先輩

私は高校を卒業後に


東京の会社に就職した


そこにはとても厳しい男性の先輩がいて


いつも誰かが怒られていた


ただ怖いだけの印象が強い人だった



時が経ちホームシックにかかった頃


仕事で失敗をしてしまい上司に怒鳴られ


心が折れてしまった私は一人で涙を堪えていた


「地元に帰りたい…」


するとそこへ怖い先輩がゆっくりと


近付いて来るのがわかった


「きっとこの人にも怒られるんだ…」


しかし先輩は私の後ろに立ち止まると


肩を軽くポンポン!


と叩いて


そのまま立ち去ってしまった


予想外の事に少し驚いたが


すぐに私の目からは大量の涙が溢れ出した


それは上京して初めて人から貰った優しさだった


しばらくして会社は倒産してしまい


先輩にも会えなくなったけど


大切な思い出



もう一つ


東京出身の同期に聞いた話


その子は東京出身だったのだが寮住まいで


地元へ帰るた度に親や友達と遊んで来た話をして


ホームシックにかかってた私には辛かった


ある日怖い先輩がその子を呼び出し


「ラクマの前で地元に帰った話をすんな


あいつは帰りたくても帰れないんだから!」


もし会社が倒産する前に話を聞いてたら


先輩の後を追いかけたのにね



いつか私も先輩のように


厳しさと優しさを


兼ね備えた人間になろうと心に誓った

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