第5話
「・・・ケント、マラゴジベ、ブルボン」
「コーヒー!入れましょう!もういいです。ゲシュタルト崩壊です」
別に私はいい感じの雰囲気のお店でバイトをしたかっただけで、コーヒーが好きなわけじゃないから。何ならコーヒーなんて飲めない。匂いは好きなんだけど。
休憩室を脱出。
お客さんは一人だけで閑散としている。店長だけで回せたみたいだ。
「暇ですね」
「そうだね~もう帰ってもらってもいいよ。今日は一人で大丈夫そうやから」
「分かりましったー!」
二人で喫茶店の制服から着替えると先輩の手を握ってドアを蹴破る勢いで外に出た。お客さんが変に来られる前に帰りたかったのが一つ。
もう一つは
「どこに行きますか!?」
「え、遊びに行くの?」
「そうですよ!明日は日曜!バイトも早く終わって遊びに行かないで何をするんですか!」
先輩の目線はもう自分の帰り道に向いている。全く目を合わせてくれない。地味に手をゴニャゴニャさせ抜け出そうとしているがそうはさせない。
先輩がこの時まで遊びに付き合ってくれたことはない。もはや意地を張っているとしか思えない。
「先輩に合わせますから!ご飯でもいいです!」
「じゃあ、ご飯で・・・」
「嬉しいです!さっそく行きたい所ですけど、何が食べたいんですか?」
先輩は指差したのはサイゼ○ア。安いで有名のサイ○リア。二人しかいないバイト仲間と初めての遊びでサ○ゼリア。
私のこと嫌いですか?せんぱい?
先輩はてきぱきと私の分のソフトドリンクを持ってきて一息ついた。
細かいところの気遣いは先輩らしい。ソフトドリンクも私のチョイスと完全合致だし。
「先輩!聞きたいことがあります!」
先輩は頷いた。パスタをチョコチョコ巻いて食べながら。頷きは飲み込んだ時のじゃないですよね・・・。
節々に感じる扱いのぞんざいさを頭の隅っこに追いやり、質問を続けた。
「先輩って実は頭いいらしいですね?なんで言ってくれなかったんですか?」
「聞かれて・・ない・・・から?」
テスト結果が貼り出されるような前時代的なことをこの学校はやっていないのでテスト結果は人に聞くしかない。
そこで小耳に挟んだ話では先輩は学年五位以内から落ちたことがないらしい。もちろん、動揺した。勉強している姿を見たことはおろか想像もできない先輩はそんなに頭がいいとは。
授業中もポケッ?はにゃ?みたいな感じだろうと思っていたのに。
というか私より成績良くね?
嫉妬というか、プライドというか。許せません。
先輩、世界は厳しいんです。
「先輩、勉強教えてくれないですか?バイトが禁止になっちゃいます」
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