第103話ギャルゲの主人公と乙女ゲーのヒロインは、勉強が得意なのである。その3
中間試験も近づいてきて、美月の妹の美悠にも勉強を教えることになった郁人は、美月の家から帰った後も、夜は勉強して、朝は日課のランニングを早めに終えて、勉強して、学校に登校して、休み時間も勉強をするのである。
「郁人様…休み時間まで勉強するなんて~…もうすぐ中間ですからね~」
「…あれ…でも、郁人君それ…うちの学校の過去問だよねぇ?」
そう話しかけてくるゆるふわ宏美と梨緒なのである。梨緒は、郁人が時ノ瀬高校の過去問を解いていることに気がつくのである。
「あ…ああ…少しな…妹に勉強を教えることになってな」
「郁人様…妹が居たんですか~?」
「……」
普通に、疑問を口にするゆるふわ宏美に対して、あからさまに不機嫌な表情を浮かべる梨緒なのである。
「あ…いや…まぁ…そうだな」
郁人は、ここで、美月の妹など言うと面倒なことになりかねないと、誤魔化すのである。とくに、何も思わないゆるふわ宏美は、そうなんですね~と納得するが、梨緒だけが、不機嫌なままなのである。
「まぁ、そんなことは置いといて…二人はどうなんだ? もうすぐ中間だが…勉強しているのか?」
そう郁人が、問題を解くのをやめて、二人に向き直りそう質問すると、あからさまに動揺するゆるふわ宏美と梨緒なのである。
「わ、わたしぃは大丈夫ですよ~!! も、もんだいありません~…もしもの時は、郁人様一緒に補習を受けましょうね~!!」
「わ、私も大丈夫だよぉ…な、何も心配いらないよぉ!! ほ、補習はなんとか回避できると思うよぉ!!」
そう焦りながら、もう補習の心配をしている二人を心底呆れた表情で見つめるのである。
「お前ら…言っておくが、ゆるふわ…俺は補習など受けたことないからな…きちんと勉強しておけよ」
「う、嘘です~!! 郁人様が勉強できる訳ありませんよ~!!」
そう失礼なことを言うゆるふわ宏美なのである。郁人は、やはり、呆れながらゆるふわ宏美を見るのである。
「まぁ…勉強は得意ではないが…さすがに、赤点は取らんからな……普段からきちんと予習復習しておけば、平均点は取れると思うぞ」
「……そ、そんなこと言って~騙されませんよ~!! い、郁人様はわたしぃの味方だと信じてますからね~」
必死なゆるふわ宏美に、こいつはどうにかしないといけないなと思う郁人なのである。
「仕方ないな…ゆるふわ…お前の勉強も見てやるから、休み時間は勉強するか?」
「い、いえ~、そ、それは遠慮したいと言いますか~」
「なんでだ? 赤点取りたくないだろ?」
「そ、そうですけどね~…べ、勉強はちょっとですね~」
そう言って、ゆるふわ笑顔を浮かべて嫌がるゆるふわ宏美なのである。
「いや…ゆるふわ…勉強するからな……ほら、苦手な科目を持ってこい」
「え、遠慮しますから~!!」
そう言ったやり取りを、冷ややかな視線で見つめる梨緒なのである。ちなみに、1組クラスの郁人様ファンクラブメンバーもその様子を盗み見しているのである。
やはり、郁人様と、ゆるふわ会長の宏美はとても仲が良く見えるのである。視線で、やり取りをするファンクラブメンバーは、やはりあの作戦を急がねばと思うのである。
「宏美ちゃん…宏美ちゃん、今日は夜桜さんとこに遊びには行かないのかなぁ?」
そう唐突に美月の話題を出す梨緒に、驚きの表情を浮かべる郁人とゆるふわ宏美なのである。
「な、なんですか~? きゅ、急に~…美月さんのクラスは今はちょっとですね~」
「大丈夫…私達に任せて…じゃあ、次の休み時間に、夜桜さんの教室に遊びに行こうかぁ」
「え!? な、何でですか~!? い、行かないですよ~」
「おい、梨緒…突然どうしたんだ? まぁ、美月の教室に行くなら俺も…」
「郁人君は教室に残っててねぇ」
なら、自分も行くと言おうとした郁人に対して、はっきり、拒否する梨緒なのである。その様子にゆるふわ宏美は、恐怖でカタカタ震えだすのである。
「な、何をする気ですか~!? ぜ、絶対行きませんからね~!!」
「宏美ちゃん…行くんだよぉ…ねぇ!!」
そうハイライトの消えた瞳で睨まれながら、そう言われるゆるふわ宏美は、恐怖で頷くことしか出来なかったのであった。
そして、二限目の授業が終わり、すかさず、ゆるふわ宏美は、逃げようとするのだが、梨緒とクラス委員長含めた、幹部メンバーに囲まれるのである。
「じゃあ、宏美ちゃん…7組教室に行こうかぁ…大丈夫だよぉ…私達が完璧にサポートするからねぇ」
「はい…会長…お任せください…我々が、完璧に会長の恋を応援させていただきますからね」
自信満々に言い放つ梨緒と、眼鏡をクイっとして、邪悪な笑みを浮かべる副会長のクラス委員長なのである。
「会長!! サポートは我々、郁人様親衛隊にお任せくださいね」
「尊い郁人様のために、頑張りますわ!!」
「郁人様を一生推すために、会長のサポート頑張りますね」
親衛隊三人娘にもそう言われ、退路を断たれるゆるふあ宏美なのである。カタカタを震えながら、郁人の方を見て、助けてくださいよ~と視線で訴えるゆるふわ宏美なのである。
「……あ…お前達…ゆるふわが泣きそうだから、解放してやってくれ」
郁人は、重い足取りで、ゆるふわ宏美の所に向かい梨緒達にそう言うのであるが、断固として、ゆるふわ宏美を解放する気はないのである。右手は梨緒に、左手は委員長に、そして背後に三人娘がいて、逃げることができないゆるふわ宏美なのである。
正面に立つ郁人に、涙目で助けを求めるゆるふわ宏美に、呆れる郁人なのである。
「郁人君…大丈夫だからぁ…私達に任せてよねぇ」
「いや…ゆるふわ…今にも泣きそうだぞ」
「いいいいいい、郁人様…そそそそそ、その…かかかかか、会長のためでして~」
清楚な笑みでそう言う梨緒に、郁人はゆるふわ宏美を見て助けようとするのである。そんな、郁人に対して物凄く緊張と動揺から、普段とは打って変わって、カミカミな委員長は、郁人にそう言うのである。
「いや…どう見ても、ゆるふわ嫌がってると思うが…」
その郁人の発言に対して、コクコクと頷くゆるふわ宏美だが、にこやかに梨緒に睨まれて、恐怖で固まるゆるふわ宏美なのである。
「仕方ないなぁ…ごめんねぇ…少し、宏美ちゃんの腕捕まえておいてねぇ」
そう、三人娘の一人に言って、ゆるふわ宏美を拘束するのを任せて、梨緒は郁人に近づくのである。そして、郁人の目の前まで来ると、耳元で梨緒は囁くのである。
「郁人君…夜桜さん一人だと可哀想だよねぇ…私達は、宏美ちゃんと夜桜さんが仲良くできるようにしようとしているだけだよぉ…ねぇ…私に任せてくれないかなぁ…夜桜さんのためにも」
梨緒はそう言って、ニッコリ清楚笑みを浮かべるのである。郁人は、その笑みが悪魔の微笑みに見えたが、確かに美月の事も心配な郁人なのである。ゆるふわ宏美とでも、学校で話せれば、美月にとっては良いことだと思う郁人は、必死に助けを求めるゆるふわ宏美を一瞬見て、梨緒に対してこう言うのである。
「まぁ…とりあえず、梨緒達に任せた…ゆるふわ…頑張ってくれ」
「郁人さまぁ~!!!」
郁人に見捨てられて、絶叫するゆるふわ宏美なのである。そして、親愛なる郁人様に任せられて滅茶苦茶張り切る郁人様ファンクラブ幹部メンバーなのであった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます