第93話 ゼン教官の従魔教室☆



 ※



「まず、従魔を得て、単純に戦力が増えた、と考えての戦闘は危険です。


 特に、ソロはしない方がいいでしょう。パーティーの仲間と一緒の戦闘で、メインではなく補助的な立場での戦闘が、従魔がベストの力を発揮する立ち位置の筈です」


 ゼンは、最初の講義室で4人の被験者達に、従魔を使っての魔物討伐の戦闘に対しての知識、考え方、意識や心構え、等の講義をしていた。


 そして最後の3日間に、実際の戦闘実習、となる流れだ。


 4人はそれぞれ自分の従魔を横に出してある。鷲に豹にハーピィ妖鳥に狼。なんとも混沌(カオス)な空間だ。後ろの席には学者や研究者が同席し、それぞれノート片手に熱心な聴衆となっている。ハルアもその一人だ。


 その一番後ろでは、従魔研主任のニルヴァーシュが、助手のエリンと並んで座り、さも面白そうにゼンの授業風景を見学している。


 フォルゲンが手を上げ、疑問を出す。


「それは、従魔の特性をかんがみて、とかじゃないんですか、し……教官」


 ゼンに睨まれ、師匠と言えないフォルゲンだった。


「そうです。戦闘や攻撃特化ならメイン、とかではなく、サブの立ち位置がいい。これは全ての従魔に共通して言える事です」


「それは何故ですか?」


 意外と積極的に意見を出すハーフ・エルフのカーチャ。もっと様子見している事の多い娘だった筈なのだが。


 ゼンは頷き例題を出す。


「簡単な算数の問題として、例を上げます、戦闘力を10とする冒険者がいて従魔を1体連れています。従魔は主人よりも少し劣る力になるのですが、ここでは同じ10と考えます。戦闘力20の戦力。


 これで、同じ戦闘力10の魔物と戦えば、2対1、2倍の戦力差で楽勝出来るでしょう。


 しかし、これは従魔と主人の連携がしっかりしている場合で、もしそうではなく各個撃破、その魔物が頭が良く、1対1の状況に持ち込んで、従魔を倒した、とします。


 その場合、残る戦力は?」


 と疑問を呈してフォルゲンを指す。


「え、そりゃあ、冒険者が残って10でしょ。いくらなんでもそんな簡単な算数、間違えませんよ」


 単純なフォルゲンは、ゼンが予想した通りに不正解を答えてくれる。


「そうだな。単純な算数『だけ』ならそうだ。リンゴ20個から10引けば、残るは10個だ。でも従魔と一緒の戦闘は、そうはならない。致命傷を受けて行動不能な従魔は、主人の中に戻る。その場合、従魔のダメージが主人にいく事は、話してある筈だ」


「あ……」


 やっちまった、な顔をするフォルゲン。他の3人は横を向いて知らぬふり、だ。従魔も並んで同じ行動をしているのが面白くも興味深い。


「この場合、主人の冒険者は、精神的にかなりのダメージを受ける。これは、簡単に数値で置き換えるのは難しい。従魔の大きさや種類にもよるからな。それでも、主人の戦闘力は半減以下になる事だけは間違いない。


 冒険者5に対し、魔物は10……従魔との戦闘で怪我をしていたとしても、8か7か、どちらにしろ、魔物の方が優勢になってしまう。


 こうなるぐらいなら、最初から従魔を中に入れ、スキルのみを使用する、とかにした方が、まだ勝率がいい。特にスキル特化な従魔なら、負ける危険性よりも、スキルの有効性を考慮した方がいいんだ」


「確かに、単純に戦力が増えた戦いにはならないのか……。まるで実感出来ていなかった」


 マークが腕を組み、一人つぶやく。その横で同意するように、ホワイト・ハーピィ純白妖鳥のピュアが、美しい鳴き声で鳴いている。


「一度そうなれば、それがどれ程危ない状況か分かりますが、そうなった場合の援護(フォロー)は絶対必須。だから、ソロではなく、パーティー推奨なんですよ」


 強い従魔を4体得て、2体を交代制の気楽なソロ活動、なんて考えは激甘お気楽な考えだったようだ。


 そういう未来を夢見ていたダーク・エルフのオルガは、ガッカリと肩を落として落胆する。黒鋼鷲(ブラックスティール・イーグル)のクロマルが、翼で主人の肩を慰めるようにそっと叩いている。


「また、戦闘においての、従魔の怪我は、仲間に治癒術の使い手がいれば治癒術で、いなければポ-ション回復薬などで人と同じに、こまめに回復させた方がいいです。


 それが何故かは分かりますか?」


 ゼンは積極的に手を上げるカーチャを指す。


「従魔は、主人に中に入れ、出せばどんな怪我でも回復しますが、その場合、実体化する為に、主人は大きく力を消耗します。それと比べたら、治癒術に使う力やポ-ション回復薬の方が、余程安上がり、消耗する力は少なくて済むから、だと思います」


「そうです。文句なく正解です」


 カーチャが頬を紅潮させ、嬉しそうに花のような笑顔をほころばせる。隣りで彼女の従魔、雪豹女王(スノー・パンサー・クィーン)のシラユキが、器用に前足で拍手している。


「戦闘中にこの再実体化、という行為は、その前に怪我をした従魔のダメージ分の消耗を考えれば、ほぼ自殺行為に近いものがあります。術や薬をケチらずに、使う方がいいです。


 つまり、従魔は結局のところ、死なせられないパーティーの仲間が一人増えた、と単純に考えるのが一番合理的だと思えます。


 従魔は主人が生きている限り死ぬことはなく、そこだけ聞くとまるで無敵のように考えてしまう人もいるかもしれませんが、そこは前もっての説明が必要でしょう。


 でも、従魔だけ守って、主人をないがしろにするのは本末転倒です。主人である冒険者が死ねば、その身に宿る従魔、全部が死にますので、出し惜しみや不使用で、そんな最悪な状況にもならない様にしなければいけません。


 いずれ従魔が広まり、当り前の世界になったら、そうした説明のいらない、知識や情報を共有された従魔の存在ありき、の世の中になると思われますが、今は貴方方が最先端の、他の人にはまったく未知の戦力を、詳しく説明し、理解してもらわなければ、従魔の為に貴方方が命を落とす危険性も大きいんです」


「……それは、従魔と一緒に使い潰されるかもしれない、と」


 オルガの恐る恐るの問いに、ゼンは非情に頷く。


「充分あり得ます。従魔が、奴隷の肉の壁のように扱われ、主人の負担も、後衛にまわせておけばそれでいいだろう、なんて安易な考えで現状は扱われかねません。


 と言っても、パーティー内でしっかりとした意思疎通の出来る、気心の知れたパーティーでなら、そんな事は決して起きないでしょう」


 ゼンはそう、脅した分のフォローを入れた。


 だがそれで、俺の所は大丈夫だな、と露骨に安堵したのはフォルゲンのみで、フェルズの冒険者である3人の顔色は優れなかった。


(やっぱり、か……)


 フェルズの上級冒険者の、迷宮(ダンジョン)での荒れた様子は、魔石採取の為に行った迷宮(ダンジョン)でその一端が垣間見れた。


 ギルマスが比較的まとも、として被験者に選ばれた冒険者ですらああなのだ。他は推して知るべし。とても、気心の知れた場所であろう、等と楽観出来なかった。


 彼等3人が、従魔を得た事でどうなるのか、そこまでは、ゼンの心配するべき事ではない。役割の範囲外になる。


 どうにか上手くやって欲しい、と祈るぐらいが関の山だ。


「……それでは今日はこれぐらいで、休憩時間にします」



 ※



 ―――ゼンの、今日の従魔研での役割は終わった。


 もうすぐ、小城の工事着工から2週間になる。完成間近だ。


 そうしたら、ゼンはゴウセルの屋敷から出て、西風旅団4人の仲間と、そしてザラと使用人として雇うスラムの子供達との共同生活になるのだが、それ自体は嬉しいが、そうなるともうサリサとの会話は避けがたいものとなる。


 嬉しい反面、とても困るという、奇妙な状況に頭が痛い。


 そして、小城の工事完成は、クラン(予定)勧誘が可能になる、という事でもある。


 すでに、いくつかのパーティーには、ギルドから今後の事での話がしたい、と随分曖昧な内容で話が通っている筈だ。


 出来れば、最初の勧誘で決まって欲しい。


 2次、3次の候補も考えてはあるのだが、断られない方がいいに決まっているし、四大精霊王の加護の杖を持つ6人の魔術師の存在。


 それが運命なのか、偶然なのかは知らないが、サリサの存在を知る彼女等は、クラン(予定)加入の後押しになるのでは、とゼンは勝手に考えている。


 どちらにしろ、そのパーティーのリーダーとの話し合いで、今後の成り行きも、少しは見えて来るだろう。


 ゼンが帰り支度をして、そうした先の話を考えていると、ノックの音がする。


 その中途半端に小さな部屋は、本来単なる物置的な部屋だったのだが、荷物を何も運び込んでいなかったので、その部屋はゼンに割り当てられ、教官室と呼ばれるようになっていた。


 と言っても、ゼンは従魔研では常に忙しく何かしているので、この部屋は行きと帰りに荷物を置くぐらいで、昼食を取る時も呼ばれて研究者や被験者達と取る事が多いので、実質的にはほとんど使われていなかった。


「はーい」


 付き添っていたザラが、ノックに反応してドアを開けると、フォルゲンを除いた、フェルズの冒険者3人の被験者が、少し暗い面持ちで立っていた。


(もしかして、脅しが効き過ぎたのだろうか?)


 ゼンは昼間の講義の事を考え、そう推察する。


 この部屋は、ゼン用の小型のデスクと椅子、そして補佐のザラ用の椅子以外は座れるようなものはない。


「もし、話が長くなるようなら、近くの部屋から折りたたみ式の椅子でも持って来てくれないか?」


 ゼンに言われ、それに気付いた3人は一旦部屋を出て、すぐに簡易的な折りたたみ椅子を持ってくる。こういうものは、研究棟には結構あるものだ。


 3人はそれに座ると、気まずそうにザラをチラチラ見ている。


「ザラ、これは従魔研の話、というよりも、冒険者よりの話みたいだ。悪いけど、先に治癒室の方に戻っていてくれないかな」


 ゼンの言葉に、ザラは、分かったわ、と察し良く笑顔で答え、3人に頭を下げると、そそくさと退室してくれた。


「で、まあなんとなく、予想は出来てるんですけど、何の話か聞かせてもらえませんか」


 ゼンの催促に、冒険者の中で一人男性のマークが話し出す。


「……昼間、講義で言われていたお話です。従魔を持つ冒険者が、使い潰されるかもしれない、と。あれは、どれぐらいの確率で起こると思われますか?」


「どれ位も何も、ほぼ確実に起きるんじゃないかと思っていますが」


 ゼンは事も無げに答える。


「か、確実って!」


 うめくように、マークは絶望的な声をあげる。


「だってそうじゃないですか。今まで、魔物使役術士(テイマー)がいたパーティーなど、フェルズにはないでしょう。従魔術の従魔はそれよりも更に、扱いの難しい、微妙とすら言える戦力です。


 なのに、主が無事なら死なない、と、その特性のみに注目して、盾役として囮として、便利に使い潰されない、とは到底思えません。


 でもそれは、従魔への理解が足りない極初期の話ですし、ちゃんと先に説明しておけば、起きない悲劇だとも思うのですが?」


 最後に疑問形で答えたゼンの問いに、三人が三人とも答えづらい顔をしている。


「……ギルドでも、従魔を得た後で、ギルドに冒険者が抗議して来るであろうケースを色々想定していますが、多分一番多いのは、従魔を得たのに、パーティー内で、今まで出なかった死傷者が出ただの何だの、というものです。


 でも、昼間講義で言ったように、パーティー内でしっかり意思疎通が出来ていて、従魔術の従魔の色々な特性、いい所もあり、悪い所もある、それをちゃんと伝えて理解されれば、それは防げる筈です」


 ゼンは繰り返す。


「それは、確かにそうなんですが……」


「今の、フェルズの上級冒険者では、それが不可能に近い、ですか?」


 ゼンは、言いにくそうにしている三人に痛い所をズバリと突く。


「フェルズの冒険者、特にランクが上の冒険者になればなる程に協調性に欠けて、変に自尊心(プライド)ばかりが高く、共同作業をしない。パーティー間の協力体制は皆無に近く、どこも自分達の自信にあふれてはいるが、実態は伴わない……、


 ギルドは以前から、フェルズの冒険者のこの傾向を是正しようとして来たそうです。


 この問題を重く見て、冒険者に、相互協力の重大性や、パーティー内での連携の大切さを徹底させるように、何度も呼びかけている、と聞きました。違いますか?」


「……違わないです。何度も耳にした事があります」


 別にマークを責めてしる訳ではないのだが、代表するように苦い顔をしてマークが答える。


「それなのに、まるでどこのパーティーも、耳を貸さず、自分達の意固地な考え、主旨にこだわり、ギルドの呼びかけは、まあ一般的には正しいかもしれないが、フェルズにまで来て『登り詰めた、自分達優秀な冒険者は他とは違う』、そんな意味不明、根拠薄弱な自信で、ギルドの呼びかけを無視して、我が道を行っている。


 それがフェルズの冒険者で、特に上級の冒険者ではそれが極まっている、と自分は聞いています」


 師匠のラザンですら不思議がっていた、フェルズの奇妙な歪み。


「その割に、強さは今一つ。『三強』のみが別格で、それに続こう、とする気概の持った冒険者はいない。今はその三人もいないのに……。


 なのに、自尊心だけは一人前以上。なんでこんな奇妙な事になっているのかは、一度外の世界を旅して来た自分には謎なんですけどね」


 ゼンは投げ出すように言う。正直、自分にはどうでもいい事だ。


「私達は、どうすればいいと思いますか?」


 何故、年下のランクも下な自分に尋ねるのか。ギルマスにでも相談すれば?と言いたいところだが、乗りかかった船だ。ゼンとしても多少、考えてはいた。


「一番いい方法は、フェルズを出る事ですね」


「フェルズを出て、ソロになれ、と?」


「違います。フェルズ以外の他国の上級迷宮がある所に行って、クランに参加するのがいいと思いますよ」


「クラン?」


 何故意外そうな顔をするのか、とゼンは問いただしたくなる。上級迷宮の攻略では、普通にクラン参加が他の国では常識だ。ギルドで強制参加を義務付けた方がいいんじゃないか、とゼンは思う。


「はい。フェルズでは、二つしかまともに機能していませんが、他国では、それが当り前に、いくつもあって、上級迷宮を何十人ものクランで共同作業をして、探索しています。


 それが、世界では、普通で当り前なんです。フェルズの現状は、異常の一言に尽きると思います」


 意外そうな顔で、感心している3人は、少なくとも上級に上がる前にフェルズに来て、フェルズに染まった冒険者なのだろう。


「もう一つは、その二つある、フェルズのクランのどちらかに身を寄せるか、でしょうね」


 これも現実的な対処法だ。


「どちらも、今はいない『二強』の信望者の集まり、的なところですが、それでも中ではちゃんと共同作業が出来ている、と聞きます。他のパーティーにいるよりも、よっぽどマシでしょうね。


 ただ、抜けたパーティーと、その身を寄せたクランの間に、少なからぬ確執が残るとは思いますが、フェルズの二大クランに敵対するほどの馬鹿は、そうそういないでしょう。多分……」


 現状の上級は馬鹿の集まり、としかゼンには思えないので、確証はしない。


「後は、かなり消極的な方法ですが、従魔が広まるまで、1カ月か2カ月か、をどうにか乗り切る、という手も、あります」


「その1、2カ月、というのは?」


「最初の被験者である貴方方、そして、他の十か国で行われている従魔術の試験再生、試験育成が無事に終われば、基本的に従魔術は解禁です。


 B級以上の冒険者に、ギルドが情報を洩らさない旨の契約魔術を施した後、従魔術の講習が行われ、希望者に従魔を得てもらう事になりますが、さすがに全員すぐに、とはいきません。


 なので、従魔所持者が多数派になるのが2カ月くらいではないか、と。最初の人が従魔を育成し終わるのに1カ月なので、そこでも情報共有がかなり進むとは思います。


 講習でも、従魔の情報は教えられますが、多分、実感としては、理解が及ばないと思うんですよね……」


 まさに消極的な方法だが、現状を大きく変えずに行くのなら、それが最善かもしれなかった。


「その……教官は、今はC級ですが、多分すぐにB級に昇級して、上級迷宮の攻略をする事になると思うのですが、その時、どうされるおつもりなのですか?」


 カーチャが、何か思い詰めた感じで尋ねて来る。


 それは、彼等被験者とはほぼ関わりのない話だと思うのだが、話すべきなのだろうか?


「俺と、仲間は……。もう準備は進めているのですが、変な横やりが入ると困るので、他言無用と、本当に約束していただけるのなら、お話しますが……」


「き、聞きたいです。今後の参考にも、なるかもしれませんし、是非、聞かせていただけないでしょうか?」


 言い募るカーチャは本気のようだ。残る二人も興味ありげな顔をしている。


「……これは、構想段階の話で、勧誘はこれからの予定なんですが、新しいクランを作ろうと思っています」


「新しい、クランを、ですか?で、でも、上級の冒険者を勧誘しても……」


 意外な話に目を丸くするカーチャ。


「上級冒険者を勧誘するつもりはありません。まず、同じC級の冒険者を、クラン参加予定者、みたいな感じに勧誘するつもりです」


「C級を?でも何故?」


「同じランクで、協力し合って、B級を目指しましょう、と言うのが建前です。


 本音は、まだ上級になっていないので、自尊心(プライド)の肥大し切っていない中級のパーティーを矯正して再教育し、クランでの共同活動が出来るように、性根から叩き直そうかな、と。


 ……ここまで言う必要なかったかな?まあ、そんな感じです」


「……え、それ、失礼ですが、本気、なんですか?」


 オルガが、思わず、と言った感じに本音が出る。


「勿論、本気です。共同作業とか協力、とか聞いただけで馬鹿にした顔で罵倒しそうなフェルズの上級冒険者を勧誘するよりも、余程現実的な話だと思ってます」


 3人は、さすがに罵倒したりはしない、と言いたかったが、それぞれのパーティーの仲間達がどんな反応をするのかは、言えないところだ。


「それにもう、それ用に、大きな建物を借りて、共同生活の場にしようと思っているんです。もうすぐ工事が終わるんで、とりあえず現在のパーティーでそこに移り住む予定です」


 そこまで話が進んでいるのなら、もうこれは構想段階などではなく、完全に動き始めた話なのだと、3人の上級冒険者達は気が付いた。


 夢想でも、理想でもなく、現実にそれを、まるで何でもない事のように語る、ゼンという少年は、勿論今までもただ者だ、等と思った事はなかったが、それ以上の、得体の知れない化物級な何かなのだと思い知る。


 彼には、ゴウセル商会やギルドマスター、そして彼の師匠、『流水』のラザンや『隠者パラケス』。そうした後ろ盾もあって、自分達では考えにも及ばない事を実現しようとしている。それは驚異以外の何物でもない。


 そんな事を思う彼等は知らない。後ろ盾があろうとなかろうと、彼が仲間の為なら平然とそれをするという、紛れもなくどこかズレた、おかしな存在である事を。











*******

オマケ


ミ「ラララ~、ご主人様と同居~ですの~」

リ「先輩、どうかしちゃったんですか?同居はずっとしてましたから!旅の間だって同居に近いですよ?」

ミ「ららら~♪」

リ「浮かれ過ぎてる……」


ル「ららら~、お?」

セ「真似しなくていいから。というか、真似しちゃいけません」

ゾ「うん、なんだ、あれだ、思春期か?」

ボ「皆、全員同じ年らしいけど?」

ガ「青い春、黒い歴史……」


ゼ「7人全員最初から、俺の中で同居だと思うけど……」

 

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