第4話

 私は走って自分の部屋に向かい、バタン!!と大きな音を立てて扉を閉めた。いつもならリーシャの見本になるようにどんなに急いでいても早歩き程度、扉を音を立てて閉めるなんて絶対しないように心がけている私だけど、正直今はそれを気にしてる余裕が私にはなかった。部屋に入った私は真っ先に姿見で自分の姿を確認する。


「……やっぱり……私も11歳の時の姿よね……」


もしかしたら、自分だけが17歳の姿に?とも考えたけど、まぁ、やっぱりそれはなかった。身長は当然ながら小さくなっているし、結構豊かにあった胸も年相応のサイズだし、腰まであった髪の毛は今は肩までぐらいしかない。変わってないとしたら、吊り上がったこの目ぐらいか……改めて見てもやっぱり人を睨んでるしか見えないのが悲しくなる……。ともかく、リーシャが10歳時の姿になったなら、私も11歳時の姿に戻ってしまったようだ。


「……一応他も確かめてみましょうか……」


 私はまず自分の服がしまってある棚を開けた。仮にも侯爵家の人間である私の洋服棚には沢山のドレスがしまわれていたが……


「……どれもこれも11歳当時に着ていたものばかりね……17歳に着てたドレスは当然ないし、王立魔法学院の制服もないわね……」


15歳になったら貴族・平民問わず魔力を得た者が通う学園がある。それが王立魔法学園というそのままの名前なのだけど、私達姉妹はその学園に在籍していたので、その時の制服は今ここにはなかった。まぁ、11歳の私は通ってないので当然かもしれないけど……


「……最後に確認するべきはやはりアレか……」


私は自分の机にある鍵付きの引き出しを見る。私はまずベッドの下に入り、ベッドの裏側に取り付けた鍵を手に取る。そして、その鍵を先程の机の引き出しの鍵穴に挿し込むと……


『この鍵を開けたくば合言葉を述べよ。私の妹は』


突然引き出しから私の声が聞こえてくる。が、これは私が魔法で作った開けさせない為の対策魔法だ。なので私は慌てる事なく合言葉を言った。


「世界で一番可愛い史上最強の天使」


私が合言葉を言うとガチャと音がして引き出しが開いた。私は早速引き出しの中を確認すると……


「……やっぱり……日記帳の数が減ってる……」


 私は趣味で日記をつけていた。と言っても、内容のほとんどはリーシャが可愛かったとか、あの時リーシャを叱りすぎたんじゃないかという反省ばかりなのだが……とりあえず、私は日記帳の中身を確認していくと……


「当然かもしれないけど……さっきあった出来事より前の記録しかないわね……」


 実は自分の死んだあの日と、先程の出来事よりも前の記憶しか私は覚えていなかったりする。が、日記帳だけは私の性格上毎日必ず付けていたはず。特にリーシャの事に関する事は毎日のように記録していた。それだけは絶対に間違いないと断言出来る。現に今ある日記帳がまさしくそんな感じであるのだから……


「もう……信じられないけど……間違いなさそうね……」


日記帳を確認して今更ながらようやく私は確信するに至った。



 私は死んだと思ったら、何故か11歳の先程の出来事の日まで時間が巻き戻ったという事実に……

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