら、小鳥遊さん達もついてきてもらっていいかな?」


 郁人は、梨緒とゆるふわ宏美にそう言って、こっちをジッと見ていた副会長のクラス委員長と郁人親衛隊の三人娘を誘うと、郁人様親衛隊の三人娘と副会長のクラス委員長は、喜んでとチョロく郁人について行くのである。そんな、郁人を止めないととゆるふわ宏美が立塞がるのである。


「ちょ、ちょっと~、待ってくださいよ~」

「どうした? ゆるふわ早く行くぞ」

「いえ~……そうではなくてですね~…郁人様……7組行くのはダメですよ~」

「ゆるふわ……いいから、行くぞ」


 ゆるふわ笑みを浮かべて、郁人を止めようとするが、そんな、ゆるふわ宏美を無視して、教室を出ようとする郁人に、今度は梨緒が立塞がるのである。


「郁人君…行かせないよぉ」

「ほら、梨緒…いいから行くぞ」


 ヤンデレ梨緒に、自信満々な郁人は、黙って俺についてこいムーブで、立塞がる梨緒にそう言い放つのである。そんなイケメン郁人に、顔を赤くしてしまう梨緒だが、ここで引く訳にはいかないのである、


「い、郁人君……絶対ここは通さないからねぇ」

「早く行かないと、朝のホームルーム始まるからな……いいから、一緒に行くぞ」


 郁人は、立塞がる梨緒に近づいて、彼女の肩を叩いて、そう言い放つと、梨緒は顔を真っ赤にして照れるのである。


「いいいい、郁人君に…か、肩…郁人君…か、か…か、肩…さ、さわ…」

「どうした? 梨緒…ゆるふわ…お前も席に戻ろうとしてないでついてこい」


 梨緒がバグってる隙に、嫌な予感しかしないゆるふわ宏美は、もう郁人を止められないと判断して、逃げようと自分の席に座ろうとするが、そんなゆるふわ宏美を逃がさない郁人なのである。


 そして、教室を出て行く郁人に、渋々ついて行くゆるふわ宏美と郁人様ファンクラブ幹部メンバーなのである。梨緒は、顔を両手で押さえて、顔を真っ赤にして郁人に肩を触れられたことを嬉しく思って、意識がどっか行っている状態でフラフラと郁人の後ろをついていくのであった。







 美月は、教室で窓の外をムスッとしながら眺めているのである。相変わらず無視しても、政宗は朝に挨拶に来て、浩二も美月の席の近くにいるのである。


(はぁ~…あからさまに、態度悪いのに何で、私の傍に来るのかな)


 政宗も浩二も、少し居心地悪そうにしながらも、美月の傍に居るのである。そんな二人にため息をつく美月は、ボーっと窓の外を眺めるのであった。


「永田さん!! まずいですよ!! あ、朝宮が、ハーレムメンバー連れてカチコミに来ましたよ!!」

「はぁ!? どういうことだ!?」

「し、知らないっすよ!! と、とにかく、今廊下で、引き留めてますが……い、いつまでもつか…と、とにかく早く来てください!!」


 突然、教室にクラスメイトの男子生徒が駆け込んできて、浩二にそう言うのである。浩二は険しい表情を浮かべて、政宗の方を見ると、政宗は怒りに満ちた表情で、浩二を見返すのである。


「とにかく、早く行かねーと…政宗わりぃが付き合ってもらってもいいか?」

「もちろんだ……美月、君は教室で大人しくしていてくれ」


 政宗と浩二がそう話を終えて、教室を出て行こうとするが、無言で美月が立ち上がるのである。


「み、美月……危険だから、教室で待っていてくれ…大丈夫だから…俺と浩二で美月を守るから、心配しなくて大丈夫だよ」

「そ、そーだぜ、美月ちゃん…僕達に任せておいてくれよな」


 すぐに、美月が立ち上がり、移動を始めたことに気づいた政宗と浩二は、教室の入り口で立ち止まり、こっちに向かって歩いてくる美月にイケメン笑みでそう言うのだが、そんな二人の顔を全く見ていない美月なのである。


「み、美月?」

「美月ちゃん?」


 無言でこっちに向かって来る美月に、気圧される政宗と浩二は、美月の名前を口にすると、ギロリと美月に睨まれるイケメン二人なのである。


「……そこ、どいてもらっていいかな?」

「それは、出来ない…いいから、美月は自分の席に座って待っていてくれないかい?」

「そ、そーだぜ、美月ちゃん…危険だから……おとなしくしててくれ」


 美月は、そう言われて、もう面倒だからと、別の扉から外に出ようと歩き出すのである。


「ま、待て、美月……教室から出てはいけない」

「僕達に任せてくれ!!」


 無言の美月を必死に止めようとする政宗と浩二を、完全に無視して、教室から出て行こうとする美月の肩を掴む政宗を、すぐに振り払う美月なのである。


「……ごめん…触らないでもらえないかな…あと、邪魔だから本当に…」

「み…美月……」

「……み、美月ちゃん」


 冷たくそう言い放つ美月に、唖然とする政宗と浩二なのである。もちろん、美月ファンクラブの生徒達やクラスの女子生徒も無言でそのやり取りを見ているのである。


(でも、郁人何しに来たのかな? も、もしかして、わ、私の事が心配で来てくれたのかな?)


 美月は、もはや、郁人の事しか頭になく、呆然と立つ尽くすイケメン二人を完全に無視して廊下に出るのである。


 そして、美月が廊下で見たのは、この間の勉強会の時のメンバーを引き連れて、男子生徒達と対峙している郁人の姿なのであった。


(え!? 郁人……な、なんで、なんで、その人たちと一緒なの!?)


 戸惑う美月は、不安になりながらも、郁人の所に向かうため歩みを進めるのである。そして、すぐに我に変えた政宗と浩二が慌てて教室から出てきて、美月を止めようとするのであった。

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