第105話ギャルゲの主人公と乙女ゲーのヒロインは、勉強が得意なのである。その5

 郁人は、やつれて帰ってきたゆるふわ宏美に、物凄く恨みの視線を向けられて、首を傾げて、四限目の授業を受けるのであった。授業中もゆるふわ宏美から、怨恨の視線を向けられる郁人なのであった。


 そして、授業が終わると、昼休みに入り、いつも通り、しかたなく屋上で昼飯を取ろうと立ち上がる郁人なのである、ゆるふわ宏美もすぐに、コンビニ袋を片手に、怨恨のゆるふわ笑みを浮かべて郁人に近づいてくるのである。


「1年1組、朝宮郁人君、1年1組、細田宏美さん、至急生徒会室までお越しください。繰り返します…」


 なぜか、校内放送で呼び出しをくらう郁人とゆるふわ宏美なのである。なぜと疑問顔の郁人に、梨緒はなぜか両手を合わせて遠巻きに謝る仕草をしているのである。


「……おい、ゆるふわ…なんで、俺とお前が生徒会室なんかに呼ばれるんだ?」

「し、知らないですよ~!! 郁人様がわたしぃを見捨てたせいじゃないですか~!?」


 知らないとは言うが、恨みをぶつけるゆるふわ宏美に対して疑惑の視線を向ける郁人なのである。


「わ、わたしぃのせいじゃないですよ~!!」

「はぁ~…とりあえず、行くか」


 郁人は、納得いかないものの、行くしか選択肢にないのも確かなため、生徒会室にゆるふわ宏美と一緒に向かうのである。


「……郁人様…郁人様がわたしぃを見捨てた~後ですね!! 大変だったんですからね~!!」

「……そうなのか?」

「そうですよ~…はぁ~…もしかしたら、そのことかもしれませんね~」

「……は? 俺…関係ないだろ?」

「わ、わたしぃだって、関係ないですよ~!! でも、少しトラブルがありまして~」


 ゆるふわ宏美が語るには、あの後、郁人ファンクラブ幹部メンバーと美月ファンクラブメンバー達が衝突して、先生に注意されたらしいのである。


「なんで、そんなことになったんだ?」

「そ、それは~、郁人様のせいですからね~…わたしぃが美月さんの事が好きって話になってるからじゃないですか~!!」

「それは、事実だしいいだろ……何が問題なんだ?」

「……郁人様…だから、梨緒さん達は、わたしぃが美月さんの事をラブの意味で好きだって思ってるんですよ~…郁人様のせいで~!!」


 郁人は少し考え込んで、ああ、なるほどと納得するのである。


「そういうことか……それは大変だな…ゆるふわ、まぁ、でも、いいだろ? 別に…」

「よくないですよ~!!」


 別にどうでもいい郁人に対して、怒るゆるふわ宏美なのである。そして、そんなやり取りをしていると、生徒会室にたどり着くのである。


「入ってもらって構いませんよ」


 郁人が生徒会室をノックすると、イケメンボイスでそう返されて、郁人は生徒会室のドアを開けて室内に入るのである。


「よく来てくれましたね…朝宮郁人君、細田宏美さん…どうぞ、そこの席に座ってくださいね」


 イケメン生徒会長は、生徒会長の席に堂々と座り、口元を両手で隠して、イケメン笑みを浮かべて、ソファに腰を下ろすように促すのである。


「……失礼します」

「……し、失礼します~」


 郁人がそう言って、ソファに座ると、ゆるふわ宏美も慌てて郁人の隣に座るのである。それを、満足気に見た後に、イケメン生徒会長は厳しい表情を浮かべ、自慢の眼鏡をクイっとするのである。


「では、本題に入りましょうか…ここに呼ばれた理由はわかりますね?」


 さも、呼ばれて当然だろうという姿勢で、生徒会長にそう言われても、全く心当たりがない郁人は、疑問顔なのである。


「すみませんが…全く心当たりがないのですが…なんで呼ばれたんですかね?」

「いいいいいい、郁人様~!?」


 そう正直に言う郁人に対して焦るゆるふわ宏美なのである。なにやら、生徒会長の横に待機していた。もう一人の長髪イケメンがすぐに生徒会長に耳打ちをするのである。


「なるほど…あくまで、自分は関係ないという事ですか…では、まず、本日1年7組で起きたトラブルの原因はわかりますかね?」

「……全く…すみませんが、そのことに関しては自分もよくわかってないのですが?」


 そう言われて郁人は、やはり疑問顔なのである。そんな郁人に呆れる生徒会長なのである。


「なるほど…では、すまないが説明を頼めるかい?」

「わかりました…生徒会長に代わり、説明します…では、本日1年7組の教室前でトラブルが発生しました…原因は、朝宮郁人のファンクラブメンバーが、夜桜美月さんに対して、嫌がらせをしたためですね」

「は……はぁ~…そうなんですね…おい、ゆるふわ…どういうことだ?」

「し、知らないですよ~…嫌がらせと言うか~…わたしぃを、梨緒さん達が美月さんに押し付けたと言いますか~…その後に~、わたしぃの事を美月さんが好きって言ってですね~…それに嫉妬した男子生徒達と、梨緒さん達が衝突したと言いますか~…わ、わたしぃは関係ないんですよ~」

「……じゃあ、なんで俺達が呼び出されるんだ?」

「し、知らないですよ~…わたしぃだって、被害者ですよ~」


 よくわからない郁人は、そう説明されて、ゆるふわ宏美に小声で事実確認をするのだが、ゆるふわ宏美もよくわかっていないようなのである。


「その…すみませんが…それで、俺達が何で呼ばれるんですかね?」


 その郁人の一言に対して、生徒会長ともう一人の男が厳しい表情で郁人とゆるふわ宏美を睨むのである。


「君は、1年では一番の問題児としてこちらでは認識されているという事を理解したまえ、入学式から、君は問題を起こしてばかり…こちらとしても、ほとほと困り果てているのだよ…ファンクラブとかいう謎の部活動も、我々は納得してはいないのです」


 生徒会長に厳しくそう言われる郁人だが、やはり他人事のように聞いていると、もう我慢ならんと長髪イケメンが喋りだすのである。


「入学式そうそうに女子生徒達と握手会なるものを行い、新入生歓迎会では、講堂前を女子生徒達で溢れ返し、放課後も廊下で長蛇の女子生徒の列を作り、食堂を我が物顔で占拠し、空気を悪くすし、よくわからない自前の写真を女生徒に配る…そして極めつけは、屋上の私的流用だ…問題をあげだすときりがない」


 長髪イケメンにそう罪状を言われる郁人は、ゆるふわ宏美を睨むのである。


「おい…やっぱり、ゆるふわ…お前のせいだろ?」

「違いますよ~…わたしぃは悪くありませんからね~」


 郁人が小声でゆるふわ宏美を責めるが、真っ向からそれを否定するゆるふわ宏美なのである。


「貴様等…いい加減に!!」


 生徒会長の隣に立っている男が、そう言って怒り出すが、生徒会長が素早く手で止めに入り、やはり、厳しい表情で郁人達見るのである。


「朝宮君、君がそう言う態度なら…こちらにも考えがありますよ…いいですか? ただちに、ファンクラブを解散して、女性達を囲うのもやめなさい」

「わかりました…すぐに解散させますね」

「郁人様!? それはダメですよ~!! 生徒会長!! 一個人の活動を阻害する権限は生徒会にはないはずですよ~!!」


 すぐにドヤ顔で同意する郁人を、必死に止めて、ゆるふわ宏美が生徒会長に反論するのである。


「確かに、一度認められた部活動を、我々の権限で解散させることは難しいですが…学校側で問題になるようなら、先生方とともに協議の必要性はあるでしょう? 今度の職員会議に、我々はこの議題を持っていこうと思うのですよ…学校の平和のために」


 にやりと嫌な笑みを浮かべる生徒会長に対して、ゆるふわ宏美押し黙るのである。


「結局…どういうことなんだ? この生徒会長…なんで俺達を呼び出したんだ?」

「郁人様~…つまりですね~…要約すると、郁人様がモテモテなのが許せない…美月さんにちょっかいを出す郁人様のファンクラブメンバーが許せないという事ですよ~」

「なるほど…って、俺は何も悪くないだろ?」

「わたしぃだって悪くないですよ~」


 小声でそう話す郁人とゆるふわ宏美を、厳しく睨みつける生徒会長なのである。


「いいですね? 二人とも…すぐにファンクラブを解散させない場合は、こちらも実力行使に出ますからね…よくよく考えておくように」


 そう話を終らせる生徒会長に、やはり、いまいち、理解できない郁人なのである。そして、郁人とゆるふわ宏美は生徒会室を後にして、郁人は素直に疑問を口にするのである。


「つまり…ファンクラブ解散させればいいんだろ? ゆるふわ、解散させよう」

「無理ですよ~!! それこそ、暴動が起こるかもしれませんよ~!! そもそも、生徒会長のただの嫉妬ですよ~…上級生に聞いたんですけど~、郁人様が入学してくる前までは、生徒会長がこの学校で一番の人気者の男子生徒だったらしくてですね~」

「はぁ~…それで、なんで俺が嫉妬されるんだ?」


 全く理解できてない郁人に対して、この人、本当に大丈夫なのですか~と、心底呆れた表情で郁人を見るゆるふわ宏美なのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る