第7話

意外すぎだよ。先輩に恋人とか想像できないし。


先輩は動揺で私は衝撃で生まれる無言の空間。幾分目も合わせてくれないと悟った私は周りに目を向けた。


手を繋いで歩くカップルに、スマホを眺めて座る男性、そしてガラスに映った自分の姿。


「先輩、私があなたのキューピッドになってあげます」


「へっ?」


「先輩は好きな人がいる、そうですね」


「・・・はい」


私の眼光に先輩は逆らえない。へ二ゃとなって脆い骨みたいにすぐ折れる。何かに怯えている先輩の周りをグルっと回る。


「私が先輩の恋愛面での先生になります!絶対に先輩と先輩の好きな人をくっつけさせます!」


一人より絶対に二人の方がいい。先輩がこのまま好きな人を眺めつづけるだけで終わるなんてかわいそすぎる。恋人の一人や二人作って青春を感じてもらいたい!


ここからだ。きずき先輩を深くまで知っていくことになったのは。


ただの私のわがままだった。人の恋愛話に口を出して達成感を味わいたかった。


まだ私もただの可哀そうな子供だったから。


「服もメイクも髪型も私が払いますから!勉強代だと思ってください!」


バイト代なんてなくても大丈夫くらいのお小遣いは貰ってる。メイクとか初期費用はかかるけど投資だと思えば痛くも痒くもない、先輩の初恋人に比べれば!


今は誰でもメイクする時代すら来てるし、先輩に似合うメイクとかも探して練習しなきゃ。元は整ってるし、顔面はときめき効果に何倍も、いや何乗にもしてくれるから。


「いや、いいよっ。」


「先輩に否定する権利なんてありませんよ。好きな人のことバラしちゃいますよ。私って口軽いですし」


苦虫を噛み潰したような顔しないでくださいよ。私は先輩のキューピッドですよ?


絆先輩、


もう他の人に目を向けさせないから。押し倒してでも私は絆先輩の眼を奪って見せるから。虹光に映るのはわたしだけ。わたしがあなたの光・・・。






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