第106話ギャルゲの主人公と乙女ゲーのヒロインは、勉強が得意なのである。その6

 生徒会長から、訳の分からないことを言われて、よくわかっていない郁人と、滅茶苦茶焦って必死に対策を考えるゆるふわ宏美は、屋上に向かうのである。


「とりあえず、ファンクラブ解散しろって言われたんだから…解散すればいいだろ」

「だから~、それはダメですって~…郁人様はいい加減に自分の立場を理解してくださいよ~」

「なんだそれ?」


 呑気な郁人に対して、深刻そうなゆるふわ宏美とでは、温度感が全く違うのであった。


「はぁ~…まぁ、それが郁人様ですしね~…仕方ないですよね~」


 呆れるゆるふわ宏美に納得のいかない郁人なのであった。


「とにかく、何か対策を考えないといけませんね~」


 そう言いながら、屋上への階段を上るゆるふわ宏美とその後に続く郁人なのである。やっと、屋上について、屋上の扉を開くと、重い空気が屋上に漂っているのである。暗い雰囲気を漂わせ、郁人様ファンクラブ幹部メンバーと梨緒が、普段通りの席に座り昼食を取らずに、郁人を待っているのであった。


「お、お待たせしました~」

「す、すまない…生徒会長に呼ばれて…遅くなってしまった」


 あまりの空気の重さにタジタジな郁人とゆるふわ宏美は、戸惑いながら、重い空気の梨緒達に話しかけるのである。いつもなら、幹部メンバー以外にも抽選で選ばれた女子生徒が居るのだが、今回は幹部メンバーのみなのである。


「ごめんねぇ…郁人君…私達が迷惑かけちゃったよねぇ」


 そう郁人に謝る梨緒に、続いて幹部メンバー達も謝罪の言葉を述べるのである。そして、一人ゆるふわ宏美だけ、あれあれ~と疑問のゆるふわ笑顔を浮かべているのである。


「あ…ああ…まぁ、俺はよくわかっていないんだが……」


 そう謝罪を述べられ、梨緒達に頭を下げられる郁人は戸惑いながら、ゴゴゴゴッと怒りのゆるふわ笑みを浮かべているゆるふわ宏美をチラチラ見るのである。


「あれあれ~…皆さん~? おかしくないですかね~?」


 そうゆるふわ笑顔で梨緒達に言うゆるふわ宏美に対して、梨緒達は疑問の表情を浮かべるのである。


「宏美ちゃん? どうかしたのかなぁ?」

「会長……どうかしたんですか?」


 梨緒と副会長のクラス委員長は、本当に何もわかっていない表情でゆるふわ宏美にそう言うのである。


「……謝るのは、わたしぃにですよね~!! 皆さんが一番迷惑かけたのわたしぃにですよね~!!」


 流石に、ゆるふわ笑顔を捨てて怒る宏美に、一同疑問顔なのである。


「え? 宏美ちゃんに? 私達、宏美ちゃんのために郁人君に迷惑かけたんだよぉ」

「そうですね…むしろ、会長が郁人様に一番迷惑をかけたのですから、きちんと謝罪するべきじゃないですかね?」

「会長…ちゃんと謝りましょう!!」

「尊い郁人様に、謝罪しないといけませんわよ…会長」

「会長!! 生涯郁人様を推すためにも、謝った方が良いですよ」


 そう幹部メンバーから郁人への謝罪を求められるゆるふわ宏美は、わなわなと震えながら、キッと郁人を涙目で睨むのである。


「い、郁人様…このたび、わたしぃが迷惑かけてすみませんでした~!!」


 悔し涙目なゆるふわ宏美は、もうやけになって、そう郁人に謝罪を述べるのであった。


「あ…ああ…そうか…ゆ、ゆるふわ…お前も大変なんだな」


 そんな、悔し涙目で、顔が真っ赤なゆるふわ宏美を憐れむ郁人は、心底同情するのであった。


「……まったく~…いいですか~!! 皆さんのせいで、我々、郁人様ファンクラブは今現在存続の危機に瀕しているんですからね~!!」


 そう言って、生徒会長に言われたことを説明するゆるふわ宏美なのである。もちろん、郁人含めて、みんな食事をとりながら、ゆるふわ宏美の説明を聞くのである。


「……それは…少し…悪い状況になったねぇ…確かに、生徒会はどうでもいいけどぉ…先生方の評価が悪くなるのは…よくないよねぇ」

「そうですね…生徒会はどうでもいいのですが…先生方の評価は下げるべきではありませんね」


 幹部メンバー一同は、みんな、生徒会長はどうでもいいのであった。口をそろえて、生徒会は、どうでもいいという幹部メンバーなのであった。


「まぁ~…確かに~…生徒会はどうでもいいのですが~…職員会議で我々の活動が議題に上がるのは阻止したいのですよね~」


 真剣に考えるゆるふわ宏美と梨緒達に対して、郁人は黙々と自分が作った弁当を食べるのであった。正直、話を全く聞いていない郁人なのである。


「とにかくですね~…これ以上は先生方の評価を下げる訳にはいきませんよ~…なんとかして、評価をあげるべきですね~」

「そうだねぇ……先生方の評価が上がれば…生徒会のたわごとと思われて終わりだしねぇ」

「ですが…どう評価をあげるかが問題なのではないですかね?」


 必死にどう先生方の評価をあげるかの議論を繰り広げる一同に、郁人は弁当を食べ終わり、お弁当箱を片付けながら、こう言い放つのである。


「先生の評価上げたいなら…中間テストで良い点とればいいだろ…だいたい、テストで良い点とれば先生の評価はあがるぞ…逆にテストで悪い点を取れば評価が下がる…まぁ、テストで良い点取ればいいだけだな」


 郁人の発言に、重い空気で黙る幹部メンバー達なのである。郁人はまさかと一同を見回すと、みんな一斉に視線を逸らすのである。


「……いや…まさかな…え? まさか…い、委員長は大丈夫だよな?」

「…………………」


 そう、三つ編み眼鏡の優等生容姿のクラス委員長にそう言う郁人だが、言われた副会長の委員長は、冷や汗ダラダラで郁人から視線を逸らして黙り込むのである。


「……え? えっと…小鳥遊さんと、四月一日さんと…東雲さんは…大丈夫だよな?」


 そう郁人親衛隊の三人組にそう言うと、ダラダラと三人とも冷や汗を流しながら、視線を泳がせるのである。


「これは…そうか……仕方ないな」


 もう、諦めるしかないなと思う郁人に、何故かゆるふわ宏美と梨緒が不満気な表情で郁人を睨むのである。


「郁人様…なんでわたしぃ達には聞かないんですか~!?」

「そうだよぉ!! 郁人君!! 私達にも聞いてよねぇ!!」

「……いや…お前達は、今日中間の話した時に察したから大丈夫だ」


 もうこのメンバーは勉強ができないと察した郁人なのである。一同居心地が悪そうにしているのであった。そして、少し考え込む郁人は、考えたのである。もしもこのメンバーのテストの点数が悪かった場合は、また自分のせいにされるのではないかと思う郁人なのである。


「……仕方ない…お前達の勉強を俺が見てやるから…今日から、昼休みは、食事済んだら勉強するからな」


 郁人はいやいやながら、今後の学校生活と先生方の評価を考慮して、そう幹部メンバー達に提案するのである。


「え!? い、郁人君が私達の勉強を見てくれるのかなぁ!?」

「あ…ああ」


 驚きの表情を浮かべる一同は、しばらくして嬉しそうな表情を浮かべるのである。三人娘などは嬉し涙まで浮かべて感動しているのである。


「わ、わたしぃは遠慮しておきますね~」

「ゆるふわ…お前は、昼休み以外も勉強見てやるからな…美月の友達が赤点なんて、俺が許さんからな」

「い、いやです~!! 許してください~!! 郁人様~!!」


 そう悲鳴をあげるゆるふわ宏美に、邪悪な笑みを浮かべる郁人なのである。そんなやり取りをしていて、郁人は梨緒達が勝手に盛り上がっていることに気がつくが遅れるのである。


「じゃあ、今週の土日にみんなで勉強会だねぇ」

「そうですね…今週の土日は皆さんで勉強をしましょう」

「はい~!! 郁人様とお勉強楽しみです!!」

「尊い郁人様と勉強…感動ですわ」

「勉強を教えてくれる郁人様…一生推します!!」


 郁人は、その言葉を聞いて、空耳かなと思い一同を見て、会話を聞くと、やはり、土日に一緒に勉強をすることになってしまっているのである。


「ちょっと…待て…土日は俺は用事かがあるんだが…」


 郁人は焦って、一同にそう言うのである。だがしかし、ニッコリ笑みを浮かべている梨緒は郁人にこう言うのである。


「郁人君楽しみにしてるからねぇ」

「いや…土日は…その用事が…」

「用事? 何があるのかなぁ?」

「いや…い、妹の勉強を見ないと行けなくて…」

「じゃあ、妹さんも連れて来れば大丈夫だよねぇ…じゃあ、土日はみんなでお勉強だねぇ」


 そう無理やり話を進める梨緒に、困り果てる郁人はゆるふわ宏美に助けを求める視線を送るのだが、ゆるふわ宏美は、にっこり笑顔でこう言うのである。


「では~、頑張ってくださいね~…い、く、と、さ、ま~」


 先ほどの復讐で、最高のゆるふわ笑顔で郁人にそう言い放つゆるふわ宏美に対して、郁人はこのゆるふわ絶対に許さないからなと思うのであった。

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