第101話ギャルゲの主人公と乙女ゲーのヒロインは、勉強が得意なのである。その2
しばらく、待っていると、玄関から、ただいまと美月の母の美里の声が聞こえてくるのである。
「あら…郁人君…どうかしたのかしら?」
「美里さん…お邪魔してます」
郁人は、美月と美悠に挟まれて、ソファに座っていたところ、美里が帰ってきたことに気がついて、立ち上がり挨拶するのである。
「おかえり、お母さん…あ、あのね…い、郁人がね…お、お母さんにお願いがあるんだって」
郁人の隣にピッタリくっつく美月は、そうモジモジさせながら、母の美里にそう言うと、怪訝な表情を浮かべる美里と、ジト目で、ソファに座りながら、姉の美月を見ている美悠なのである。
「えっと…土日の事なんですけど……美月ウチに泊めてもいいですかね?」
郁人は、美月にせっつかれて、恐る恐る話を切り出すと、案の定美里は渋い顔をするのである。
「郁人君……この前も、郁人君家に美月ちゃん泊まったでしょ…それも内緒で」
そう言われて、気まずくなる郁人と美月なのである。しかし、ここで、引く訳にはいかない郁人は、再度交渉に臨むのである。
「あ…美月も、その息抜きが必要と言いますか…成り行きと言いますか…その…」
「…郁人」
美里さんの渋い顔にしどろもどろになる郁人の服を引っ張り、どうにか説得してと郁人に視線で訴える美月なのである。
「郁人君…確かに、美月ちゃんとのお付き合いは、私としては賛成なんだけどね…まだ、高校生なのに、女の子を毎日部屋に連れ込むのはどうかなって思うのだけど…その辺はどう思っているのかしら?」
腰に手を当てて、そう郁人に厳しく尋ねる美里なのである。さすがの郁人も気圧されるのである。
「い、いや…美月は幼馴染で…その、部屋で遊ぶのは普通の事と言いますか…」
「そうだよ…子供の時からの事を何で今更言うのよ」
そう反論する郁人と美月にため息をつく美里なのである。
「そうね…幼馴染ならね…でも、二人はもう恋人同士でしょ…やっぱり、親としては心配なわけ…郁人君は真面目だから、信頼はしているけど…お泊りとなると話は変わるわね」
そう言われると、何も言えなくなる郁人と美月なのである。ちなみに、郁人と美月は、きちんと、後で、家に泊めたこと、泊まったことを両親に報告したから、両両親ともに、郁人の家に美月が泊まったことを知っているのであるが、美悠は、雅人を泊めたことは秘密にしているのである。
そのため、美悠は物凄く気まずそうにしているのであった。
「そこを…なんとかお願いできないですかね…美月も学校で色々あって…」
「い、郁人」
郁人がそうお願いすると、美月は郁人が自分の事を気にかけてくれているんだと嬉しくなり、はにかむ美月なのである。
「どうせ、いつも一緒に居るんだから…諦めなさい…いいわね。美月ちゃん、郁人君」
美里は厳しくそう言い放つのである。これ以上は無理だと判断した郁人は諦めかけるが。美里がここである提案をするのである。
「そうそう、郁人君にちょうどお願いがあったのよね…美悠ちゃんの事なんだけどね」
そう話を変えられて不満な美月は郁人を肘で突っ突くのである。困り果てる郁人は頭を掻くのである。
「美悠ちゃんの勉強を見てあげて欲しいのよ…美悠ちゃんも、時ノ瀬高校に行きたいらしくて…正直、美悠の学力だと厳しいと思うのだけどね…美悠ちゃん、郁人君に勉強教えてもらいたいらしくて…お願いできないかしら」
そう美里は郁人にお願いするのである。美月は、すぐに妹の美悠の方を見ると、美悠は、勝ち誇ったような表情を浮かべているのである。
「ちょっと、待って…美悠の勉強なら、私が、郁人の家から帰ってきてから教えてあげるから…それでいいでしょ」
「そうね…でも、郁人君の方が美悠ちゃんも、緊張感があっていいと思うのよね」
「でも、俺より、美月の方が勉強できますよ」
郁人と美月は、乗り気ではないのである。正直これ以上一緒に居る時間を削られたくない二人なのである。
「そうね…じゃあ、とりあえず、お試しに、土日美悠ちゃんも郁人君のおうちに泊めてあげて、そして、勉強を見てあげてくれないかしら…それなら、美月ちゃんもお泊りしてもいいわよ」
そう言って、美悠も一緒なら、美月も郁人の家に泊まってもいいという話になるのである。悩む郁人だが、美月はすぐに納得するのである。
「それでいいよ…美悠は私と、郁人が勉強見てあげるから…任せてよね」
「お…おい…美月」
すぐに了承の返事をする美月なのである。美月は、郁人の家に泊まって、土日ずっと一緒に居たいので、美悠がついてきたとしても、結局郁人と居られるなら、それでいいのであった。しかし、不安な郁人は美月を止めに入ろうとするのである。
「少し考えた方がよくないか…美悠ちゃんの勉強もきちんと教えられるかわからないだろ?」
「郁人と私なら、大丈夫だよ」
そうはっきり言い放つ美月に不安ながら、了承する郁人なのである。
「わかりました…土日、美悠ちゃんも一緒ですね…勉強をきちんと教えれるかわかりませんが、頑張ってみますね」
そう言う郁人に、満足気な美里なのである。ソファに居る美悠は、嬉しそうに内心ガッツポーズをするのである。
「じゃあ、美月ちゃんと美悠ちゃんをよろしくね…郁人君」
「あ…はい…あ…でも、とりあえず、うちの両親にも言わないといけないですけど」
「あ…その辺は大丈夫よ…もうお話はしてあるのよ」
美里のその発言に、疑問の声をあげる郁人と美月なのである。そう、このお勉強会は、二人の両親の間では、もう話がついているらしいのである。そのことに少し不安を覚える郁人なのであった。
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