第10話
二年生の五月末。先輩は受験生になって、そろそろ勉強の覚悟を決めなきゃいけない時期。。
キープ君にも餌を与えないとね。別れを告げてくれるなら嬉しいけど、そうじゃないなら、餌でコントロールできたほうがいい。
一応、キープナンバーワンの男、
よっしーももうちょっと人脈が広がればな~って感じだよね。
「少し俺の家で休憩してかない?」
使い古されたセリフを使っちゃって。デートプランから漏れ出ててたもんね。自分の家の近くで済ませちゃって。学校の中でも結構な大物さんが。
「うん?」
「ダメ?」
「ふふっ、いいよ」
う~ん、顔面のいい男甘えられるのはいいかも。けどそこに魅力を感じるだけで、この人のためにとかは思わないんだよな~。
それに先輩の顔の方がカッコよくて、可愛いし。
「お邪魔しま~す」
七尾宅には何回か入ったことはある。もちろん、それ目的で。
「今日は親が遅くなるんだ」
ふふ、知ってる。分かってるから。
「そうなんだ」
目線を合わせずに俯き、声もか細くしておく。まだ慣れてなくて、恥ずかしがってるとでもこれで勝手に相手が勘違いしてくれる。これがあなたのお望みの私でしょ。
「先に俺の部屋に入ってていいよ。飲み物取ってくるから」
七尾はリビングに寄り、私は螺旋階段のように少し曲がった階段を上る。先輩の家と似ている。気遣いやはり本物だった。
学習机のイスではなく、ベッドに座る。イスは一つしかないし、さっさとヤることはヤっておきたい。
どうせ、すぐ別れることになる。先輩のために身辺整理もしなきゃいけないし。
「お待たせ。麦茶でよかった?」
氷の高い音が揺れながらしばしの無言を作った。ベッドも軋ませずにベッドに座った七尾はそのまま私にキスをした。
私は自分からベッドに倒れこんだ。手を広げて、来てといわんばかりに。
知ることは大切だ。
例えば、セックスの行為の良さは分からなくても、意味や相手の感じ方。
例えば、七尾の浮気や本命の存在。
例えば、ギリギリで成り立っている私と七尾との関係とか。
もう、知りたいことは知った。したいこともした。これ以上はリスクが増すだけ。
先輩は色恋沙汰に弱いのは知ってるけど、どんな拍子でバレるかも分からないし。先輩に嫌われるのは嫌だから。どんなことがあっても。
汚れたシーツの上で別の人を想う。もうこれで最後。次は、先輩。
「トイレ行ってきていいですか?」
こんな汚い所はもう出ていこう。もう光があるだけ。
大好きだよ、せんっぱい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます