第40話 040

「オフィス長、昨日はありがとうございました」


翌日朝一番に、和田さんがデスクにコーヒーを置きながら言った。


「いーえー。あれが俺のお仕事ですから」

ありがたくマグカップを口に運ぶ。

「何か、すみませんでした」

バツが悪そうなのは、昨日の社長の態度のせいだろう。

まあ、想定内だったから気にする事はないのに。

「全然。また行こうな」

笑って見せると、ハッキリとホッとした顔をして、

「ホントやな感じなんですよー、あの社長。堂島オフィス長にも、若すぎるってめっちゃ態度悪くて。俺はチャラい平成は嫌いだ、とか言っちゃって」

と、昨日と同じマシンガンを発射し始めた。

「まあ、堂島オフィス長は確かにね。ちょっとチャラいと思われがちかもね」

「茶髪だしね」

「俺も真っ黒では無いんだけどね」

「いや、でももう、顔が。堂島オフィス長より植原オフィス長の方がもう、全然」

全然何だって言うんだ。

苦笑いを向けると、


「私はどっちかっていうと、堂島オフィス長より、植原オフィス長の方が全然イける」


と、自信満々風に言い放たれた。


そらどーも。


でもそれ、嘘だよね?


笑顔でありがとう、と言いながら、心の中で呟く。



堂島に先に出逢った子は、堂島派になる。

逆に、俺に先に出逢うと、堂島にはなかなか馴染めない。

それは、事務方も部下も、上司でさえも、そうと決まっているかのように。


「あ、そう言えば」


自席に戻ろうとする和田さんを呼び止めて、


「はい」


「唐沢さんと最近連絡取った? 人事異動の後とか」


小声で伺う。


そんな俺に、意味深な笑みを浮かべた和田さんは、


「ええ。毎日ラインしてますよ」


と、楽しそうに言った。


「例えばどんな?」


平静を装って、俺も笑顔を浮かべて見せる。


「んー。。。」


どこまで漏らそうか考えているのか、少し考えてから、


「取り敢えず、植原オフィス長が紗英の事聞いてきたよ。ってこれから入れます」


と、言って、くるりと背中を見せた。

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