第二章 旅立ち~冒険者へ

第34話

 今年15歳になる。いよいよ成人だ。誕生日を1ヵ月後に控えた最近、俺は旅立ちに向けての荷造りや、挨拶周りなんぞをやっている。

 ヒロは3年前に冒険者としてデビューしている。たまにレンファさんのところへ届く手紙から、元気にしている様子が窺える。

 ここ数年、国の情勢がややおかしくなってきているようだ。各地でモンスターの被害が増えているらしい。それに対して、騎士団の派遣が滞っているとのこと。

 あと、国の肝いりで優秀な人材を集めているようだ。将来有望な子供がいたら国に届け出るように、とお達しが出ているらしい。それらの子は責任をもって国が育て、将来は要職に就かせるとか何とか言っているが、怪しいものだ。青田買いをしているように見える。特に戦闘能力の高い子供を集めているらしいが、どこの村でもモンスターの被害を警戒しているのだから、戦うことができる貴重な人材を手放したりはしないだろう。ギースさん曰く「冒険者となり、芽が出たものを貴族が私兵として雇うには、かなりの金が必要になる。それならば、目が出る前の子供を集め、国の機関として育成したほうが管理しやすく、安上がりということなのだろうな。」とのこと。

 これらの情報は、実はレオからの手紙で知った。レオとはあの夏以来、手紙のやり取りをしている。文通ってやつだな。レオから送られてくる手紙にはそういった、この片田舎の村では手に入らない国の情勢や、レオ個人の最近の出来事や、フィーが騎士学校でどのように過ごしているか、等が書かれていた。そして、封筒には俺宛てだけでなく、イーナに宛てた手紙もあった。最初の頃は俺宛の手紙の枚数が多く、イーナはついでのような形だったのだが、最近では枚数は完全に逆転し、イーナのついでで俺が受け取っているように感じる。イーナも昔は来た手紙を気安く見せてくれたのだが、近頃は全く見せてくれない。……レオはロリコンなのだろうか? 4歳差……成人すれば普通なんだが、15歳が11歳の女の子を、というのはちょっと問題があるんじゃないのか? 

 それはそうと先日、レオから俺へ成人の祝いというか、旅立ちの餞別というかで、以前キャンプ時に使っていた大型のテントが送られてきた。こんなの1人で使うにはでか過ぎるのだが、せっかくの心遣いだから持って行くとしよう。持ち運びできるように大型のマジックバックも送ってきてくれたしな。

 後で分かったのだが、ドラゴンゾンビを倒したからか、ダンジョンを踏破したからか、あるいはその両方なのか、カルマ値が大幅に増えていた。それと4年間のガチャと修練の結果、今の俺のステータスはこんな感じだ。


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 名前:シンク 


 Lv20


 HP  232/232

 MP  169/169


 力   81

 魔力  84

 素早さ 120

 器用さ 79

 体力  84

 精神  63


【攻撃スキル】

 剣術 Lv10 

 剣術・地級 Lv10 NEW! 

 剣術・天級 Lv7  

 剣術・極級 Lv3 

 体術 Lv7  

 体術・地級 Lv5 

 体術・天級 Lv3 

 槍術 Lv7 

 槍術・地級 Lv5 

 槍術・天級 Lv2 

 短剣術 Lv3 

 短剣術・天級 Lv1

 弓術 Lv7 

 弓術・地級 Lv5 

 弓術・天級 Lv3 

 弓術・極級 Lv1 

 鞭術・地級 Lv1 

 槌術 Lv1 

 盾術 Lv1 

 棒術 Lv1 NEW!

 棒術・天級 Lv1 NEW! 


 火術 Lv6

 火術・天級 Lv1 

 水術 Lv1 

 風術 Lv10 

 風術・地級 Lv7 

 風術・天級 Lv4 NEW!

 風術・極級 Lv2 NEW! 

 土術 Lv1 

 土術・天級 Lv2 NEW! 

 光術 Lv3 

 闇術 Lv3 NEW! 

 神聖術 Lv7 

 暗黒術 Lv5 

 付与術 Lv6 


【攻撃補助スキル】

 行動観察 Lv8

 回避 Lv10

 詠唱変換-印術 Lv10

 魔力圧縮 Lv9

 魔力強化 Lv8 

 投擲術 Lv5 

 行動予測 Lv7 

 集魔 Lv8 

 錬魔 Lv7 

 空間把握 Lv8 

 技応用 Lv9

 消費MP軽減 Lv8 

 硬魔 Lv2 NEW!  

 透魔 Lv2 NEW! 

 早口 Lv4 NEW! 

 捕縛 Lv4 NEW! 

 挑発 Lv4 NEW! 



【耐性スキル】

 火耐性 Lv3 

 水耐性 Lv1 

 風耐性 Lv3

 土耐性 Lv2 NEW!  

 神聖耐性 Lv2 NEW! 

 暗黒耐性 Lv2 NEW! 

 地耐性 Lv3 

 天耐性 Lv5 


 精神耐性 Lv6 

 毒耐性 Lv5 

 麻痺耐性 Lv6 

 恐怖耐性 Lv5 NEW!

 魅了耐性 Lv5 NEW!

 混乱耐性 Lv5 NEW!

 乱魔耐性 Lv4 NEW! 

 睡眠耐性 Lv5 NEW! 

 封印耐性 Lv5 NEW!

 幻影耐性 Lv3 

 病耐性 Lv3 

 呪耐性 Lv5 

 痛覚耐性 Lv5 

 疲労耐性 Lv5 NEW! 


【探索スキル】

 追跡 Lv7 

 隠密 Lv7 

 気配察知 Lv7 

 錠前術 Lv6 

 罠術 Lv7 

 暗視 Lv6 

 精霊視 Lv3 

 魔素視 Lv4 NEW! 

 構造把握 Lv3 

 水源察知 Lv2 


【極スキル】

 極剣技 龍殺斬

 地術極 メテオスウォーム


【生産スキル】

 採取 Lv6

 採掘 Lv1 

 調合 Lv6 

 錬金 Lv5 

 造船 Lv1 

 鍛冶 Lv7 

 建設 Lv2 

 器具作成 Lv4 

 魔方陣作成 Lv4 

 裁縫 Lv3 

 料理 Lv5 

 解体 Lv4 NEW! 

 木工 Lv4 NEW! 

 栽培 Lv2 NEW! 


【技術スキル】

 エステティック Lv9

 礼儀作法 Lv3 

 水泳 Lv3 

 占い Lv3 

 育児 Lv2 

 演奏 Lv1 

 絵画 Lv3 

 天候把握 Lv6

 野営 Lv5

 嘘看破 Lv4 

 教授 Lv5 

 鑑定偽装 Lv3 

 付与固定 Lv3 

 騎乗 Lv1 

 フラワーアレンジメント Lv3 

 唱歌 Lv1 

 運搬 Lv2 NEW! 

 曲芸 Lv2 NEW! 

 誘導 Lv2 NEW! 

 瞬間記憶 Lv2 NEW! 


【身体強化スキル】

 HPUP Lv4 

 MPUP Lv4 

 力UP Lv5 

 魔力UP Lv5 

 素早さUP Lv6

 器用さUP Lv5

 精神UP Lv4 NEW! 

 体力UP Lv5 

 動体視力 Lv6 

 鋭敏聴覚 Lv4 


【パッシブスキル】

 言語-大陸共通語

 言語-グラトコヴァ語 NEW!  

 手話-大陸共通語

 幸運 

 激運 NEW! 

 剣の才能 

 剣の鬼才 

 地の加護 

 天の寵愛 

 風の加護 

 美肌 

 老化遅延 


【特殊】

 携帯-スキルガチャ

 スキル取得不可-習熟


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 ”剣術・地級”がどうにか手に入ったので、現在は剣術主体に戻している。剣を用い、”技応用”で別の武器スキルを使うと、”剣の鬼才”効果が応用元の武器の習熟速度にも適用されることが分かった。普通の人は才能系スキルがあったらそれ1本で育てるだろう。となると、複数武器スキルを鍛えることが必須条件となる”技応用”を習得することはない。才能効果が”技応用”で他武器に適用されるのを知るのは、俺くらいかもしれない。

 また、スローイングダガーを携帯するようにした。影縫いとか、何かと便利に使えるのだ。しびれ薬を塗った物など、いくつか用意している。


 悲しいお知らせが1つ……身長が11歳のときから変化していないのだ。つまり、160cmのままだ。くぅぅ、11歳の時は180cm台も夢じゃないと思っていたのに、まさかの160cmでのストップ……。平たく言うとチビだ。チビな上にパンダパーカーなんてファンシーな装備なので、ぱっと見、非常に弱そうである。ワルっぽい奴に絡まれたり盗賊とかに襲われたらどうしよう? 勝ち負け以前に、倒してしまって良いものかどうかが分からない。万が一殺してしまったら、カルマ値はどうなるのだろうか?

 一応、対策は考えてある。暗黒術系統を使えば、状態異常を発生させられる。それを利用し、剣で牽制と防御をしながら睡眠や麻痺の魔術をかけて、その隙に逃げ出す、というものだ。しかし、そいつらを放置したことで別の誰かが被害にあった場合はどうなるのだろうか? うーん、結論が出ないよなぁ。

 因みに法律的には、街道で襲われたら倒していいことになっている。襲われたかどうかの判断基準は、かなり曖昧だ。衛兵が嘘看破のスキルで確認するものの、どう感じたかなどは個人の感覚による。変な話、「睨みつけられたから襲われると思った。だから攻撃した。」というのも成り立つ。村や町の外に一歩出てしまえば、法律なんてあってないような物らしい。ただ、重大な事件になると、過去視を使える役人が来て現場検証することもあるようだ。


 あと少しで、この家ともしばらくお別れだな、とリビングでまったりしていると、


「おじゃましまーす。」


 とイーナがやってきた。


「シンク兄、こんちわ! ラグさんいる?」


「ラグさんなら、そこのクッションの隙間に入って、まったりしているよ。」


「お~、いたいた。ラグさん撫でさせて~」


 そう言ってイーナはラグさんを撫でている。ラグさんも、仕方ないわねぇと応じているようだ。俺が生まれた頃からいるのだから、ラグさんももう15歳くらいだろう。猫の15歳は、人間で言うと70代半ばくらいの筈だ。しかし、未だに毛艶もいいし、良く食べ、良く動く。健康そのものなのはいいとしても、老いを一切感じないのだ。……前々から思っていたが、本当に猫なのだろうか? 


「シンク兄はもう少しで、村を出てっちゃうんだよね?」


「あぁ。フィーやレオとの約束もあるしな。」


「2人に会ったら、宜しく言っておいてね。」


 ふと疑問に思った。そういえばイーナは11歳だ。職業訓練を始めてなくちゃいけないのに、何でうちに遊びに来ているんだ?


「そういえば、イーナは将来何になりたいんだ?」


「働きたくないでござる。ずーっと家でごろごろしていたい……。」


 何いきなりダメ人間発言しているんだ。


「その感覚には大いに共感するが、実際はそういう訳にもいかないだろう? 何か考えているのか?」


「そうだね。冗談はさておき、あたしはシンク兄やヒロ兄と違って才能も無いし、これといってやりたい事も無いんだよね。」


 俺の場合は、生まれてすぐにやるべき事が決まっていたから、今生では迷わずに済んだ。この世界では親の仕事を継ぐのが一般的だが、それほど厳格でもない。ある程度、選ぶ余裕がある。しかし、自ら学んで選び取ってでもやり通したい仕事なんて、そうそうあるものじゃない。結局、なし崩し的に親の仕事を継ぐ人が多い。

 俺も前世では進路迷ったなぁ。やりたい事なんて無かったし、何か特技があるわけでもなかった。進路選びは本当にしんどかった。ゲームやアニメは昔から好きだったが、その関係の仕事に就きたいか? と言われるとそうでもない。なので最後は、給料が良くて休みが安定してそうな、適当なところを選んだだけだ。

 就職して感じたことだが、仕事はやってみないと分からない事が多い。この職種でこんな事やるハメになるとは……と思う時もある。俺は製造業に就職したのに、何故かプログラム作ってたり、海外出張で飛び回る事になったりした。でも、どんな仕事でも前向きに取り組めば、なかなか面白いものなんだよな。

 仕事選びの1つの指針として、どういう私生活を送りたいか、で考えるというものがある。例えば、年2回海外旅行に行きたいとか、港区の高級マンションに住みたいとかだな。それを実現できるだけの収入と、休暇を得られる職業を選べばいいのだ。……とまあ、簡単に言ったが、そうなると結構限られてくるので、次にその業種に就けるだけの学歴や経験をどうやって得るかが目標になるわけだ。

 イーナに何かアドバイスしてやりたいところだが、こればっかりはなぁ。あ、そうだ。


「例えばだが、お菓子屋さんとかどうだ?」


 小学生のなりたい職業ランキングで、常に上位にある職業だな。


「お菓子屋さんかぁ……いいね。美味しいの毎日食べることができそう。」


 子供が仕事を考えるのって、これくらいの理由でいいと思うのだよね。別に大人になっても、職業選択に立派な理由なんてそうそう無いものだ。どちらかというと、ネガティブな理由であれが嫌だ、これはダメ、と消去法になりがちだな。どの職業を選んでも、忙し過ぎたり、辛かったりする職場は存在する。それならいっそ、もっと簡単に割り切って考えるのも手だと思うのだよな。


「でも、ここら辺だと、砂糖を安定して大量に入手するのが難しいな。」


 家庭で使うぐらいの量ならそれこそ、村周辺に生息しているモンスターのドロップで手に入れられる。ただ、常時大量にとなると、そこまで賄える程、そのモンスターがいる訳でもない。


「そしたら、お父さんとお母さんの手伝いでモンスター倒しながら、砂糖集めるよ。ある程度の量になったら、食堂の片隅でちょこちょこ作って売ってみる。不定期になるけどね。ほら、あそこってお昼時と夜は賑わっているけど、おやつの時間帯は使われてないでしょ? その時間にお茶と一緒に出させてもらえないか、聞いてみようかな。」


 おお、それならかなり現実的だな。食堂は村の共有財産のような扱いだから、空いている時間なら使うこともできるだろう。奥様方がお茶をしに集まれるような場所って、そういえば無いものな。


「とーちゃんたちの手伝いをしてくれるなら助かるな。兄2人が家を空けて、イーナに負担をかけてしまい済まないけど、とーちゃんたちをよろしく頼むよ。まぁ、あの4人に何かあることは想像できないけどな。」


「シンク兄はずっと、冒険者になるって頑張ってたもんね。あたしがしっかりお父さん達をサポートするから、心配しないで行っておいで。」


 兄妹がいるって本当に助かる。実の妹じゃないけど。イーナは歳の割にしっかりしているので、安心して任せられる。とーちゃん達はまだまだ若いからそこまで心配はしていないのだが、体を張る仕事をしているわけだし、いつ何があってもおかしくないからな。

 感慨深く頷く俺に、イーナがにっこり笑いかけた。


「シンク兄、交換条件ってわけじゃないけど……街で流行っているお菓子の情報は、レシピも含めて手紙で教えてね。」


 ……本当に、しっかりしているなぁ。

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