デート

「実はカナトと親睦を深めようと思います」


「親睦?」


「そうそう。これも何かの縁だと思うのよねー。なんかビビっときたし」


「まぁ・・・親睦を深めるのは構わないけど・・・ビビっと?」


「そう!カナトは何か持ってるって私の第六感が言ってるのよ」


そう言って無邪気に笑うレイラ。ふーんとカナトは頭を拭く。


「それでどっかご飯とか行くの?」


「そうねぇ・・・まだ朝の11時だし・・・お姉さんとデートしよっか」


「デートねぇ・・・」


「街のこととか知りたいんでしょ?ならデートが1番だよ?食べ歩きもしたいしね」


さあ着替えた着替えたと急かされ出かける準備をしていく。ちょっとあっち向いててと言われて着替えていると、レイラも準備が出来たようだ。振り向くと薄紅色のワンピースを着たレイラが立っている。


「似合うね。さっきの冒険者スタイルとは全然違う」


「デートだからね」


そう言ってウキウキなレイラ。


「そう言えばレイラも大して荷物が無かったような・・・」


「ああ、マジックバッグをいくつか持ってるから」


そう言ってリュックとポーチを手にした。どちらもマジックバッグらしい。容量は3m四方ほどで時間経過はないらしい。


「なるほどね・・・じゃあ今日は1日デートよろしくねレイラ」


ニコッと笑いかけるとレイラの顔が少し赤くなっていく。


「う、うん」


意外とウブなのかな?と宿を後にする。商店街は活気に溢れ、よく見るとドワーフやエルフ、獣人と言った種族も見かけることができた。レイラは雑貨屋に服屋に軽食屋に、と、街のあちこちを案内してくれる。


「レイラってこの街の生まれなの?」


「ううん。私が生まれたところは戦争で無くなっちゃったんだ」


そう話す横顔は、ふと過去を思い返すように遠くを見つめている。


「レイラは将来の夢とかある?」


「夢・・・あるよ。私はいつか孤児院を開きたいんだ」


「孤児院?」


「うん。冒険者をやってるのもお金を貯めたり色んな街を巡ったりして身寄りのない子供がどこにどれほどいるんだろうって調べる為でもあったの」


「そっか。レイラは立派だな」


「小さい頃に戦争を経験したから余計ね。子供たちに辛い思いはしてほしくないの。まぁ今の私に大したことは出来ないから将来に期待って感じだけどね」


「叶うよ。レイラなら叶えられる」


「うん。そうだといいな」


次は甘いものを食べよう!と、手を引いていくレイラ。今日のデートの記念にと、シロツメクサを模した髪飾りをプレゼントした。実は冒険者になってから働きっ放しでデートなど初めての経験だったらしい。


だからかシロツメクサの髪飾りをつけてレイラははしゃいでいた。


夕方には演劇があるからと一緒に見る。題材は勇者とお姫様の恋愛についてらしい。悪いドラゴンを退治する為に選ばれたのはお姫様が小さい頃から仲の良かった男の子。冒険の果てにドラゴンを倒し、お姫様の所に帰る勇者。在り来りなハッピーエンドだったがレイラはよかったねと涙していた。


夕食はレストランでコース料理を食べた。この世界でコースと言っても大したものは正直無かった。スキル料理極を持っている自分の方が遥かに美味く作れるだろうなと思いつつ食べていたが、レイラが美味しいねと笑うと何も言えなくなった。そうだ。料理は何を食べるかよりも、誰と食べるかの方が大事だった。


「今日はありがとう。結局カナトに全部出してもらっちゃったね」


部屋に戻りテーブルに紅茶を出して一息つく。


「こーゆーのは男が出すものだから」


おっさん臭いと言われだがその通りなので何も返せなかった。


風呂から上がるとレイラはいびきをかきながら爆睡していた。疲れていたのだろう。


「今日は楽しかった。見ず知らずのおれにこんなに親切にしてくれてありがとう」


いびきをかきながら幸せそうな顔で寝ているレイラに一言お礼を告げる。


いつの間にかアイが枕の上で寝ていた。


おやすみと呟いてカナトも眠りについた。

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