第44話番外編 妹キャラから見るギャルゲの主人公と乙女ゲーヒロイン その2

 悲報、姉の美月は、食べ物、飲み物のシェアは無理と言いながら、幼馴染とはシェエできる事件から、数日後の話である。


 美悠は、姉の美月と、その幼馴染の郁人と、その弟の雅人と夜ご飯を食べに、ファミレスに来ていた。席は、郁人と美月が隣同士で、向かい合って、郁人の前が雅人で、美月の前に美悠だった。


 内心は、郁人の前の席が良かったが、そんなことになっては、緊張でご飯が食べられない美悠なのである。


「まさか、美月達も、今日の夕飯は外食だったなんてな…珍しいな」

「うん…お母さん達が、夜に用事で飲み会らしくて、折角だから、私達も外食したらって、お金くれたんだよね…郁人こそ…外食なんて珍しいよね?」

「俺達も似たような理由だ…ほんと奇遇だな…あ…美悠ちゃん…俺と雅人も一緒で本当に良かったのか?」


 郁人は、姉の美月に誘われて、一緒に夜ファミレスに来ることを決めたため、気を遣って、美悠に確認を取るのだった。


「べ、別に…いいけど…そ、それに…こ、断ると…お、お姉ちゃんが怒るし」

「な…何言ってるのよ! 美悠!?」


 照れて顔を伏せて、美悠はそう言うのである。美悠の照れ隠しに巻き込まれた美月も、真っ赤になって、美悠に怒りの声をあげるのであった。そんな、美月に郁人は、ニッコリ笑うのであった。美月は、真っ赤に照れて、顔を伏せるのである。


「…あ…雅人君も…よかったのかな? 急に誘ってごめんね…ほ、ほら久しぶりに4人で集まりたかっただけだよ…うん…全く…郁人だって、乗り気だったのに…なんで私だけ、ノリノリみたいな感じになるのよ」


 美月は、そう雅人に尋ねるのである。しかし、後半の方は、小声で郁人に対しての文句であった。


「だ、大丈夫だって…それに…逆らうと…兄貴怖いからさ」

「…俺が怖い? なんか、雅人に怖いことなんかしたか?」


 郁人は、雅人をジロリと睨むと、雅人は、恐怖に体を震わせるのだった。そんな雅人を、情けないとジト目で見る美悠である。


「郁人…あんまり、雅人君の事、イジメちゃだめだよ」

「いや、イジメたこと何てないんだがな…よし、わかった…雅人…帰ったら、俺のどこが怖いのか…話し合おうか」


 美月の擁護のせいで、さらに状況が悪くなる雅人である。照れ隠しのつもりで言った何気ない発言から、大変なことになった雅人であった。美悠は、にやりと雅人に、憐れみの表情を浮かべるのだった。


「てめぇ…美悠…後で覚えてろよな」

「雅人ざまぁ…いい気味」


 バチバチに喧嘩モードの美悠と雅人である。そもそも、美悠も、雅人も自分たちが隣同士で座ってることに納得いってない二人なのである。この二人、実は仲が悪いのである。


「二人とも、相変わらず仲良しだね…うん、良いことだよ」

「そうだな…ていうか…そろそろ、メニュー見て注文決めないか?」


 美月も郁人も、美悠と雅人は仲がいいと勘違いしているのである。微笑む二人は、二枚あるメニューの一枚を美悠と雅人に渡して、自分達は、一枚のメニュー表を仲良く見だすのである。


「私が先に見るから…あんた後ね」

「はぁ~…俺が先に見る…お前が後だ」


 差し出されたメニュー表を同時に受け取った美悠と雅人は、メニュー表を放さない。バチバチと睨み合う二人である。


「やっぱり、ハンバーグかな」

「うん…そうだね…郁人ハンバーグ好きだよね」

「それは、美月もだろ?」

「まぁ…そうだけどね…こんなに種類あると悩むね」

「そうだな…チーズもいいが和風も捨てがたい」

「普通のハンバーグもいいし、あ…中にチーズ入ってるよ…和風も数種類あるよ…おろしポン酢だって」

「悩むな」

「そうだね」


 美悠と雅人が、激しいメニューの争奪バトルを繰り広げている中、仲良くピッタリくっついて、顔を寄せて、食い入るようにメニュー表を見て、真剣に悩む美月と郁人である。二人は、ハンバーグのページしか見ていなかった。


 そして、しばらく悩む二人と、激しいバトルを繰り広げて、結局先に、美月と郁人が決めて、その後、二人のメニュー表が来たことで、やっと、メニューを選び出す美悠と雅人だった。


 注文を終えて、しばらくすると、注文した食べ物が運ばれてくる。美月は、結局、和風のおろしハンバーグを頼み、郁人は、チーズハンバーグを頼んだのである。美悠と雅人は、郁人と美月が先に注文を決めて、待っていたため、焦って注文を決めたサイコロペッパーステーキである。


 同じモノを頼んだ美悠と雅人は、激しく睨み合っていた。そんな二人を、同じモノ頼むなんて仲がいいなとほほ笑む美月と郁人なのである。


 4人が注文したものがそろって、いただきますと食べだすのであった。美味しそうに食べる姉の美月を見て、美悠も和風ハンバーグが食べたくなる。


「お姉ちゃん…サイコロステーキ一つ上げるから、ハンバーグ一口頂戴」

「お…いいな…兄貴…俺達も交換しないか?」


 雅人も、美悠に便乗する。この二人は、食べ物はシュアする考えなのである。仲が悪い美悠と雅人だが、食べ物はたまにシェアすることがあるほどである。今回はお互い同じものを頼んでしまったので、シェアできない二人なのであった。


 しかし、その提案に、露骨に嫌な表情を浮かべる美月と郁人である。


「雅人…お前…俺が、食べ物シュアするの嫌いだって、知ってるだろ?」

「美悠…私言ったよね…食べ物のシュアは、家族でも無理だって…」


 その発言に衝撃を受ける美悠である。お兄ちゃん、食べ物のシュア無理なのと、この間のジュースシュア事件は何だったのと思う美悠である。


 雅人は、たく、相変わらずケチだな、兄貴と特に何も思わず、食い下がるのであったが、美悠はこの間の件を思い出して、ツッコミたい気分だった。


 そんな中、美月が郁人のチーズハンバーグをモノ欲しそうな目で見ている。その視線に気がついた郁人である。


「美月…食べたいのか?」

「え…そ、そんなことないよ!!」


 美月は、両手をパタパタと振って、否定するのである。郁人はにっこり笑って、全くしかたないなと、一口サイズに切り分けたハンバーグを箸でつかむと美月の口元に持っていく。


「ほら、美月あ~ん」


 顔を真っ赤にして、あ~んして、郁人のハンバーグを食べる美月である。美月も慌てて、じゃあ、私のもあげると、一口サイズに切り分けたハンバーグを箸でつかむと、郁人の口元にもっていくのである。


「はい…郁人あ~んだよ」


 郁人も、パクリと、美月から差し出された一口サイズのハンバーグを食べる。


「美味いな」

「うん…美味しいね」


 美月と郁人は、お互い笑い合うのである。その光景を、驚愕の表情を浮かべて見つめる美悠と雅人であった。


「あ…兄貴…食べ物のシェエ無理って…いつも言ってたよな!?」

「…なんだ? 急に…ああ…家族はもちろん…たぶん、恋人同士でも無理だぞ…食べ物シュアだけは…マジで無理だ」

「わかるよ…郁人…無理だよね…私も、家族も勿論、恋人同士でも無理だよ」


 郁人の発言に力強く同調する美月である。わかる、わかるよと強くうなずいている美月である。そんな二人に開いた口がふさがらない美悠と雅人である。


「え…でも、お姉ちゃんと、お、お兄ちゃん…今、シェアしてよね…しかも…あ、あ~んって…それに、この間も、ペットボトル…飲みまわししてたでしょ!?」


 それでも、何とか食いつく美悠である。雅人は、いや、攻めすぎだ美悠と不安な表情である。


『え?』


 声をハモらせて、疑問顔を浮かべる美月と郁人である。二人して首を傾げている。そんな、美月と郁人に、いやいやとツッコミをいれたくなる美悠と雅人である。


「あ…兄貴…家族や恋人同士でも…食べ物や飲み物シェアはしないって、言ってたじゃねーか」

「そうだな」

「いや…だから…今…シェアしたよな…姉貴と…」


 雅人が、郁人にはっきりそう言うと、やはり疑問顔な郁人である。郁人は美月の方を見ると、美月も郁人の方を見て、小首を傾げるのである。


「え…何で…お姉ちゃんも、お、お兄ちゃんも疑問顔なの!?」

「え…何でって…逆に…美悠は何がそんなに疑問なのよ?」


 逆に美月に尋ねられる美悠である。美悠と雅人は、開いた口がふさがらない。


「俺も、美月が、食べ物や飲み物のシェア無理なの知ってるぞ」

「うん…私も郁人がそうなの知ってるよ…そんなことで、今更驚いてるの? 二人とも?」


 いやいやと心の中で、猛ツッコミな美悠と雅人である。


「いや…だから…何で、知ってるのに兄貴達、食べ物シュアしたのかって話で…」

「そう、そういう話!!」


 美悠と雅人は、ここで食い下がればダメージも軽く済むのに、さらに食いついてしまったのである。美月と郁人は、お互い見つめ合う。


「え…いや…だって、美月だし」

「うん…郁人だしね」


 この二人何言ってるんだろうという表情をする美月と郁人である。そんな二人に、ショックで固まる美悠と雅人である。そんな、二人に、疑問を浮かべて、食事を再開して、食べ終わった後に、食後のデザートを頼もうという話になった郁人と美月である。


「この二つで迷うね」

「そうだな…じゃあ、俺がこっち、注文するから、美月はこっち注文すればいいだろ?」

「そうだね…わければいいよね」


 そうにこやかに言って、デザートの注文をする二人に、もはや、ツッコム気力すら失せた美悠と雅人であった。

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