第11話
「先輩~、おはようございま~す」
「・・・ちょっと待ってて」
ん~これはデジャブ。朝弱いんだな~、先輩は。
「服装も合格です。じゃあ、早速行きますか。図書館に」
先週の服を買ってあげた代わりに今日は勉強に付き合ってもらう日。目をこすっててもしっかり先生役してもらいますからね。
図書館は人も少なく、入ってすぐの机に向かい合って座った。
人と一緒に勉強するのは新鮮だ。なんやかんや人と一緒にやれば、効率は落ちるし、人に聞くよりも自分で調べたほうが理解も深く早いからだ。今じゃスマホアプリでも聞くことができる。
といっても、新しい単元を始めたばかりで簡単な問題だけしかない。ペン先は止まらず、滑らかに走っていく。
先輩の自分の勉強を進めていた。サラサラ動く手は女性ならだれでも羨むほど白く、細い。いくら眺めても伏し目な先輩は気づかない。
「先輩ってまつ毛長いんですね」
「えっ?」
きょとんとした顔をして先輩は気まずくなったのか、顔でうん?と問いかけてくる。
私が首を横に傾げると、先輩もそれに合わせて首を傾げる。・・・ずるすぎ。萌えだ。これは萌えだ。
これをやれば絶対に落ちると思うんだけど。緊張しちゃって自分が出せないタイプなのかな。
「先輩この問題分かりますか?」
「どれ?」
応用と言っても教科書に載っている程度の問題。私は"見ずらいでしょ"とわざわざ先輩を横に召喚してまで解説してもらう。
一年前のことなのに、単元さえ教えればスラスラと問題を解いていく。私のノートに書かれた字はとっても小さくかわいらしかった。丸文字というやつだ。
「これがこうなって・・・」
どうせ、すぐ分かる問題。
先輩の短い髪の匂いが流れてくる距離。聞いていない説明を懇切丁寧にしてくれる。
「それで答えが-ひゃあっ!」
図書館中に響き渡った先輩の甲高い声。なんでこうも庇護欲がそそられるのか。私より背が高くてバイトでも頼りになるのに。
先輩は耳に手を当てながら、驚いた目で見てくる。どこか焦点が合ってないのは気のせいか。
「大丈夫ですか、先輩?耳に息ふってしただけですよ」
小動物みたいにこっちを警戒して距離を詰めさせてくれない。ここまで効くとは私も思っていなかった。
恥ずかしさなのか、それとも耳が極端に弱いのか、まだ顔も赤い。図書館内の人も一瞬こっち見ただけで気にしてる様子はない。
「図書館デートで当然のテクニックなんですよ!これは!私が勉強ってだけで図書館に来るわけないじゃないですか。先輩だって、ちょっとドキッとなったでしょ」
疑いの目で見つめてくれるが、先輩に見つめ合いで私が負けるはずない。
「確かに」
先輩、チョロイ。
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