ひとりごと 象とネズミとのろま

 寿命の長い動物と短い動物では鼓動の早さが違っていて、実際その動物が体感する一生の時間はそんなに変わらないのだと、何かの本で読んだことがある。そんなのはただの例え話だとか、鼓動と体感時間には関係がないのだとか、そういう話も聞いたことがある。私はといえば、もし自分が寿命の長い動物だったとしても、なにもうれしくないなと考えていた。

 だって、寿命の短い動物ったら、せかせかと素早く動き回り、自分よりいろんなことをこなし、すぐに一人前になるのだ。そうなってしまうともう一生の長さなんて関係ない。そのうちには自分だって、ゆっくりだけど大人になることが分かってはいる。けれどもその差はどんどん大きくなっていくのではないだろうか?立って歩けるようになるまでの時間、自転車に乗れるようになるまでの時間、九九ができるようになるまでの時間、逆上がりができるようになるまでの時間、大人になるまでの時間。最初は少しの差でも、大きくなるほど『私だけができない』時間が長くなっていく。

 もしそうなら、私の一生は、たとえどれだけ長くても、ずっとのろまの一生だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る