第3話
溜まった疲れを弾き飛ばすようにノートを閉じる。体を伸ばせば固まっていたものが体全体を巡っていく感覚が走る。
「もう二時間ぐらいやったかな」
向かい合っていた男は眼鏡を外してノートも一緒に片付ていく。この男は俗にいう恋人未満、友達以上みたいな関係の男。名前は
このビジュアルから予想できるかもしれないが勉強のできるタイプ。というか、頭の回転が早いかもしれない。案外、ギャグセンもあるし。一軍グループの副官みたいなやつ。
魅力度はキープしている中では二番手かな。
店の外に出ればじりじりと太陽が私の肌をさしてくる。太陽くんは五月にしてじゃすこし頑張りすぎじゃない?空回りとかしてくれないかな、女子にとって太陽は天敵だし。
もう少しで先輩と出会ってから一年。きっと先輩は覚えていないんだろうけど。
「この後どうする?頭使ってお腹へったし本格的な腹ごしらえとかどう?」
「いいよ!よっしーは何食べたい?」
よっしーはあだ名。別に某マ○オとかの出てくるキャラじゃない。呼ばれるのは結構好きもみたいだけど。
「パスタ、パンケーキ、パフェその他諸々リサーチ済みです。パスタがおすすめかと、食後に濃厚プリンが食べれるお店がございます」
断じて私の、好みではない。彼の好みだ!
メガネをスチャと上げて候補を読み上げてくるが彼の好みだ!大事だか二回言った。
きっとちゃんと事前にしっかりしリサーチして大切にされてる所とか、しれっと自分の好みを入れてきて可愛いとか他の女子とかは思うんだろう。
確かに気分は悪くない。
けど違うんだよな。なんか違う。推しの隣のキャラを引いた感触。
「じゃあ、パスタに行こう!あとで一口頂戴っ!」
「マジで美味しいらしいから期待してて」
「プリンが?」
「パスタが!」
案外、よっしーは甘味好きで子供舌らしい。頭いいとやっぱり糖分を必要とするのかな。私は分からないけど。
よっしーは私に歩調を合わせ道案内もかねてちょっと先を歩いてくれる。
「あとどれくらい?」
その空いてる揺れる手を掴んで腕の横から道案内のスマホを眺める。腕と腕を絡ませちゃったりして、肩越しにスマホを見てみたりして。
ドキッとするでしょ。ほら、手が温かくなってきた。いい匂い・・・とか、鼻息が・・・とか言って興奮してるんでしょ。知ってるよ。
よっしーももうすぐ落ちそうだ。
今度はそっちから手を掴み、文字通り落ちてくる。
私はまだかわいくなれる、綺麗になれる。女の魅力を磨いていく。先輩が落ちても落ちてもずっと。そう毎日願って、叶える。
私はまた一歩近づいた?
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