幕間03 アカリアンノウン

 わたしは自信がない。

 まざまざと見せつけられた才能に嫉妬し、しかし認められず、夢という太陽に向かって焼け落ちるイカロスだ。

 テツくんとの出会いは受験勉強のとき家庭教師が初めてだ。

 再会したのは、わたしが未来の娘を名乗ったときだ。

 覚えていない、というのは仕方ない、と思う。

 わたしが、彼の娘、というのは彼が死にそうな顔をして大学の屋上に行ったときだ。

 きっと自殺する、というのは見ていたからわかった。

 愛というより執着、恋というには醜怪で。

 わたしは恥ずかしくて嘘を着飾った。

 テツくんの自殺を止めた際にミクにLINEで頼んだのは本当に申し訳なかった。

 これはある意味わたしのずるさだ。

 わたしはミクを嫌っている。態度には出していないつもりだけれども、ミクはわたしの頼み事を聞いてくれる。

 舞台の公演が近いというのに時間を割いて来てくれたときは、バカだなぁ、と思い、わたしもバカだ、と思って素直にその夜謝った。

 即興に近かったとミクは語った。

『でも、灯の演出のおかげでなんとかできたよ』

 お世辞としか思えなかった。猜疑の淀みに囚われながら、わたしはミクと共犯になった。

 わたしの目的はテツくんを幸せにしたい、だった。

 好きだ、付き合いたいという動機は自覚していた。そこからは、わたしの嘘はわたしを苦しめた。

 テツくんがわたしを好きになってくれていたことだ。

 女の子としてみてくれた、でもそれはこの変な状況のおかげだ。

 終わってしまえば、恋人同士になれたとしても、うまく付き合える自信が、やっぱり自信が、なかった。

 だから、明は未来に帰り、灯と付き合う、というストーリーが自然だった。

 でも、テツくんは嘘を選んだ。

 デートのとき、わたしは幸せだった。

 テツくんは嘘のない灯を選んでくれる、と思った。

 でも、テツくんはアキラを選んだ。

「ごめんなさい」

 嘘をついてごめんなさい。

 謝るから。

「許して」

 だから、

「わたしを」

 見て。

 耳が、チャイムを聞く。

 魚眼レンズ越しに、未来を見る。


「三回いうよ」

 届かないかもしれない。

 同じことを繰り返す。

 それが彼の行動につながる。

 わたしの使命だ。

 それで世界が救われる。

 そうわたしの行動だ。

「わかった?」

 だから、わたしはいう。

「みつけてね」

 パパ。

 通信は途絶、これで決まる。

 未来は、桑島哲に委ねられた。

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