第3話
これはまだ夢なんだろうか?
私の頭にそんな考えがよぎった。そう考えても仕方ないと思う。だって、私は17歳で死んでその当時だとリーシャは確か16歳だったはずだ。目が覚めたら10歳のリーシャがいるんだらから夢だとしか思えない。
これはアレかな?一応神様が私を天国に連れて来てくれて、妹を守ったご褒美をくれたのかしら?いや、でもそれにしては変よね……その前には妹にキツくあたっていたんだからご褒美なんていただけるはずが……
「あの……?お姉様……?」
いくら声をかけても無反応でリーシャを見つめている私に不思議そうに首を傾げるリーシャが今日も可愛らしい……って、それは今は長くなりそうだから置いておきましょう。
けど……うん……どっからどう見ても……このリーシャは10歳の時のリーシャよね……リーシャを可愛がってやれない分、遠くからリーシャをずっと見守ってきた私の観察眼が間違えるはずがない。という事は……やっぱりこのリーシャは天国の神様からのご褒美?
「……お姉様!大丈夫ですか!?しっかりしてください!!」
いつまでも無反応な私に焦って大きな声で私を呼びかけるリーシャに私はハッと我に返る。いけないいけない……いつまでも可愛いから見つめていたいけど、そういう訳にもいかないわね……色々確かめないと……
「えぇ……大丈夫よ。その……リーシャ。ちょっと聞いていいかしら?」
「えっ?あっ、はい。もちろんです。お姉様」
「その……何故か頭が痛いせいか混乱していて……どういう状況なのかよく分からないのだけど……」
こんな馬鹿な質問をしてる自覚はあるが、実際問題今更になって頭がズキズキと痛んでいるし、状況確認は必要だと思いリーシャにそう尋ねた。リーシャは私の不審そうな顔をせず、むしろ悲しそうな表情をし
「その……ごめんなさい!!お姉様!!お姉様のその頭の痛みは私のせいなんです!!」
リーシャが何故か私に謝罪した後事の経緯を説明してくれた。
リーシャは我が家の庭で駆け回るのが大好きだった。うん。それはなんとなく覚えてる。リーシャが庭を走り回っている姿はまるで無邪気な天使が地上に舞い降りて遊んでいるようで……っと……話が逸れたわね。
普段なら使用人かお父様かお母様がリーシャに付き合ってあげて、私は遠くからリーシャを視姦……じゃないわ……監視していたのだけど、たまたまその日はお父様もお母様も王様に呼び出され、王城に向かっていて、使用人の何人かもそれに付き添って行ったので、リーシャを見ててあげるのが私しかいなかったのだ。
それで、リーシャと一緒に庭まで来たのだけど、リーシャが走り回っていたらつまづいて転びそうになったのを、私がすぐに察知してリーシャの下敷きになったという事だ。
(そう言えば……リーシャが10歳の時にそんな事があったような……)
リーシャの話を聞いて私はふとその当時の記憶が蘇る。確かに、あれはリーシャが10歳で私が11歳の時の話だ。お父様やお母様、使用人達が出払っていて私しかリーシャを見ててあげる者がおらず、私は口では「仕方ないわね……」と溜息をつきながらも、内心は小躍りしながらリーシャと一緒に庭に出たのだ。
で、しばらくリーシャが庭で戯れる姿を間近でじっくり観賞していたら、リーシャが転びそうになったから、こんな天使のような可愛い妹に傷をつけさせてなるものかとすぐにリーシャを助けに行ったんだったわね……
(で……その後……めっちゃくちゃ私が厳しく怒ったせいでリーシャは庭で遊ぶのをやめてしまったのよね……あれは本当に私もかなり反省したわ……もっと言い方があっただろうに……)
その当時の事を思い返して思わず遠い目になる私。けど、ふとある事に思い至り、これは確認が必要だと思いスッと立ち上がる。
「えっ……?あの……お姉様……?」
もしかしたら叱られるんじゃないかと若干怯えた表情をするリーシャに、私は若干へこむが、とにかく今は急いで確認に行かないと行けない。
「ごめんなさい。やっぱり体調がよくないみたいだから部屋に戻って休むわ」
「えっ!?お姉様!?大丈夫なんですか!!?」
「えぇ。大丈夫よ。これぐらい一晩寝ればすぐに回復するわ。ただ、ゆっくり休みたいから人が来ないよう皆に貴方から伝えてもらえるかしら?」
「あっ……はい!分かりました……」
口をポカンと開けて呆然とするリーシャは可愛らしくずっと見ていていたいけれど、とにかく急いで確認しなければいけないと思い、私は走って自分の部屋まで向かった。
「お姉様が……走ってる……」
リーシャがポツリとそう呟いた声は私の耳に微かに届いた。
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