第3話乙女ゲーのヒロインは、やはりモテるのである。

 幼馴染の郁人と,同じクラスになれなかったことに美月は絶望していた。美月は、別の教室へと向かう郁人の背中を名残惜しそうに見つめていた。彼が見えなくなると、ため息をつき仕方なく教室に入ることにした美月だが、突如男子生徒に囲まれる事態が発生してしまう。


 そして、どこの中学出身? 彼氏いるの? 俺と付き合ってください! など、男子生徒から質問&告白タイムが発生してしまった。美月は一瞬思考停止してしまったが、過去を思い出すと、自分はよく男子に揶揄われていたことを思い出す。小学校の時から、男子生徒には嫌がらせを受けていた。


 まさか、高校でも、嫌がらせを受けるとは思ってなかった美月だが、こうなってしまっては仕方ない。


「あ……あの、すみません。席に座りたいから道をあけてください」


 きつい言葉で言いたいところ、美月は初対面の印象を悪くするわけにはいかないと優しく言うが、男子共には通じない。それどころか、声も超可愛い。と美月的には意味不明なこと言われる。


 内心いらいらする美月に対して、一人の男子生徒が、道をあけろと説得してくれた。美月はこれでやっと席につけると黒板に書かれている席に向かう。美月の席は、窓際後ろの席だった。そこに座ると、なぜか男子生徒の列ができていた。


「あの、これは・・・・・・どういうことですか?」


「どうって、とりあえず、みんなに囲まれて話されるよりは、一人ずつの方がいいでしょ?」


「はぁ?」


 呆気にとられる美月を前に一人会話十秒だぞ、と仕切り出す男子生徒だった。不満がほかの生徒から出るが、この男子生徒は、強面なイケメンな上にガタイがいいため、反論を許さない強さがあった。


「あ、とりあえず、僕の名前は、永田 浩二って言うから、よろしく」


「えっと、夜桜 美月です」


「美月ちゃんね。うん。まぁ、とりあえず、僕が君のファンクラブ会長やるから任せてくれな」


「は?」


 今度は素の声が出てしまう美月に、ニコニコ顔でそう言い放つ浩二だった。そして、男子生徒を一列に並ばせる。浩二はストップウォッチをどこからか取り出していた。美月は訳がわからずにいると、女生徒達からの嫉妬と怒りの声が上がっていることに気づく。


(ちょ、よくわかんないけど、やめてよね。私このままじゃ、またぼっち確定じゃない! 何なのよ、いじめなの? どうして、私いじめられるてるのよ)


「担任の先生来るまでだかんな。美月ちゃんとお話し会一人十秒だかんな」


 美月の心の絶叫など、周りに聞こえるはずもなく、浩二はスムーズに事を運ぶ。そして、一人目が美月の前に立ち頭を下げ、両手を美月に差し出す。


「俺と付き合ってください!!」


「え? は? えっと、ご、ごめんなさい」


 よくわからないまま、告白される美月は、よくわからないままに断る。なにこれ? どういう状況と美月は混乱状態である。次々と美月に告白してくる男子生徒たち。


「一目惚れです。付き合ってください!!」


「ごめんさない」


「お願いします!! 付き合ってください!!」


「ごめんなさい」


「君にふさわしい男は俺しかいない。付き合ってくれ」


「ごめんなさい」


 美月は最初こそ戸惑って、言葉を詰まらせていたが、今は完全にごめんなさいBOTと化していた。次から次に告白の言葉にたいして、ごめんなさいと返す美月に、女生徒たちは更に嫉妬と怒りの視線を美月に向ける。


(私がなにしたっていうのよ!! 絶対いじめでしょ!!)


 美月は思った。公開処刑でしょと、もはや、美月の表情は完全に死んでいた。そんな中、一人のイケメンが美月の前に立った。茶髪のマッシュウルフヘアで髪型を決めているイケメンは、高身長でスタイル抜群であった。さわやかイケメンスマイルを美月に放つ。


「久しぶりだね。元気にしていたか? 美月」


「ごめんなさい」


 そう、さわやか挨拶をしてきたイケメンに、ごめんなさいBOTと化していた美月は無表情でそう言い放った。そんな美月の言葉を受けても、イケメンスマイルを浮かべている。


「時間みたいだね。じゃあ、また後で話そう美月」


「ごめんなさい」


 とりあえず、美月はそんなイケメンにごめんなさいと返すのであった。そして、担任らしきスーツを着た男性が教室に入ってきたことにより、浩二が男子生徒たちを解散させる。美月はやっと終わったと安堵した。そして、BOTモードを解除した美月にある疑問が浮かんだ。


(さっきの人・・・・・・誰だっけ? まぁ、どうでもいいか、はぁ、早く郁人に会いたいな)


 美月は窓の外を眺めながら、大好きな幼馴染のことを思うのであった。


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