第102話ギャルゲの主人公と乙女ゲーのヒロインは、勉強が得意なのである。その3

 時間は少し遡り、本日の放課後のお話です。郁人様ファンクラブ部室にて、奥の席に座り、意味深に両手で口元を隠して、さも、ラスボス雰囲気を醸し出すゆるふわ会長の宏美を、梨緒含めた郁人様ファンクラブ幹部メンバーが見ているのである。


「では、郁人様ファンクラブの定例会を開催したいと思います~」


 メンバーが揃ったことを確認して、秘密結社よろしくの会議を始めるゆるふわ会長の宏美は、少しドヤ顔なのである。


「会長…会長にお話ししたいことがありまして…」

「はい~なんですか~?」


 そう話を切り出すのは、1組クラス委員長の三つ編み眼鏡女子なのである。彼女は、実質的な郁人様ファンクラブのナンバー2なのである。みんなからは、副会長と言われているのである。


「この間の件を含めて、生徒会からの注意喚起がなされ、活動内容の説明を求められております」

「生徒会がですか~? そうですか~…まぁ、わたしぃから言わせると…どうせ、生徒会長の嫉妬ではないですかね~…放っておいていいんじゃないですか~?」

「はい!! 郁人様に対しての嫉妬ですよ!!」

「そうです!! 郁人様は尊いのですわ!!」

「一生推しますから、改善の余地はありません!!」


 ゆるふわ宏美は、この部を設立するにあたり、生徒会の会長とも面識があるのだが、正直、あまり好きではない宏美は、生徒会とは関わりたくない一心でそう発言するが、意外にも、郁人様親衛隊の三人組の同意を得られるのである。


「わかりました。この件は、私から、生徒会の方々に我々の活動内容の正当性を書面にてお伝えしておきます」

「はい~…よろしくお願いしますね~…ほかには何かありますかね~?」

「そうですね…会長…最近では、2、3年生の会員も増えてきて、我々1年がこの部取り仕切っていることに不満を覚える会員も増えています」

「……幹部に2、3年生を加えた方がいいという事ですかね~?」


 三つ編み副会長のクラス委員長は、眼鏡をクイっとしながら、ゆるふわ会長の宏美に現状報告をするのである。正直、幹部に上級生を入れたくはないゆるふわ宏美なのである。そもそも、あまり、組織を大きくしたくはないのが宏美の本心なのである。


「いえ……そこは、会長の判断に委ねます…あくまで、現状そう言った会員がいるという事実を述べたまでです」

「なるほどですね~…どうですかね~? 皆さんはどうした方がいいとか意見ありますかね~」


 ゆるふわ会長の宏美は、そう言って、周りを見回して、意味ありげに訊ねるのである。


「そうだねぇ…正直言うと…上級生を急に入れるのは反対かなぁ…管理がしにくくなるしねぇ」


 にっこり清楚笑みを浮かべて、恐ろしいことを言っている梨緒なのである。しかし、梨緒の意見にみんな賛成のようで、首を縦に振って同意するのである。


「…そ、そうですね~…わたしぃも同意見ですかね~」


 ゆるふわ会長の宏美も同意見だが、そうはっきり言う梨緒に対して、やはり、少し恐怖心を抱くのである。


「では、幹部メンバーはこのままという事でよろしいですかね? 会長」

「はい~…このままのメンバーでファンクラブの運営を継続していきたいと思います~」

「わかりました…では、会員達には今後も、我々が運営を行う旨を公表し、納得していただくとします」

「はい~…他には~…何かありますかね~?」


 そう言う宏美に、無言で答えるメンバーに、ゆるふわ会長の宏美は、納得して、締めに入るのである。


「では~…本日の定例会はこれで終了としますね~」

「あ…うん…そうだねぇ…じゃあ、これで、終わりだねぇ…じゃあ、宏美ちゃんは帰っていいからねぇ」


 そう梨緒がにこやかに、席を立ちあがるゆるふわ会長の宏美に言うと、素早く、副会長のクラス委員長が宏美の後ろに回り込むのである。困惑するゆるふわ会長の宏美を、幹部メンバーはにこやかに見守るのである。


「では、会長…また、次回の定例会でお会いしましょう…お疲れ様です」

『『お疲れ様です!! 会長!』』

「お疲れ様…宏美ちゃん」


 ゆるふわ宏美は、背中を副会長のクラス委員長に押されて部室から追い出されるのである。困惑するゆるふわ会長の宏美なのである。


「え? え? わ、わたしぃ会長ですよ~!! 何ですか~!! この扱いは~!」


 部室の外で騒ぐゆるふわ会長の宏美を完全無視して、副会長のクラス委員長は、扉を閉め鍵をかけるのである。


「では、梨緒さん……本日の本題をお願いします」


 梨緒は立ち上がると、ゆるふわ会長の宏美が座っていた場所に座り直すのである。


「宏美ちゃんの件なんだけどねぇ…やはり、早く夜桜さんとくっつけた方がいいと思うんだよねぇ」

「なるほど…会長の恋を応援しようというわけですね…それに、郁人様から、会長を引きはがせる上に、脅威となるY氏まで排除できる完璧なプラント言う訳ですね…さすがは梨緒さん」


 悪い笑みを浮かべる梨緒に、眼鏡をクイっと悪い笑みで返す副会長のクラス委員長なのでる。


「ええ…現状は宏美ちゃんも脅威だからねぇ…郁人君を守らないとねぇ」

「はい!! 郁人様は私達がお守りします!!」

「尊い郁人様をお守りしますわ!!」

「一生推すために郁人様を守ります!!」


 梨緒の発言に同意して、完全にやる気を出す郁人様親衛隊なのである。それを見て、頷く副会長のクラス委員長なのである。


「では、会長の恋を応援するためのプランを考えなくてはなりませんね」

「ええ…私にいい考えがあるんだよねぇ」


 そう邪悪な笑みを浮かべる梨緒のある案に、幹部メンバー全員悪い笑みを浮かべるのであった。


 そして、仲間外れにされたゆるふわ会長の宏美は、裏で秘密裏に変な計画が進行中などつゆ知らず、一人トボトボと寂しく帰宅するのであった。

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