第124話ギャルゲの主人公と乙女ゲーのヒロインは、勉強が得意なのである。その24

 郁人は、リビングで寝て、朝早く起きると、布団をたたんで、日課のジョギングに出かけるために、自分の部屋に着替えを取りに行くと、スヤスヤ幸せそうに郁人のベッドで寝ている美月が居るのである。


(美月…俺が美月に勝てるとは思わないけど……俺は必ず美月に相応しい男になるからな)


 スヤスヤ美月ちゃんを見て、郁人は心の中で決意を固めるのである。そして、日課のランニングに出かけるのであった。


 そして、日曜日は、普通に4人で勉強して過ごすのであった。夕方、美月が家に帰る時に郁人は一言美月にこう伝えるのである。


「美月……俺も頑張るからな」

「え? う、うん?」


 突然、美月は郁人にそう言われて、疑問顔でキョトンとするのである。そんな郁人と美月の様子をジト目で見る美悠は、先に自分の家に帰るのである。


(結局、お兄ちゃん…ずっと、お姉ちゃんの事しか見てなかったな…でも、私だって…)


 美悠は帰ってすぐ自室で再度勉強を始めて、夕ご飯まで勉強する美悠なのである。美月は、上機嫌で家に帰り夕ご飯の準備を始めるのであった。


 そして、月曜日を迎えて、いつも通り、ゆるふわ宏美との待ち合わせ場所に向かう郁人と美月なのである。美月は郁人と手をつないで、郁人の顔をチラチラ見るのである。


(今日の郁人は…いつにもましてカッコいいよ…なにかあったのかな?)


 美月は、朝に家の前で会った時から、決意の表情の郁人を見て、顔を赤く染めて、嬉しそうにチラチラ何度もその表情を見ては、心の中でにやける美月なのであった。


「お、おはようございます~……郁人様、美月さん……」

「おはよう、ひろみん!」

「……おはよう」


 ゆるふわ宏美は、げっそりとしたゆるふわ笑みで、待ち合わせ場所に来た郁人と美月にそう挨拶するのである。


「……ゆるふわ…今日は頼むな」

「な、何をですかね~……そ、そのわたしぃよくわかってないのですが~」

「大丈夫だ…じゃあ、美月を頼むな、ゆるふわ…美月…また後でな」

「う、うん…じゃあ、郁人また後でね」


 やる気オーラに満ちている郁人に不安になるゆるふわ宏美と、そんな郁人にデレデレな美月は、郁人と別れて学校に向かうのである。そんな二人の背中をジッと見えなくなるまで眺める郁人なのであった。


「今日の郁人なんだかカッコいいよね…ひろみん、どう思う?」

「そ、そうですね~…い、嫌な予感しかしないですね~」


 デレデレ美月は、そう嬉しそうに、ゆるふわ宏美に惚気るのだが、ゆるふわ宏美は嫌な予感がして、学校に向かう足取りも重くなるのである。郁人と短い付き合いのゆるふわ宏美も理解しているのである。


(郁人様がああいった表情の時は~…だいたい、ろくでもないことを考えてるときですよね~)


 美月の惚気話を話半分に聞きながら、どうか無事に今日も過ごせますようにと天に祈るゆるふわ宏美なのであった。


「……あ、美月ちゃん…お、おはようだぜ」


 学校につくと、浩二がいつも通り、ぎこちない感じで美月に挨拶をするのである。


「……ひろみん…行こう」

「あ…は、はい~」

「……」


 いつも通り校門で美月を待っていた浩二を、完全に無視する美月なのである。これも、毎朝の日課となっており、ゆるふわ宏美は、先ほどとは打って変わり、超絶不機嫌な美月の隣をぎこちないゆるふわ笑みで歩き、黙って美月達についてくる浩二なのである。


(いい加減に~……この状況もどうにかしないとダメですよね~)


 最悪の雰囲気を醸し出す自分達を、周囲の生徒達が戸惑う感じで見ているのを見て、ゆるふわ宏美はそう思うのである。


(でも、結局は~…永田さんの問題ですしね~…嫌われてるわたしぃが何を言っても聞かないでしょうしね~)


 不機嫌にゆるふわ宏美を睨みつけている浩二をチラリと振り返って見て、ゆるふわ宏美はそう呆れるのである。


(本当に~…余計なことしないでくださいよ~……郁人様)


 たぶん、浩二の中では、自分と郁人様が悪者なんだろうな~と呆れるゆるふわ宏美は、決意の表情でやる気に満ちた郁人を思い出して、心の奥底から、本気で変なことしないでください~と思うのであった。


「では~……美月さん、わたしぃはこれで~……もし何かありましたら~、スマホに連絡くださいね~」

「うん…またね…ひろみん」


 F組教室前に着くと、ゆるふわ宏美は、ゆるふわ笑みで美月にそう別れの挨拶を言うと、名残惜しそうな美月に、少し心が痛くなるゆるふわ宏美なのである。そんな、やり取りを無言で睨んで見ている浩二に、ゆるふわ宏美は、やはり呆れるのである。


(これは、素早く退散しないと~)


 すぐにこの場から立ち去るゆるふわ宏美をジッと見ている美月なのであった。







 そして、自分の席に座り、不安しかないゆるふわ宏美は、いつも通り、郁人様親衛隊を引き連れて、教室に登校してくる郁人にすぐに、挨拶に向かうのである。


「郁人様…おはようございます~」

「ああ…おはよう」


 いつも通り、二度目の挨拶を交わす郁人とゆるふわ宏美なのである。もちろん、教室に入ると、すぐに席に向かう郁人から、離れてすぐに自分の席に向かう郁人様親衛隊の三人娘の動きは手慣れているのである。


「梨緒は…まだ来てないか……ゆるふわ…俺は必ず、学園で一番の人気者になるからな」

「えっと~…それは聞きましたが~……そのどうしたんですか~? 急に~」

「……六月には創立記念祭があるだろ?」

「ありますね~…プチ文化祭みたいなことするみたいですね~」

「ああ……そこでな…クラスの女子に聞いたんだが…学園の人気者を決める催しがあるらしいな」

「はい~…そう言えば、毎年やってるみたいですよ~…去年は生徒会長と、風紀委員長の一騎打ちだったらしくてですね~…結局生徒会長が勝ったみたいですよ~」


 ゆるふわ宏美は、郁人様ファンクラブネットワークで知りえた情報を郁人に伝えるのである。もちろん、去年どうだったのかと言う話に全く興味のない郁人なのである。


「そんなことはどうでもいいんだがな……その催しモノはクラスで代表を決めるらしいな」

「そうですよ~…だから、結構問題も多いらしいですよ~…毎年開催するか議論に上がるそうですし~」

「……ゆるふわ…お前の目的は、俺をこの催しもので一番にすることなんだろ?」

「え!?」


 突然ドヤ顔で郁人にそう言われて、驚くゆるふわ宏美なのである。


「その表情は、図星だな……そうか、やはりクラスのみんなは、クラスのために、俺を人気者にしようとしていたのか……それなら、納得だ」

「あ…あの……い、郁人様…そ、それは違うかと~」


 もちろん、全く的外れな考えに驚いていたゆるふわ宏美に、うんうんと首を縦に振り、腕を組んで納得する郁人なのである。


「だから、入学式から、俺を学園のアイドルにしようと思っていたんだな…まぁ、それは、今更どうでもいいが……俺は、ゆるふわ達の作戦に乗ろうと思う」

「あの~…郁人様…わたしぃの話を聞いてください~…そんな作戦はないですから~」

「その催しもので俺は……美月に勝つ……絶対にだ」


 郁人のその発言に、目を見開いて驚くゆるふわ宏美なのである。そして、このタイミングで梨緒が登校してくるのである。


「郁人君…おはよう……ど、どうかしたのかなぁ?」

「梨緒か…おはよう……じゃあ、みんな揃ったし…F組の教室に行くぞ」


 戸惑い困惑するゆるふわ宏美と、やる気と決意に燃える郁人を見て、戸惑いながらも、郁人の所に来て挨拶する梨緒にそう言い放つ郁人なのであった。

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