第8話
さぁ、やってまいりました。先輩のお家です。結構立派な一軒家ですね。
インターホンは鳴らすといつもより弾む音色が流れる。ドタドタと家の中がバタつく気配を感じる。
「おはようございます!先輩」
「おはよう」
木製のドアから顔を覗かせる先輩。まだ眠いのかいつもの伸びた背筋が曲がっている。声もふにゃふにゃして上ずっている。庇護欲そそられる先輩を眺める。
「三十点」
「へ?」
顔が少し上を向いてこっちを見てくる。まだ目は覚め切ってないみたい。
「三十点です。そのダッサい服装がですよ」
「え、ひどい!これでも選んだ方なのに」
「え!」
咄嗟に口を抑える。これでも選んだ方はひどすぎる。驚きが思わず声になってしまった。
とどめの一撃になっちゃった?
先輩は体をくるりと一回転。そのまま先輩の存在感ごとく音なくドアを閉めて家に入ろうとしていた。
「先輩~?大丈夫ですから。中学生とか小学生もみんなそんな感じですから。これからセンスを磨けばいいんですよっ」
「・・・センス・・・小学生」
そうやってすぐ拗ねるとこも小学生みたいですよ、と思ったがさすがに口に出しはしない。
と言っても、良い褒め言葉はも見つからない。
・・・ピンチはチャンス!
「お邪魔します!先輩!」
弱りに弱った先輩の腕力はカスだった。先輩のおうちのドアを突破し先輩を見下す。きっと今の私の顔はドヤ顔だ。
「先輩の部屋はどこですか?」
「上がって右の部屋です」
素直な先輩はかわいいですね。
螺旋階段気味に少し回るような階段そ上げって先輩の部屋に到着する。ベッドにパソコン、本棚、勉強道具。とても簡素で先輩らしい。
目的はクローゼット。遠慮なく全開にして全ての服をベッドに出していく。
「分かってたけど、終わってるな~」
うちの高校は制服だからな~。先輩みたいな家にヒッキーしてるとこういう人を生んじゃうんだよな~。制服なんてない高校行けばよかったって何回か思ったし。うちの制服、かわいくないし。
「あの何してらっしゃるんですか?」
今度こそ、顔だけ覗かせる先輩。背筋は丸くなり、腰も完全に下がっている。そして、敬語も敬語も!先生相手にすらしない言い方。
「これで服は全部ですか?」
コクコク、服も少ないと。こんなもんなんですかね。
って!声ぐらい出してくれてもいいじゃん。そこまで怖がることしてないですよね!そして何ですかその敬語は、先生にも使わないでしょ!私、女の子!傷つきますよ!
「スパルタ授業ですね」
ちょっとキレてた。
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