第2話
そうですね、では私の高校一年生の六月。バイトに入ったときから話しましょうか。
私、
私はかねてからの親との約束を果たすことに成功した。全テスト80点。これをクリアしたならばバイトをしていいという約束だった。高校はバイトを公認している。
なぜバイトかって?働きたかったから。お金ももちろん、社会経験を積んでもみたかった。要約すると、変な憧れってことになるのかなっ。
それで、面接しに行ったのが喫茶店。子洒落よりもレトロの雰囲気が強い喫茶店だったけど登下校の最中にあるし、雰囲気良いし、香ってくるコーヒーの匂いは好きだしね。
コーヒーは飲めないんですけど。ど直球に甘くていいのに。
そこで先輩に出会ったの。
「バイトは初めてかい?」
「はい!」
白髪をたくさん蓄えたお爺さん、マスターが面接を対応してくれた。バイトの面接なんてほとんど落ちないって聞いてたし、入学してからずっと狙っていた張り紙はずっと表に立っていたから確信はしていた。
「うん、じゃあちょっと待ってくれるか、絆って言うバイト仲間がいるからね」
「はい!」
もう決定!元気よく返事をしておけば年配者は落ちるって誰かが言ってた。
「絆と同じ高校なんだね。これなら仲良くやってくれそうだ」
ドアが来客の鈴を鳴らす。
気だるそうに開けたのが絆先輩だった。目はスマホに落とされ小声で、おっすーと言っている。
肩ほどまで伸びた髪に、髪に隠され、少しだけ見える目じりがシャープの曲線を描ている。中世的な顔つきだった。
「あ、こんにちわ」
私に気づくとスマホをしまい、会釈をしてきた。明らかに愛想笑いで、警戒心も丸見えだった。
「ついに、新しいバイトが来た?」
「そういうことだ、絆と同じ高校の一年のだそうだ。これから仲良くやるんだぞ」
はっはっと愉快に笑って奥に入ってしまった。
バイトをすることはできそうだ。この絆?さんと仲良くなれなかったらバイトが地獄に!というプレシャーと共に笑顔で挨拶をした。
「一年生だよね?」
「そうです!」
たしかに二年生だったら失礼だし気まずい。無敵の笑顔を常時展開しながらかいわのボールを待つ。
「テストはどうだった?」
「はい、全部よかったですよ、赤点なんて取りませんよ」
あ、この人が赤点だったらどうしよ。やべっと思うが吐いた唾は呑みこめない。
「良かったね、赤点なんて取ったらバイトしにこないしね。ちなみに自分も赤点はないから」
どうもぎこちない会話ですよね。人とぶつかりそうになって、よける方向も同じになっちゃてるみたいな。
絆先輩は話のネタを出すのが下手くそなんです。とっても聞き上手なんですけどね。
こっちの出方をうかがっていたらしいですよ、ずっと笑ってるから怖くてって。ひどくないですか?人の笑顔を怖がるなんて!笑顔はみんな良いものって大体の本とかで言ってるじゃないですか。
「あ、
最初同じようにぺこっと首だけ下げる。
「私は
先輩呼びはこのときから。先輩の照れて笑った顔は今も変わらず好き。
これが先輩と初めて会った日。
わたしはまだビッチとは呼ばれていない時のこと。
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